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境界に眠る光 ━はじまりの外の世界へ━  作者: くいたん


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第73話 知らなきゃいけないこと

朝の光が、少しだけ落ち着いてきた頃。



ルティは、ミーナと一緒に、少し離れた場所にいる。



ふわふわと漂う光を追いかけて、無邪気に笑いながら。




「……」


その様子を、しばらく見つめながら。



ザーラが、ぽつりと口を開く。



「……リオン」




「……」


リオンは、すでに気づいている。



その呼びかけに混じる、声の重さに。




「……なんだ」




短く、余計な言葉を挟まずに返す。



「……聞かせて」


まっすぐに向けられた視線。



逃げることのない、強い目。




「……あの人たちが、何をしたいのか」




「……」


一瞬だけ、空気が沈む。




リオンは、わずかに視線を外す。



ルティのいる方へと。



小さく笑っている。



何も知らないままで。




「……」


静かに、ひとつ息を吐く。




「……本当は、まだ早いと思っていた」


低く、抑えた声で。



「……でも」



ゆっくりと、視線を戻す。



ザーラの方へと。



「……もう、関係ないな」



覚悟を決めたような声音。



ミーナも、気配を感じ取って近づいてくる。



ごく自然な流れで。



「……」


リオンが、ゆっくりと言葉を選びながら話し始める。



「……“鍵”と呼ばれている存在がある」



「……」


ザーラの指先が、わずかに動く。



「……人の形をしていることもある」




「……!」




ミーナが、小さく息を呑む。



「……だが、それは本質じゃない」



一拍、間を置いて。




「……“境界を開く存在”だ」



静かに、はっきりと。



「……この世界と、別の層を繋ぐためのものだ」




「……別の……世界……」


ザーラが、確かめるように繰り返す。



「……」


リオンは、小さくうなずく。




「……そして、その条件のひとつが」




ゆっくりと視線が、ルティへ向く。



「……“異なる世界の魂”であることだ」




「……!」




その場の空気が、一瞬で止まる。



ザーラの呼吸が、浅く揺れる。




「……それって……」



言葉にしようとして、止まる。




「……」


リオンは、否定しない。




「……あいつは、この世界の“外”を知っている」



「……無意識のままでな」



「……」


ザーラの手が、ルティの方へと伸びかけて。



途中で、止まる。




“違う存在”




その言葉の重さが、胸に沈む。



「……でも」


リオンが、わずかに声をやわらげる。



「……それだけでは、鍵にはならない。




「……?」




「……必要なのは、“共鳴”だ」




「……」




「……境界というものを、“拒絶しない”こと」




「……普通は、弾かれる」




「……だが、あいつは違う」


精霊の光が、ゆらりと静かに揺れる。




「……自然に、受け入れられている」




「……だから」




一拍の間。



「……開くことができる」


静かに、断言する。




「……道を」




沈黙が、落ちる。




ミーナが、小さくつぶやく。



「……じゃあ……」



「……あの人たちは」



「……」


リオンが、淡々と答える。




「……向こう側へ行きたいんだ」



「……資源や、遺構や、未知の技術」



「……なんでもある可能性がある」




「……」


ザーラの胸が、ざわりと波打つ。



「……そのために」



「……ルティを?」



「……」


リオンは、わずかに目を細める。




「……使うつもりだ」



はっきりと、言い切る。



「……最悪の場合は」



「……壊してでも」






「……!」




ザーラの腕に、強く力が入る。




「……」


呼吸が、わずかに荒くなる。



それでも。



「……だからこそ」


リオンが、低く言う。




「……隠すだけでは、足りない」



「……」



「……“守る方法”を、選ばなければならない」




ザーラの目が、静かに揺れる。




「……」


ゆっくりと。




ルティの方を見る。




笑っている。


何も知らないままで。




「……」


小さく、息を吐いて。



「……この子は、この子だよ」


わずかに震えながら。



それでも、はっきりと。




「……鍵なんかじゃない」




沈黙が、落ちる。




リオンは、静かに目を閉じる。



そして。



「……ああ」



短く、肯定する。



「……だから、守るんだ」



その言葉には。



冷たさはない。



現実を知った上で。



それでも選んだ、意志。

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