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第二章 乱流 7

「全キャバリアー、グラディアート機乗」


 艦隊と連動し急発進した軽巡航艦ローレライ二へ戻った零は、麾下の兵団に出撃準備を命じた。


 格納庫で零とヴァレリーを待っていた直卒小隊の年少者へ、零は声をかける。


「バルチアン、オルタンス、ランベール、シャルロット。出撃だ」


「もう? 戻ってきたばかりじゃないか」


 愚痴るバルチアンに、ヴァレリーが悪戯っぽく笑いかける。


「すぐに敵を叩きましょうって、零が焚き付けたから」


「何余計なことをしてるのよ、兵団長。少しは休みたいわ」


 不平を漏らすオルタンスを、シャルロットが窘める。


「敵と本格的に戦端が既に開かれた。わたし達の都合に合わせてはくれないわよ」


「そうだよ。少しでも休めたんだから、良かったじゃないか」


 シャルロットにランベールが同意した。


 一同の気が緩んでいないことを確認し、零は命じる。


「グラディアート機乗。そのまま出撃まで待機」


 ゲレイドに乗り込むと、コクピットシートに身を預けた零の目の前で二つホロウィンドウがポップする。


「さっき戦ったと思ったら、連戦とはね。人使いが荒いのね」


 年少者と分かれ流石に文句の一つも言いたいらしいヴァレリーが零へ冷たい視線を注ぎ、その隣のホロウィンドウに映し出されたサブリナが苦笑する。


「でも、仕掛けるなら確かに今が好機(チヤンス)。あの場で発言するなんて、零は度胸があるのね」


「度胸というか、単に不貞不貞しいだけよ」


 持ち上げるサブリナの言葉を、ヴァレリーはバッサリと切り捨てた。


 とそのとき軽巡航艦ローレライ二のAI(マザー)サポート参謀担当官フォルマンが、ポップしたホロウィンドウに現れる。


「先手を取り女帝軍を打ち破ろうと目論んだミラト王国軍は、序盤の有利を覆され退却。次の戦いに備え、陣容と整えている最中。仕掛けるには、いいタイミングですな」


「ああ。敵の警戒も薄いだろう。ミラトを叩くなら、今だ」


 答えつつ零は、上手く行けばミラト王国との戦はそれ程ときがかかるまいと見越した。


 突然、緊急通信用のホロウィンドウが立ち上がる。


「奮い立て、ボルニアの勇士達よ。この戦には、予自ら出陣する。手柄を立てれば必ず報いる。功に励めよ」


 ホロウィンドウには緋色のグラディアート機乗服に美身を包む女帝ヴァージニアが映し出された。


 それを見た零は、やや凶悪な笑みを麗貌に浮かべる。


「よくやる。緊急出撃で面食らってる味方の士気を高めるつもりか」


◇◇◇


 軽巡航艦ローレライ二から出撃し六合兵団は、リザーランド、リュトヴィッツ、ナイトリー三兵団と共に、デュポン直卒兵団の両翼に布陣した。陣容は、中央にモリス率いる兵団群長直卒兵団3000、右翼に六合・リザーランド二兵団1000強、左翼にリュトヴィッツ・ナイトリー二兵団1000。


 デュポン兵団群は全軍と共に加速。女帝軍は猛禽の如く、まだ出撃を開始したばかりのミラト王国軍に襲いかかった。ミラト王国軍グラディアートが、女帝軍グラディアート群の突撃の勢いで砕け散る。初手で、ミラト王国軍に甚大な被害を与えた。


 敵兵団主力機ルプスを撃破しつつ、零は麾下の小隊に呼びかける。


【小隊各位、このまま突き抜けろ。敵に構ってデュポン兵団群からはぐれるなよ。迷子になれば、立て直した敵に一飲みにされるぞ】


【【【【【了解】】】】】


 小隊から返事が返った。


 敵を粉砕し戦場を駆け抜けるデュポン兵団群は、ようやく出撃し陣形を整えた同数の敵兵団群5万と会敵する。周囲でも展開した敵兵団群と、味方兵団群が交戦を開始した。敵第一エクエス・ストレールの相手は、急行した第一エクエス・オルデンが受け持つ。


 本格的になった戦闘は、ボルニア帝国軍の優勢に進んでいった。


◇◇◇


 兵団指揮をサブリナに任せ零はヴァレリー指揮する直卒小隊の援護をしつつ、戦場全体を架空頭脳空間(オルタナスペース)内の空間認識戦術マップで確認していた。出撃したヴァージニアは、さすがにグラディアート群の後方に親衛隊だろう少数の護衛と共に陣取っている。第一エクエス・オルデンと同じく第一エクエス・ストレールの戦闘は、数の差からボルニア帝国軍の有利に運んでいた。全体としても、1割弱を最初のボルニア帝国軍による急襲によって失ったミラト王国軍が若干の不利だ。この分なら第一エクエス・オルデンが敵第一エクエスを破り、一気に戦況がボルニア帝国軍の勝利に傾きそうだった。


 と、そのとき。敵ストレール・エクエスの1軍団が戦列を離れた。その迂回するルートから、零にある懸念が持ち上がる。今オルデン・エクエスと戦闘中のストレール・エクエスは、1軍団でも数が欲しいはずだ。なのに強敵との戦いに、貴重な1軍団を戦線から離脱させた。オルデン・エクエスの戦闘から離れさせる、余程の大事がある筈だった。


 事態の深刻さに、零はすぐさまモリスに連絡を入れる。


【モリス、敵の動きが変だ】


【どうかしたのかい? 敵兵団群には別におかしな動きはないと思うけど】


【済まない。目の前の戦闘には、注意散漫だった。敵ストレール・エクエスのことだ。1軍団が、戦線を離れ戦場を迂回している】


【? オルデン・エクエスとの戦闘を放棄するような、重大な任務でもあるのかい?】


【ああ、ある。女帝陛下だ。今現在ヴァージニア陛下は、少数の護衛――6大隊の親衛隊に守られボルニア帝国グラディアート群の後方にいらっしゃる。戦場を迂回している敵が向かうとすれば、そこだろう】


【どうする? こちらでも迂回中の軍団を捉えた。大分先行しているね。今からオルデン・エクエスに連絡を入れても間に合うまい】


【こちらで、どうにかしよう。俺、エレノア、ブレイズ、ヘザーと六合兵団の第一エクエス相当のキャバリアーで、軍団長機を撃破し敵の動きを乱す】

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