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嫌われ者のネクロマンサー  作者: 海の紅月くらげさん


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63話

◇◇◇◇



 刃が走るたび、血が飛び散る。


 城門を抜けた瞬間から、戦いは始まっていた。


 虚ろな瞳の兵たちが、波のように押し寄せる。叫びも、躊躇もない。ただ命じられるままに剣を振るうだけの存在。


 レオニスの剣が、一閃する。


 首が飛び、胴が崩れ、音もなく床に沈む。


 続けざまに、クリスの剣が横薙ぎに振るわれた。二人、三人とまとめて薙ぎ払われ、血飛沫が石畳を赤く染める。


 それでも、兵は止まらない。


 倒れても、倒れても、次が来る。


「……なんなんですか、こいつらは!」


 クリスが吐き捨てるように叫ぶ。


 呼吸は荒く、だが動きは鈍らない。鍛え上げられた身体が、疲労をねじ伏せている。


 その横で、セレナが短く答えた。


「……全員、操られています」


 走りながらの言葉。


 振り返ることもなく、ただ前だけを見据えている。


 その声に、躊躇はなかった。


 レオニスの剣が、もう一人の兵を斬り伏せる。


 そのまま、冷えた声で言い放った。


「クリス全員殺せ」


 一瞬の間もない命令。


「……はい」


 返答もまた、迷いはなかった。


 刃がさらに鋭くなる。


 斬り伏せる速度が、わずかに上がった。


 セレナは何も言わない。


 助けるべき命であることは分かっている。


 だが今、手を差し伸べれば、全員が死ぬ。


 それもまた、分かっていた。


 だから、目を逸らさない。


 ただ前へ進む。



 城内に滑り込んだセレナたち。


「扉を閉めろ!」


 レオニスが叫ぶ。


 その前に立ちはだかった兵を、踏み込みと同時に斬り捨てる。


 その隙に、クリスが扉へと駆け寄った。


 背後から押し寄せる兵たちを、間一髪で押し返し、重い扉を力任せに閉じる。


 鈍い音が、城内に響いた。


 外から、何度も叩きつけられる衝撃。


 だが、扉は開かない。


 ようやく、追撃が遮断された。


 三人は、その場でわずかに足を止める。


 荒い呼吸が重なり、静まり返った空間に響いた。


 血と鉄と瘴気の匂いが、混ざり合っている。


 レオニスが、息を整えながら口を開く。


「……魔族の位置は分かるか」


 視線は、すでに上階へ向いている。


 セレナは、ゆっくりと目を閉じた。


「……濃すぎます」


 小さく呟く。


「ですが、上にいるのは確かです」


 目を開く。


「ただ……どこかまでは分かりません。おそらく、一番瘴気の濃い場所に籠もっています」


「なぜだ」


 短い問い。


 セレナは即座に答えた。


「この国の外には、魔女たちがいます。魔族が瘴気が薄い場所へ出れば、即座に察知され、一斉に攻撃を受けるでしょう」


 その結末を、淡々と告げる。


「どれだけ強くても、その攻撃には耐えきれません」


 レオニスはわずかに眉をひそめた。


「……なら、ここに来る必要はなかったのではないか?」


「国民は見捨てることになるが、魔族はいずれ外へ出る」


 だが、セレナは首を横に振る。


「いいえ」


 その一言に、強さが宿る。


「瘴気は、放置すれば濃くなり、広がります。魔女たちが抑えていても、限界はあります。手の届かない規模になれば、もう止められません」


 レオニスは、短く息を吐いた。


「……そうか」


 そして、小さく笑う。


「つまり、英雄が必要ということだな」


 セレナは、迷いなく頷いた。


「はい」


 その瞬間だった。


 空気が、変わる。


 ふっと、光が落ちた。


 城内が、夜に沈む。


「なんですか!?」


 クリスが反射的に身構える。


 次の瞬間、無数の光が瞬いた。


 星だった。


 天井も、壁も、床すらも。


 すべてが淡い星光に満たされる。


 夜空が、そのまま城の中へと流れ込んできたかのように。


 セレナの瞳が、わずかに見開かれる。


「……リースペイトの魔法です」


 確信の声。


 星々が、ゆっくりと動く。


 線を描くように。


 ひとつの道を、浮かび上がらせる。


 それは、まるで導いているようだった。


「……道を示している」


 クリスが呟く。


 セレナは頷いた。


「魔族のところまで、案内してくれるみたいです」


 レオニスは、口元をわずかに歪める。


「いいだろう」


 一歩、踏み出す。


 星の光が、その先を照らす。


 その言葉に、二人も続いた。


 三つの影が、再び走り出す。


 導かれるままに。


 決戦の中心へと。








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