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Marbling 現実と伝承が交わる、その先へ。  作者: 赤足


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13/14

13 道


 橋を後にした四人は、地図へ視線を落とした。


 残る目印は、古いトンネルと神社。


「次は古いトンネルか。」


 鼎が呟く。


「じゃあ、行こ!」


 美羽が歩き出す。


 四人は住宅街を抜け、人通りの少ない道へ入った。


 蝉の鳴き声だけが響いている。


 その時だった。


「おーい!」


 後ろから声が飛んできた。


 振り返ると、一人の青年が小走りで駆け寄ってくる。


 二十代半ばほど。


 人懐っこい笑顔を浮かべ、額には汗を滲ませていた。


「助かったー。」


「やっと人に会えた。」


 青年は息を整えながら笑う。


「一人で歩いてたら、さすがに心細くてさ。」


 鼎が尋ねる。


「受験者ですか?」


「ああ。」


 青年は頷いた。


「辰野渉。よろしく。」


 四人も順番に名乗る。


 辰野は安心したように笑った。


「五人なら心強いな。」


 自然と五人で歩き始める。


 しばらくすると辰野が振り返った。


「みんな、水分ちゃんと飲んでる?」


「暑いから無理するなよ。」


「まだ平気!」


 美羽がペットボトルを掲げる。


「ならよかった。」


 辰野はほっと笑った。


 誰かを気遣うことが、ごく自然な人だった。


 鼎はそんな横顔を見て、小さく笑う。


(面倒見のいい人だな。)


 穏やかな空気のまま歩き続ける。


 しかし。


 鼎はふと足を止めた。


「……どうした?」


 辰野が振り返る。


 鼎は周囲を見回した。


 古びた郵便受け。


 曲がった電柱。


 塀から伸びた柿の木。


 見覚えがある。


「また同じ景色……?」


 美羽が辺りを見回す。


 葵は静かに地図を開いた。


「距離は進んでいる。」


 秋山も周囲へ視線を巡らせる。


「ですが、景色が変わりません。」


 鼎は一本道を見つめた。


 橋では時間。


 道祖神では記憶。


 そして今は、道。


 五和の言葉が脳裏によみがえる。


 ――道を信じるな。


 鼎は少し考え込む。


(道を信じるな……。)


(道を外れろってことか……。)


 ふと、首を横に振る。


(いや、違うな。)


(それじゃ、言われた通りに動いてるだけだ。)


 鼎は足元の舗装路を見下ろした。


 誰かが作った道。


 だから皆、疑わずに歩く。


 だったら――。


 鼎は草むらへ視線を向けた。


 踏み跡はない。


 でも、歩けないわけじゃない。


「……なあ。」


 四人が鼎を見る。


「この道が正しいって、誰が決めたんだ?」


 一瞬、誰も言葉を返せなかった。


 鼎は少しだけ笑う。


「道がないなら。」


 一歩、草むらへ踏み出した。


「作ればいい。」


 草を踏む音が静かに響く。


 四人は顔を見合わせる。


 最初に笑ったのは辰野だった。


「ははっ。」


「そういう考え方か。」


 秋山は顎に手を添え、静かに頷く。


「私は反対しません。」


「やってみる価値はあると思います。」


 葵も小さく息を吐いた。


「異論はない。」


 五人は舗装された道を離れ、草むらをかき分けながら歩き始める。


 足元には、まだ道はない。


 一歩。


 また一歩。


 自分たちの足で、新しい道を作っていく。


 その先だった。


 木々の隙間。


 蔦に覆われた古いコンクリート。


 ぽっかりと口を開けた、小さなトンネルが姿を現した。


 地図には載っていた。


 それなのに、舗装された道を歩いている限り、誰一人見つけることのできなかった場所。


 鼎は静かにその入口を見つめる。


 そして、小さく笑みを浮かべ呟いた。


「……こういう事だったのか。」

大分、風邪良くなってきました。

今回も読んでくださり、ありがとうございます。

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