第二章 乱流 4
残る2兵団も打ち破り、3000の敵に二千強で当たった六合、リザーランド、リュトヴィッツ、ナイトリー4兵団の勝利で終わった。
と、そのときホロウィンドウがポップし、デゥポン兵団群長モリスが映し出される。
【やぁ、零君。そちらの戦闘は一段落したみたいだね】
【ああ。モリス、何だ?】
【我がデゥポン兵団群は5万。対して敵は10万だ。まともに戦えば、我が軍勢の負け】
【そうだな。倍の敵には勝てないな】
わざとらしい空々しさで答える零に、モリスは何も気付かぬ振りをする。
【敵の数を減らしたい。協力して欲しい。頼めるかな?】
【リザーランド、リュトヴィッツ、ナイトリー兵団の協力を得たい】
答えるなり零はモリスと確立していた情報感覚共有リンクシステム回線を、エレノア、ブレイズ、ヘザーとの間に確立した。
すぐさま三つのホロウィンドウがモリスの隣に出現し、エレノアが尋ねる。
【兵団群長、零、何か?】
【モリスが兵団群の劣勢を挽回したいそうだ】
【確かに。このままじゃじり貧だ】
零の言葉にブレイズが頷き、ヘザーが
【なら敵を分断する必要がありますね。分けた敵を多数で叩く】
零の言葉にブレイズが頷き、ヘザーが賛同の代わりに意見を口にした。
ヘザーの策は零が考えているものと同じで、零は合成音声を明るくする。
【ヘザーの言うとおりだ。敵を分断し各個に撃破するのが、上策だと思う】
【それは僕も考えてたよ。で、具体的にどうする?】
同意するモリスの目が一同を見回し、答えたのはエレノアだ。
【六合、リュトヴィッツ、ナイトリー、リザーランド4兵団と、兵団群長殿の直卒兵団で、敵を分断する】
【いい考えっすね。じゃ残りの兵団を二つに分けて、一つを分断し少数団にぶつけもう一つの兵団で切り裂いた跡を埋め残敵に備える】
【分断するのは3分の1、3万程度】
【それで行こう。それを群長直卒兵団とこの4兵団が、兵団の半数と挟撃する。残り半数で分断した敵中に割って入り残敵を抑える。で、どうだろうモリス?】
エレノアとブレイズにヘザーの策に賛成した零は、更に具体化しモリスに問う。
【僕もいいと思う。先ずは数の上で互角に持ち込みたい】
答えうつつモリスは、架空頭脳空間に今話し合われた内容で戦術プロットを組み上げた。
六合、リザーランド、リュトヴィッツ、ナイトリー4兵団が、デュポン兵団群長直卒兵団へと合流する。
戦力が集結するなり、モリスの号令が高速情報伝達を介し響く。
【では、戦術プロット通り、敵兵団群の突破地点へ突撃する。では、突撃】
モリスの号令一下、兵団群長直卒兵団、六合兵団、リザーランド兵団、リュトヴィッツ兵団、ナイトリー兵団の5兵団が、戦域を疾駆した。みるみる敵兵団の突破予定ポイントに到達。既に紡錘陣形をとっている兵団群は、リザーランド、リュトヴィッツ2兵団を先頭に敵陣に突入した。
やや陽気に、零はバルチアンとオルタンヌに呼び掛ける。
【今日二度目の敵陣突入だ。ついてるな?】
【そうやって馬鹿にして。見てろよ。もう半人前だなんて言わせない】
【戦いに不慣れだったのは、最初の頃だけよ。今はもうわたし達も一人前だわ】
バルチアンは負けん気の強さを見せ、オルタンスは挑発に乗ろうとせずムッと答えた。
二人の言葉に、情報感覚共有リンクシステムの高速世界で零は笑う。
【いい答だ】
接敵。
リザーランド、リュトヴィッツ2兵団が穿った穴へ、零率いる三機小隊が突入した。ドジにヴァレリー率いる三機小隊も。
キャバリアーの反射神経でもってしても、高速で迫るルプス。
零のゲレイドの前には、既に衝突寸前のルプスが。咄嗟に零は、ゲレイドの足底で蹴りつけ、進路から弾き出した。
間髪入れず、別のルプスが眼前に迫る。光粒子エッジ式ブレードを振るい、腹部の継ぎ目へ斬撃を放ち硬化型ラウンドシールドで強引にどかした。
右隣のバルチアンが突撃の勢いの中もたつくことを嫌ってか、硬化型ラウンドシールドを突き出しシールドバッシュをルプスに仕掛け中破させ進路から弾き出す。
左隣のオルタンスは硬化型ラウンドシールドと光粒子エッジ式ブレードを交差させ、鋭い刺突を放ち突撃の勢いで衝突する筈のルプスを盾に乗せるように背後へと追いやった。
近くのヴァレリー率いるランベールとシャルロットも、突撃の勢いに弾かれぬよう光粒子エッジと硬化型ラウンドシールドを巧みに使いルプスを躱す。
兵団群長直卒兵団、六合兵団、リザーランド兵団、リュトヴィッツ兵団、ナイトリー兵団の5兵団の突撃によって、敵兵団群が分断された。分断された穴を、残るデュポン兵団群の半数が埋めていく。5兵団群はそのまま敵兵団群を突破し素早く陣形を組み替え背面展開を。
モリスの命令が、高速情報伝達に響き渡る。
【敵を仕留めろ】
5兵団群の分断した敵兵団群背後からの攻撃と呼応し、敵正面の半数のデュポン兵団群も攻勢に移った。敵兵団群の3分の1、約3万の敵を前後から挟撃する。攻勢は苛烈を極め、混乱を見せる敵を刈り取っていった。程なく分断した敵兵団群を破ったデュポン兵団群は、元は倍する敵に優勢に戦いを進めていった。
敵を倒しながら、零はふと思う。
――ヴァレリー達に、これといった手柄を上げさせるのは難しい。
五百の兵団で出来ることなど、高が知れていた。




