表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/16

第二章 乱流 8

零、エレノア、ブレイズ、ヘザー四名四体のグラディアートと六合兵団の第一エクエス相当のキャバリアー十五名十五体のグラディアートが、戦場を疾駆しメイユールに機乗する女帝ヴァージニアの元へと向かう。幸いストレール軍団が離れたオルデン・エクエスとストレール・エクエスの交戦ポイントよりもデュポン兵団群が敵兵団群と交戦するポイントの方が近い。第一エクエス駆るスーパーグラディアートとの速度差を持ってしても、遅まきとならずに済むはずだ。


 六合兵団の第一エクエス相当のキャバリアーには、零の直卒小隊に属する年少者も含まれる。相手は第一エクエス・ストレール軍団、1000強だ。一人でも戦力が欲しいのだ。迂回する敵軍団よりも女帝に近い位置だというのに、刻一刻とその有利は食い潰されていく。


 焦れったそうな合成音声を、ブレイズは高速情報伝達に乗せる。


【間に合うか】


【速度が違う。さすがはストレールのティグリス。こちらよりも先に、女帝陛下の元に到着する】


【親衛隊が耐えてくれれば、わたし達が間に合うのですが】


【インターンの学生だが、精鋭揃いの筈だ。やって貰おう】


 ブレイズの言葉にエレノアは現状を冷静に分析し、ヘザーは淑やかな声に微かな切望を乗せ、零はやって貰わなければ困るといった口調だ。


 やや機械的に、零の契約ファントムエイラが告げる。


【女帝陛下及び親衛隊とストレール軍団が接敵】


 架空頭脳空間(オルタナスペース)内の空間認識戦術マップでは270体の親衛隊機ギャルド・インプリスが、ストレール・エクエス駆るティグリスを阻んでのけたことが見て取れた。


 初攻勢を凌いだことを見て取った零は、独りごちる。


【いいぞ、そのまま女帝を守り抜くんだ】


【到着だ。各自、余計な敵には構うな。軍団長機の撃破が、わたし達の目的だ】


 零の言葉に呼応するように、エレノアが檄を飛ばす。


 カメリア色をした麗美さの中に機械的な先鋭さが散りばめられた、優美でありながら先進さを感じさせる機体。軽快さを感じさせる部分部分内部構造が透かし見えるネイキッド装甲が用いられた俊敏なグラディアートが、ボルニア帝国皇帝機メイユールだ。その皇帝機が、周りを固める新鋭隊機の穴を突き襲ってくるティグリスを、アダマンタイン製光粒子(フォトン)エッジ式ツヴァイハンダーで一撃の下切り倒していた。


 女帝ヴァージニアはソルダ位階第二位伝説級のキャバリアーであり、只守られるだけの無力な皇帝とは無縁だ。一振り一振りの太刀筋は、力強くもあり優美でもあった。


 そして皇帝機メイユールを守るアンバーローズ色をした大国ボルニアが最高戦力として生み出した傑作グラディアート・インプリス・オルデンv0をエレガントにした、親衛隊機に相応しい気品あるグラディアートがインプリス・ギャルドv3――ギャルド・インプリスだ。皇帝機メイユールへの接近を阻むように、ギャルド・インプリス二七〇体はストレール軍団との防波堤の役目を果たし雪崩れ込まれるのを防いでいた。


 がいかな精鋭たる親衛隊とはいえ、数の差は如何ともしがたい。まだ被害は出ていないものの、一体一体と倒されていけば崩れ去るのも時間の問題だった。


 ミリタリー推力で接近する零は、短く命じる。


【突撃。狙うは敵軍団長機】


 接敵。


 零達の急襲に軍団の中でも後方に位置する敵ストレール軍団長直卒大隊は、即座に反応。


 零はゲレイドに刹那の神速を課し、右側面を取った内部センサを透かし見せるレーサーヘルメットのような頭部の高機動型のティグリスが繰り出す光粒子(フォトン)エッジ式ショートソードの斬撃に機体を捻り光粒子(フォトン)エッジ式ブレードで応じた。


 女帝軍のクローズド通信で情報感覚共有(iss)リンクシステムが接続し、高速情報伝達で誰何が飛ぶ。


【何者か?】


 恐らく親衛隊の何者かだろう問いに、答えたのはエレノアだ。


【こちらは、デュポン兵団群所属エレノア・リザーランドだ。女帝陛下に危機を感知し、救援に僚友と共に駆け付けた。守りを固めよ。ストレール軍団長は、こちらで討ち取る】


【エレノアか。よく参った】


【ヴァージニア陛下。後はお任せあれ】


 その返事と共に、エレノアのファブールが猛った。ライラック色のやや大ぶりの装甲の兵団精鋭用ファブールが、相性が決していいとはいえないティグリス相手に光粒子(フォトン)エッジ式バスターソードの一振りで確実に屠っていく。機体の周囲にムーブによる秘超理力(スーパーフォース)の波紋も幾重にも生じさせ、ティグリスとの機動性能の差を埋め越えさせた。


 そして、ブレイズ。ウィスタリア色の要所を守るアーマーが丸みを帯びた内部構造を覗き見せる構造のランスールが、持ち前の機動性でもって高機動グラディアート・ティグリスの高速性をも凌ぐ。一帯に死が撒き散らされた。最精鋭のストレール・キャバリアーが駆る一国が総力を挙げ開発したグラディアート・ティグリスを蹂躙していく。


 最後にヘザー。オーキッドピンク色をした繊細な細工を思わせる後方へ突起が伸びた流線形のフェイスマスクが特徴の細身のナイチンゲールが、その外見通りの繊細なティグリス以上の小回りで敵高機動グラディアートの機動性を殺す。先回りするような動きで、敵ストレール・キャバリアーが駆るティグリスの出鼻を挫き圧倒的な撃破数を叩き出した。


 3体のグラディアートの猛攻に、敵軍団長直卒大隊が乱れた。


 機体とファントム性能で劣る零は、決して3人にキャバリアーとしての能力で劣るわけではないが、置いてけぼりを喰らってしまう。


 普段にはない猛々しさで、陽気にブレイズが零に呼びかける。


【悪いな、零。最上の獲物は俺が頂くぜ】


【零、無理はしなくていい】


【お先に、零。狩りはわたし達に任せてください】


 ブレイズ同様のエレノアとヘザーに、零は思わず毒づく。


【全く! 3人とも、愉しんでやがる。悔しいが、今の俺じゃあの3人の戦闘について行けない。サブリナ、ヴァレリー、六合兵団で3人の道を作るぞ】


【分かったわ】


【了解】


 サブリナとヴァレリーから返事が返り、零は架空頭脳空間(オルタナスペース)で戦術プロットを組み上げた。


 六合兵団零を含む一六体のグラディアートが、3分の2ほどに数を減らした軍団長直卒大隊への本格的な攻勢に移った。全ては、エレノア、ブレイズ、ヘザーの道を切り開くため。16体のゲレイドが、ティグリスに挑む。


 とはいえ、機体の性能差が大きい。片や主力兵団前主力機の型落ち。片や第一エクエス専用の最新。同じ第一エクエス同士。まともに遣り合えば不利だった。


 そのため選抜隊を六合兵団から繰り出すとき、零はよくよく言い含めていた。ストレール・エクエス駆るティグリスの撃破には、こだわるなと。必要なことは、足止めだと。女帝ヴァージニアの火急を救うには、時間稼ぎをすればいい。この状況に、早速オルデン・エクエスに動きがあった。


 30体ほどに数を減らした軍団長直卒小隊の16体を足止めできれば、軍団長機への道が開けるのだ。


 目の前のティグリスに、零はフェイントの斬撃を仕掛けた。が、ファントム性能の差から未来予知(プレコグニシヨン)には敵に分がある。零の意図は読まれていた。右から袈裟懸けにした斬撃に、光粒子(フォトン)エッジで応じずティグリスは硬化型ラウンドシールドで受けた。本来は応じた敵の光粒子(フォトン)エッジを擦り抜け、機体に届くはずだった妖剣。


 が、それは零にも織り込み済みだった。


 前に出した小ぶりの硬化型ラウンドシールドが、ティグリス自身の攻撃手段も封じる。一方の零のゲレイドは光粒子(フォトン)をふるった右手は塞がれたが、左手はフリーだ。アームでラックされた硬化型ラウンドシールドを突き出した左手の後ろ側にスライドさせる。顕わになった左掌が、ティグリスの胴に触れる。


 衝撃(インパクト)


 敵の機体に当てた掌から、複数の波長の異なるプラズマが発生する。重奏波(ミクスチヤー)。発したプラズマの衝撃で内部を破壊する、発勁に似た原理の科学兵装。元となったのは、ソルダ技の超技、インジェクション。


 ティグリスが機体全体からスパークを発し、沈黙。


 麾下の小隊員達はと、零は周囲に視線を走らせる。副官のヴァレリーは、敵を抑えるだけに止まらずソルダ位階第四位ダイアモンドの実力でもってティグリスを撃破していく。他の年少組の小隊員達は、それぞれ敵第一エクエス駆るティグリスを抑える役を守っていた。バルチアンがときおり色気を見せながらも確実に目の前の一体との戦闘に集中し、オルタンスも大胆な戦闘ながらも己を抑え一体との戦闘をこなし、シャルロットはしっかり者の彼女らしく落ち着いて目の前の一体を相手し、ランベールも第一エクエス相手に凌いでみせる。


 毫の間零は、情報感覚共有(iss)リンクシステムに微笑を投げかける。


【その調子】


 麾下の様子を確認した零は新たなティグリスの相手をしつつ、軍団長機攻略組に視線を向けた。


 ストレール・エクエス軍団長機は、エレノア、ブレイズ、ヘザーの猛攻に逃げ惑っていた。エレノアのファブールが繰り出す斬撃を躱せば、その先にランスールの機動性で待ち受けるブレイズに慌て反転すれば、ヘザーのナイチンゲールがその先に先回りする。その様子に、零は敵のエリートたる精鋭ストレール・エクエスの名の知らぬ軍団長を憐れに感じる。あの3人を相手取れば例えゲレイドや人形(プーパ)でなくとも勝てるものか、と。


 敵軍団長機の撃破は、エレノアのファブールとブレイズのランスールが軍団長機とほぼ同時に接敵し斬撃を放とうとしたところを、斜め下から飛来したヘザーのナイチンゲールがかっ攫った。


 軍団長機を撃破された敵第一エクエス軍団は、俄に乱れる。零達救援組は、親衛隊と連携し敵の鈍った攻撃を凌ぎ女帝ヴァージョニアのメイユールを守った。急行したオルデン・エクエス2軍団に敵ストレール・エクエス軍団は退却する。


 急襲を受け甚大な被害を最初に被ったミラト王国軍は次第に劣勢となり、後退を開始した。デゥポン兵団群も、一度艦艇にグラディアートを収容後追撃へ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ