第93話 籠の鳥
上級魔法騎士で国王秘書のクーニャは、髪と同じ紫色のパンツスーツでルイ・ザード大隊長と待ち合わせていた。
クーニャはアイテムボックスから金色の懐中時計を取り出し確認した。
[まだまだ時間前ね]
独り言が漏れる。
⬜︎⬜︎⬜︎
同じ頃、男と逸れた女がカフェに姿を現す。
クーニャはメリウスの情報で怪しい男女がカフェに出没すると、聞かされていた。
ドメーヌ城に隣接するカフェは、此処以外にない。
クーニャはメリウスが男を拉致した件を知らない。
女がテーブルに独りでいるクーニャに話し掛けた。
「あの、すみません」
「なにかーー」
「ええと、私のお友達の男性と逸れてしまってーー 」
女は男の特徴をクーニャに説明した。
クーニャはメリウスから聞かされている情報と一致していることを知った。
ザード大隊長はまだ見えていない。
「あの、良かったら、どうぞ」
クーニャは女に席を薦める。
「よろしいんですか」
「大丈夫です。4人掛けですし、お友達が遅れていますので」
「じゃあ、少しだけお邪魔します」
クーニャは女の礼儀正しさに心の中で驚く。
クーニャは考えてみた。
魔法省の関係者なら公務員だ。
礼儀ぐらい出来て普通。
クーニャの表情に気付いた女は警戒心を強める。
クーニャは内心を悟られないように注意した。
「あゝ、すみません。考えごとする癖が出てしまい失礼しました」
「いいえ、相席させていただいているのは私ですから」
⬜︎⬜︎⬜︎
カフェのウエイトレスが注文確認に2人の前に現れた。
いつもと違う制服に違和感を感じる。
クーニャと女は定番のハーブティーを注文する。
トレンチを手にしたウエイトレスが振り返った。
クーニャにウインクして手で合図を送っている。
クーニャしか知らない合図。
「フェーー 」
クーニャが声を上げそうになった。
ウエイトレスの人差し指が口元で止まる。
左手のトレンチが女の顔を一瞬隠した。
[シー]
妖精フェリカがウエイトレスに変身していたことをクーニャが気付く。
フェリカは、2人の前から消えた。
女の記憶は、フェリカの封印魔法で閉ざされた。
⬜︎⬜︎⬜︎
メリウスは筆頭執事の部屋を訪れる。
執事ダイヤと見習いキャンニャが同席していた。
メリウスは手短に状況を伝え部屋を出ようとするが・・・・・・。
「メリウスさん、待って」
王女ルシアがメリウスを止めた。
横には社交本部の受付嬢のルニャが立っている。
ルニャはドメーヌ王国では珍しい黒髪だった。
瞳はルシアに近い水色。
「ルシアさま、何か」
「先日、お話したルニャのこと、覚えていらっしゃる」
「ええ、ルシアさまのお話ですから」
「それでね。お時間あるかしら」
「ルシアさま、あの件がひと段落すば」
「そうね、そっちのほうが優先順位が高いわね。あとで連絡して」
「はい、必ず」
メリウスは、ぺこりと頭を下げる。
ルシアが視線を戻すと姿が消えていた。
⬜︎⬜︎⬜︎
メリウスは黒猫に変身して城の尋問室を覗く。
気絶している男の鼾が聞こえていた。
テレパシーで使い魔のフェリカを呼び出す。
フェリカはカフェの出来事を嬉しそうにメリウスに伝えた。
次の瞬間、フェリカは妖精の姿になってメリウスの前に現れる。
「メリウスさま、次はどうされますか」
「フェリカは、どうしたい」
「メリウスさま、じっくり行きましょう」
「彼等は籠の鳥です」
第93話 籠の鳥
お読みいただきありがとうございます。
次話エピソードは、
「第94話 アドバイスは護身魔法」
「魔法使いと王女の時空飛行〜女子高生メリウスと王女ルシア
〜大魔法で異世界を駆け抜ける〜」
次話が準備出来次第、
順次公開しています。
三日月未来
(みかづきみらい)




