第三章 もう一人の皇帝 5
「サブリナも頑張ったが、結局いいところは全部エレノア、ブレイズ、ヘザーに持って行かれてしまった。今回の戦ではヴァレリー達が手柄を上げたところで、免赦されたりはしないが」
指揮官シートに座し戦を振り返る零は、面白く無さそうな口調だ。
軽巡航艦ローレライ二の街角を連想させる艦橋エリア・総合指揮所の発令所。総合指揮卓には、各AIサポート担当官と六合兵団の大隊長以上のキャバリアーが座していた。
零の近くに座るサブリナが、肩を竦め音律のある声を投げやりにする。
「前皇帝派貴族の討伐戦で活躍したからって、焼け石に水ね」
「ま、そうだけど。オルタンスやシャルロットにはいい経験になったわ。これから使っていくつもりなんでしょう、零?」
隣のサブリナに答えるヴァレリーが、零に問いかける。
「ああ。そのつもりだ。内乱が続く限り、戦は終わらない。ここぞという場が、きっとある筈。そのとき、一緒にいて貰わないと功績者の一人にできないからな」
「確かにそうね。この前皇帝派貴族討伐戦を除けば、残るはアルノー大公国・ヴァグーラ王国経済共同体諸国家盟約連合軍との戦いのみ。大功を立てる機会が巡ってきて欲しいものだわ。じゃなきゃ、お嬢様もわたしも困ったことになる」
榛色の瞳に憂色を宿しちらりとヴァレリーを見遣るサブリナに、零は麗貌を憮然とさせる。
「六合兵団――決死隊が、三度の試練を終えていることが問題だな。前は嫌でも、死ねっていう任務が回ってきた。それだけ功績を立てる機会があったが」
「運次第って、わけね」
ヴァレリーが凜々しさと清楚さが同居した美貌の生気を曇らせ、青い明眸がどこか遠くを見遣った。




