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嫌われ者のネクロマンサー  作者: 海の紅月くらげさん


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36話

◇◇◇◇



 真っ暗な部屋。


 軋むベッドの上で、ジークはゆっくりと目を開けた。


「……どこだ、ここ」


 喉がひりつく。身体は重いが、確かに動く。


「どこって、私の家よ」


 女の声。


 次の瞬間、ぱちりと灯りがともった。


 天井近くに浮かぶ淡い星火が、部屋を照らす。


 その光の中で、白髪がきらりと映えた。


 星篝の魔女。


 夜を集めたような黒衣と、透けるような白い肌。冷えた瞳が、まっすぐジークを見下ろしている。


 ジークはゆっくりと身を起こした。


「僕は……君に殺されたはずだ」


「剣で斬ったのは私じゃないわ」


 肩をすくめる。


「それに、死ぬ前に回復させたのは私。正確には殺されかけただけ」


「……僕を助けて、何の得がある」


 魔女は椅子に腰かけ、足を組む。


「英雄願望があるのは男の子として普通。でもね、一目惚れした女のために命を投げ出すのは、ちょっとやりすぎ」


 ジークは眉をひそめる。


「茶化すな」


「茶化してないわ。本気で言ってる」


 細い指が顎に触れる。


「貴方を助けた時は損得ではなかったけど、少し得の目が出てきた感じね」


「……どういう意味だ」


「ヴァルディウス王国が負けると困るのよ」


 静かな声。


「困る? 天下のヴァルディウスが、誰に負けるっていうんだ」


「バリスハリス王国」


 間を置かずに告げる。


「……バリスハリス?」


「あなたが白の魔女と逃げようとした国よ」


 ジークの目が鋭くなる。


「セレナはどうなった」


「落ち着きなさい」


 魔女は淡々と言う。


「白の魔女は、どうやらバリスハリス王に気に入られたみたい。少なくとも殺されてはいない」


 ジークの肩から、わずかに力が抜ける。


「無事よ。今のところは」


「……そうか」


「でも、私にとっては最悪」


 魔女はうんざりした様子でため息を吐いた。


「ヴァルディウスは、立て直す時間を完全に失った。それなのに戦争を始める気でいる。今の王は、自分がどれだけ追い詰められているか見えていない」


 ジークは鼻で笑った。


「大事になってるみたいだな。禁忌の魔女に仕立て上げて追放したツケだ。自業自得だろ」


「ええ」


 魔女はあっさり頷く。立ち上がり、ベッドの縁に腰を下ろす。


 距離が近い。


「万が一ヴァルディウスが負けた場合、白の魔女に恨まれていたら面倒なのよ」


「面倒?」


「私は生き延びたいの」


 率直だった。


「あなたを差し出せば、『あのとき助けたのは私』って言える。白の魔女の恩人になれる可能性がある」


 ジークは苦笑する。


「買い被りすぎだ。僕はセレナにとって、そんなに大きな存在じゃない」


「知ってる。あなたは一目惚れして突っ走っただけの男。彼女の心の中心にはいない」


「なら」


「でもね」


 魔女の瞳が細くなる。


「敵が助かるためには、建前が必要なの。『気を許していた男を助けていた』と知れば、簡単には殺さない。理屈より、そういうものが効く時がある」


 ジークはしばらく黙り込んだ。


 そして、小さく息を吐く。


「……君は、僕が想像していた通りの魔女だ」


「あら」


 瞳が優しく揺れる。


「それは光栄ね」


 見惚れるほどに微笑みは柔らかかった。











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