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境界に眠る光 ━はじまりの外の世界へ━  作者: くいたん


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エピローグ 白樺亭の灯り


雪は、あの日から何度か降った。


白樺亭の屋根へ静かに積もって。


朝になれば、陽の光で少しずつ溶けていく。


その繰り返しの中で。


季節は、ゆっくり前へ進み始めていた。


「……」


朝。


まだ薄暗い時間。


白樺亭の厨房には、もう火が入っている。


暖炉の火が、ぱちぱちと小さく鳴る。


パンの焼ける匂い。


スープの湯気。


窓ガラスには白く曇りが広がっていて、その向こうでは雪が静かに降っていた。


「ルティー! 起きなさい!」


ミーシャの声が飛ぶ。


二階から、もぞもぞと音がした。


しばらくして。


「……おきてる」


眠そうな声。


「その声は寝てるわね」


「……め、とじてるだけ」


「同じよ」


階下で、バルドが吹き出した。


「学習しねえな、こいつ」


「……してる」


階段の途中から、毛布にくるまったルティが顔を出す。


髪はぼさぼさ。


まだ半分眠っている。


でも、その頬にはちゃんと赤みが戻っていた。


左腕の痣は、まだ消えていない。


黒い名残が、うっすら皮膚へ残っている。


けれど、以前みたいな冷たい痛みはもうなかった。


時々、遠くで鐘の音がした時だけ、少し熱を持つ。


それだけだ。


「ほら、座れ」


バルドが椅子を引く。


ルティが、とてとて歩いていく。


その途中で。


窓際に座っていたザーラが、小さく視線を上げた。


「おはよう」


少しぎこちない声。


でも、自分から言った。


ルティが、目をぱちぱちさせる。


それから。


「……おはよ」


ちょっと嬉しそうに返した。


ザーラは、まだ時々戸惑っている。


誰かと食事を囲むこと。


名前を呼ばれること。


椅子へ座ること。


「また明日」と言われること。


そんな当たり前へ、まだ慣れきっていない。


でも。


最近は、自分から窓を開けるようになった。


暖炉へ薪をくべるようになった。


時々、笑うようにもなった。


そのたびに。


止まっていた時間が、少しずつ溶けていくみたいだった。


「……」


セレナは、その様子を静かに見ていた。


窓際。


朝の光。


湯気の向こう。


ザーラが、パンをちぎっている。


本当に、ただそれだけの光景。


でも。


セレナは時々、それを見てしまう。


ちゃんと、いる。


消えていない。


帰ってきている。


その事実を、何度でも確かめるみたいに。


「セレナ」


リオンが低く呼ぶ。


セレナは、はっとして顔を上げた。


「……なに」


「冷める」


自分のスープを見て、少しだけ笑う。


「そうね」


白樺亭の中へ、小さな生活の音が流れていく。


皿の音。


スープをかき混ぜる音。


ミーシャのため息。


リックの笑い声。


雪の降る音。


全部、あたたかかった。


「……」


ルティは、スープを抱えながら窓の外を見る。


白い雪。


森。


遠い空。


あの鐘楼は、もう見えない。


でも。


風の奥で、時々小さな鐘の音がする気がした。


カーン――。


遠く。


やさしい音。


帰る道を見失わないように、どこかで静かに鳴り続けているみたいな音。


「……」


ルティは、スープをひとくち飲む。


あったかい。


胸の奥まで、じんわり熱が落ちていく。


それから。


ぽつり、と言った。


「……かえってるね」


誰へ向けた言葉なのか、自分でも分からなかった。


帰っていった人たちへかもしれない。


鐘守へかもしれない。


それとも。


今、ここへ座っている自分たちへかもしれない。


「……ああ」


バルドが、静かに返す。


短い声。


でも、その声は暖炉の火みたいにあたたかかった。


ザーラが、そっと目を伏せる。


その横顔は、もう“帰れないもの”の顔ではなかった。


寂しさも、痛みも、きっとまだ消えない。


それでも。


今は、ちゃんとここへ座っている。


名前を呼ばれて。


湯気へ触れて。


「おかえり」がある場所で、生きている。


「……」


ルティは、眠そうに目をこする。


すると、ミーシャが呆れた声を出した。


「だから、食べながら寝ないの」


「……ねてない」


「寝てるわ」


「……むう」


白樺亭へ、小さな笑い声が広がる。


暖炉の火が、静かに揺れる。


窓の外では、雪が降っている。


けれど。


白樺亭の灯りは、その白い夜へやわらかく滲んでいた。


まるで。


帰る場所を探している誰かへ向かって。


いつでもここにいていいのだと。


静かに、あたたかく。


灯り続けているみたいに。

あとがき  ※ちょっと長めなので飛ばしてもOKデスヨ('ω')ノ


★お読みいただきありがとうございました。★


一応これにて、ルティの物語は完結となります。

作成に関しては、ストーリー、キャラ設定、世界観は私の妄想でオリジナルです。

ただし、文章力のない自分のため、AIの協力を得て作成した小説となります。

もともと、読み宣だったのですが「こんな話が読みたい」という願望の元、AIと相談しながら作り上げたものです。

素敵な物語に仕上がったので

「自分だけで楽しむのも、なんだかもったいない。みんなで共有したいな」という想いで投稿しました。

AIに反発を持たれる方もおられるかと思います。

きちんと自分の力だけで文章を作り上げるのが王道かとも思っています。


作ってみて思ったのは、AIはプロンプトをちゃんと入れてあげないと、きちんとしたストーリーや流れが造れないということです。単純に「おもしろい小説書いて。」ではダメなんですよね。

職場でもAI利用を推奨される昨今、自分なりの挑戦となりました。

ルティを育てていくのは楽しかったです。

この後、いくつか番外編を入れていきます。

特に、「ここ、どうなっているの?」という問題の回収になるようにするつもりです。

挿絵もAIにプロンプトを入れ込んで作ったものです。

リクエストなどあれば、そのシーンの挿絵も追加したいと思ってます(*‘ω‘ *)


★★リクエスト、受付中★★


また、楽しい物語ができたら新たに投稿させていただくこともあるかもしれません。

また、読み宣に戻るかもしれません。    

それでは、番外編をおたのしみくださーい。


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