第二章 乱流 5
デュポン兵団群が倍する兵団群を退けた頃、敵に雪崩れ込まれそうになっていた女帝軍だったが、オルデン・エクエスが敵を押し戻し始める。
頃合いかと、零はモリスに連絡を入れる。
【モリス、女帝陛下に上申して貰えないか?】
【ふむ。戦局が動きそうなのかい?】
【否、このままでは只の消耗戦だ。一度仕切り直したい。女帝軍はミラト王国軍に先手を取られたこともあるしな】
【了解だ。で、内容は?】
【ボルニア帝国軍には、上手く布陣できず戦闘に参加できていない遊兵が多数ある。それらを纏めて、ミラト王国軍の背後を突かせるべきだ。敵は恐らく引くだろう】
【僕の名前でいいのかい?】
【ああ。ここぞというときに、俺は目立ちたいからな。何せ、部下の命運がかかっている】
モリスがヴァージニアに意見具申し献策が受け入れられ、女帝軍は大規模な迂回攻撃に取りかかった。
遊兵を纏めた軍勢が戦場を迂回する間、デュポン兵団群を含めた味方が敵を抑える。
敵ストレール・エクエスは同じ第一エクエスのオルデン・エクエスが相手取り、残りを全戦力の六割で支える。
2小隊に分けていた六合兵団長直卒小隊を元に一小隊に戻し戦闘に参加していると、途中ヴァレリーが高速情報伝達で話しかけてくる。
【戦闘開始から、忙しいわね】
【先手を取られたのは、こちらだからな。どうしても応手が後手に回るし、敵と違い全軍が戦闘に参加できてるわけじゃない】
【戦闘に次ぐ戦闘。バルチアン、オルタンス、ランベール、シャルロットは平気かしら? 聞けば強がるでしょうから、疲労していても分からないわ】
【確かに休ませてやりたいが、もう少しだ。この大規模な迂回作戦が成功すれば、敵は引くはずだ】
【そうね】
ヘルメットのヴァイザー越しのヴァレリーは、凜々しさと清楚さが同居した美貌を引き締めた。
いつ終えるか分からない戦闘が続く中、迂回していた軍勢が敵勢の背後に出た。俄に敵の動きに動揺が見て取れた。
前後から挟撃させる形となったミラト王国軍は、程なく戦場から退いた。




