表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嫌われ者のネクロマンサー  作者: 海の紅月くらげさん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/72

37話

◇◇◇◇



 城下町は昼の陽気に包まれて、雑多の音が散らばっていた。


 馬車が通る車輪の音、子どもたちの笑い声、露店の呼び声。


 その中を、セレナは楽しそうに歩いている。


「こうして町を歩くの、久しぶりね」


「そうだな」


 隣を歩くフェンが肩をすくめた。


「あの王、俺を魔物討伐の責任者にしやがって。ろくに休みも取れん」


「陛下は貴方を信頼してるんじゃない?」


「違うな」


 フェンは否定した。


「俺をセレナのそばにいさせたくないだけだ」


 セレナは首を傾げる。


「なぜ?」


「なぜってそれは……」


 フェンは一瞬言葉を詰まらせる。


「セレナが分かっていないなら、俺からは言いたくない」


「そう? なんでかしら」


 本気で分かっていない顔。


 フェンは額を押さえた。


「……鈍いにもほどがあるだろ」


 そのとき。


「男の嫉妬とは見苦しいな」


 背後から声が聞こえた。


「あっ、陛下」


 振り向いたセレナの視線の先。


 静かな威圧をまとって、レオニスが立っていた。


「ゲッ」


 フェンの本音が漏れる。


「なんだフェン・オルマイディ。今日も魔物討伐ではないのか?」


「今日は休みです」


「そうか。まだ休みが取れる量か」


 レオニスはわずかに目を細める。


「……今日の休みは堪能しておけ。明日からは仕事だ。当分、休みは取れなくなる」


「男の嫉妬とは見苦しいですよ、レオニス陛下」


「嫉妬ではない」


 即座に返す。


「事実を言っているだけだ」


 二人の視線がぶつかる。


 空気が、ぴりりと張り詰めた。


「二人とも落ち着いてください」


 セレナが慌てて間に入る。


 左右から漂う殺気に気づいていないのか、気づいていても気にしていないのか。


 フッとレオニスがセレナに視線を落とす。


「どこへ行くつもりだった」


「今日はフェンとパン屋を巡ろうかと」


「……そうか」


 一瞬の沈黙。


「ついて行ってもいいか」


「はい」


 フェンのこめかみがぴくりと動く。


 さっと二人の間に割って入る。


「陛下、私には聞かないのですか?」


「セレナに聞けば十分だ」


「私は遠慮していただきたいのですが」


 にこりと笑って言う。


「城に戻ってお仕事でもなされた方が賢明かと。国政も危うくなってきましたし」


 周囲の空気が一段冷える。


「魔物討伐団長の分際で、俺に指図するのか?」


「いえ。ただ事実を申し上げただけです」


「ほう」


 再び視線が激突する。


 パチパチと、音がしそうなほどの火花。


「仲良くしてください!」


 セレナが両手を広げて間に入る。


「今日は楽しい日なんですから」


 その無邪気さが、逆に二人の胸をざわつかせる。


 歩き出す。


 だが、


「近い」


「陛下こそ距離をお取りください」


「俺はセレナの護衛として当然だ」


「今日は私が護衛です」


「俺の方がセレナを守れる」


「そうですか? 試してみます?」


「面白い」


 周囲の町人たちは、ひそひそと囁き合う。


「あれ王様だろ?」

「狼族のフェンだ! カッケェ」

「修羅場か?」


 そしてようやく、目的のパン屋が見えてきた。


 焼きたての香りが漂う。


 セレナは目を輝かせる。


「わあ、いい匂い!」


 その笑顔に、二人は同時に視線を奪われ、そして同時に、また相手を睨む。


 平和な城下町に、見えない火花が散り続けていた。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ