第二十話『アジト』
木梨隊長の命令により、五時間目に間に合うように教室に帰ることにしました。
いや、授業をいつも欠席している訳では無いんですけどね。
…このままでは間に合いません。あと10分を切っているのですが、Z組教室は数キロメートルは離れている校舎の二階です。その上、この任務は二年校舎一階でゴミ捨てしてこそ完了なんです。それに関しては五時間目終了後でも大丈夫ですが、第一この進みづらいアジトから抜け出すのに何分かかるものなのか…。
とにかく、全速力で走りましょう!それしか無いですから!
『ピピピ』
ゴミ箱ロックボタンの時とは少し違った電子音が…って
「え!?」
…?あっ!!
しまった忘れてた!!?部外者侵入防止屋内配線型装置の存在忘れてた!
こんなんで何が零点一つ星警察隊員ですか。しっかりしましょう僕!
「うわぁぁあ!?」
部外者侵入防止屋内配線型装置があまりにたくさん絡まってるので…どこまでも駄目じゃないですか僕は!!ん?
「は、春雨ちゃん…!」
「え、時雨!?頭どうしたんですか!?」
「それは…あれ?転けたの?春雨サマったらドジっ娘なんだから☆私の旦那さまは本当に可愛いな~」
「…せめて『旦那さま』と『可愛い』どちらかにしてくださいよ…うぅ…」
「…ところでこのコンセントって危険なやつだよね?触っちゃって大丈夫だったの?」
「駄目だと思いますが、それより時雨…その頭は?」
「え、ああそうだった忘れてた!そこにカツラ落ちてたから持って歩いてたんだけど、邪魔だから被っちゃったの」
「それから何でここに…時雨ッ!!」
「キャー!?」
時雨の後ろから誰かが…見覚えがあるような無いような顔…!ん?
時雨の持ってるカツラ…もしかして!
「教頭先生!!?」
「……」
「さすが春雨サマ!かっこいいなぁ…ふふふ…」
腕を抱いてくる時雨。いい加減離れて欲しいですけどそれより…
き、教頭先生がすごい目で見下ろして…くるんですけど…
「ワ~タ~シ~ノ~カ~ミ~ノ~ケ~ヲ~…」
「きゃー春雨さまー助けてー!!」
「返せゴラァ!!!!」
「うわっ!?」
変なものを大量に投げてくる教頭。あれは一体?教頭ってこんな方でしたっけ!?
仕方がないです、フリスビーで対処しましょう!
「フリスビーって防御もできるんだ!春雨サマステキー!」
「しばらく黙ってて下さい時雨!!」
「ぐすん…フラれてしまったわ…それで、これどっち行くの?」
「今無理です!来た道を戻りましょう!!」
「それがね…」
…!フリスビーが割れた!
今ストック何枚ありましたかね…二枚くらいは使っても…
「痛っ!」
「時雨!!うわぁっ!?」
「……」
う…教頭が!なんというか、ゴゴゴゴゴって感じですね…!!
「ゆ…る…さ…な…い…」
ホラーですか!!?でもどうしましょう…行き止まり…う、いよいよ僕も二軍落ちですか…!
「春雨ちゃんが教頭に壁ドンされてる!?なんということ!私の人生終わりだわ…教頭サイテー!」
「ちょ、なんのつもりですか時雨!まずこれ壁ドンって言いませんよ!?」
「教頭めーっ!」
ここで時雨が一蹴。
「がはぁっ…!?」
ばったり倒れて泡を吹いた教頭の上にカツラが落ちました。当たりどころが良かったんですかね?なんだか立科さんの顔思い出しました…時雨が何かするとちょっと和んだりするなぁ…
「!あと3分!?急がなきゃ!はやくアジトを抜け出さないと!」
「そうよね春雨サマ!私なんかと違って授業の時間も気にして…良い子に育ったわね…」
「時雨は僕の親ですか!!?」
「よし、教頭を隠して逃げよう!」
「は、はい!でもここどこですか?」
「うーん…あっちが本当の帰り道なんだけどシャッターが出ちゃってて」
「え?壊れてますよ?」
「え?」
見覚えがありすぎる人影…あれは明らかに
「佐倉さん!」
「なんか音するな~って思ったから来てみたんだけど春雨ちゃんと時雨ちゃんか♪奇遇だね!」
「あ、ありがとうございます、壊してくれて!都合があってシャッター邪魔だったんですよ!」
「そーだったの?まあお安いご用さ☆」
「あと御願いがあるんですけど3分以内にZ組教し」
「3分?よしこれに乗って!おりゃあー!!」
「!?」
水玉の謎の乗り物に乗って猛スピードで進みZ組校舎に突き刺さり、さらに大きな機械が登場しそれに僕らは放り込まれてZ組教室に窓から入りました。わずか一分以内で着けるとは、佐倉さんが世界最強の…!?
「はあ…また私と粟倉と…一だけか…え!?春雨と時雨!?いつの間に!」
「痛…時雨大丈夫ですか?」
「…大丈夫ではないよー春雨なんとかして!」
「もう…元気じゃないですか!甘えん坊なんですから!」
「今のかわい」
「二人ともうるさい!授業受けるなら静かにして!」
「……」
とりあえず授業に間に合ってよかった、うん。




