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境界に眠る光 ━はじまりの外の世界へ━  作者: くいたん


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第75話 こぼさないために

第74話が抜けてましたので修正しました。

まだの方は戻ってお読みください。

昼の時間。


光はやわらかいまま、地面に淡く広がっている。


でも、その場の空気には、わずかな張りつめた気配がある。


「……ここでやる」


リオンが、周囲を一度見渡してから静かに言う。


少し開けた場所。

精霊の光が、自然に集まりやすい場所。


ザーラは小さくうなずき、ルティをそっと地面へ下ろす。




「……あそぶ?」


ルティが、きょとんとした顔で見上げてくる。


「……うん」


ほんの少し迷ってから、やわらかく笑う。


「……でもね、今日はちょっとだけちがう遊び」


しゃがんで、目線を合わせる。


「……こぼさない遊び、してみよっか」


「……?」


「……ひかり、いっぱいあるでしょ?」


「……うん!」


「……それをね、逃がさないで、やさしく持つの」


ルティの目が、ぱっと輝く。


「……やる!」


すぐに手を伸ばす。




周囲の光が、ふわりと引き寄せられる。


リオンが、短く言う。


「……まずは、形を作るな」


「……?」


ザーラが眉を寄せる。


「……掴もうとするな。寄ってくる流れを、そのまま受けろ」


「……受ける……」


ザーラも、ゆっくりと手を出す。


指先に、かすかな感触。


光が、集まりかけて――


「……っ」


無意識に、力が入る。


その瞬間。


ばらける。


ふわ、と逃げる。




「……あ」


思わず声が漏れる。


胸の奥が、ざわつく。


昨日と同じ感覚が、よぎる。


熱が、広がりかける。


「……止めるな」


リオンの声が、低く入る。


「……押さえ込めば、散る」


ザーラの呼吸が、浅くなる。



「……一度、全部流せ」


「……全部……」


「……手の中じゃなくて、外に意識を置け」


「……」


うまく掴めないまま。


ザーラは、視線を動かす。


ルティの方へ。


ルティは――


「……あっ、にげた!」


逃げる光を追いかけている。


手を伸ばして、また逃げられて。


でも。


今度は。


「……そっと……」


小さくつぶやいて。


指を閉じるんじゃなくて、囲むように手を動かす。


光が、逃げずにとどまる。


「……つかまえた……!」


「……」


ザーラの呼吸が、少しだけ落ち着く。


掴むんじゃない。


囲む。


閉じるんじゃない。


余白を残す。




「……」


ゆっくりと、息を吸う。


胸の奥の熱を、押さえない。


そのまま。


流す。


手の外へ。


光の方へ。


「……」


今度は、力を抜いたまま。


指を、ほんの少し開く。


光が、逃げない。


むしろ、寄ってくる。



「……!」


じわりと、手のひらに集まる。


揺れるけど、散らない。


「……できた……」


小さく、息と一緒にこぼれる。


そのとき。


「……ざーら!」


ルティが、ぱたぱたと駆け寄ってくる。


「……みて!」


手の中の光を、誇らしげに見せる。


ザーラのものより、少し不安定で。


でも、確かに保っている。


「……うん、きれいだね」


「……えへへ」


ルティは、そのまま手を重ねてくる。


ぴと、と。



「……いっしょ」



その瞬間。


ふたつの光が、ゆっくり混ざる。


弾けない。


奪い合わない。


ただ、重なる。


「……!」


ザーラの目が、わずかに見開かれる。


さっきよりも、安定している。


あたたかくて。


静かで。


「……それだ」


リオンが、小さく言う。


「……“支える”ってのは、形を作ることじゃない」


一拍。


「……崩れない流れを、保つことだ」


「……」


ザーラが、ルティを見る。


ルティは、変わらず笑っている。


何も考えていないようで。


でも、ちゃんと合わせている。



「……」



胸の奥の不安が、少しだけほどける。


ひとりじゃない。


その実感が、遅れて届く。


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