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嫌われ者のネクロマンサー  作者: 海の紅月くらげさん


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33話

◇◇◇◇



「セレナ」


 レオニスが静かに呼ぶ。


「少し、バルタザールと話がある」


「え? 私もご一緒しては……」


「いや」


 きっぱりと遮る。


「クリスを付ける。城下を自由に散策してこい」


「はい」


 セレナは察して、それから小さく頷いた。


「クリス」


「は」


「守れ」


「命に代えても」


 短く答え、クリスはセレナと共に部屋を出る。


 扉が閉まる。



 空気が変わった。


「ここで会食する気か?」


 バルタザールが腕を組む。


「我以外には誰もいないのだぞ」


「お前が居たら、それでいいだろ」


 レオニスは椅子に深く座り直す。


「教皇は飾りか?」


「バリスハリスは先代から知っているが、今の王は教養もないと見える」


「それはお互い様だ」


 一瞬の間。


「……確かに」


 バルタザールが豪快に笑った。



「で?」


 教皇の声が酷く冷静になる。


「何用だ?」


「もう知っているだろ。あちらさんは、戦争を国技として決着をつける気でいる」


「ああ知っている。ユークリッドのやつがな」


 バルタザールは鼻を鳴らす。


「そんな愚かな奴に成り下がっているとは知らなかった。だが……良い手だ。見世物にした方が他の国は手を出せない」


「そうだ。全世界に宣言した。逃げれば臆病者。乗れば血祭りだ」


 レオニスの目が細くなる。


「俺がそれを知ったのは、お前らと同じ。全世界に宣伝した時だ。でも俺は突っ返してもいいと思っていた」


 そこで、声が一段低くなる。


「勝利報酬に『万能薬・白の魔女』と書かれていなければな」


 空気が軋んだ。


 圧が生まれる。


 竜を斬ってきた男の殺気が、静かに滲む。


「他国の見世物になる気はなかった」


 ゆっくりと立ち上がる。


「だが、エルピアータ帝国もろとも、ヴァルディウス王国を叩き潰す」


 その目は鋭い。


「協力しろ。教皇バルタザール」


 沈黙。


 空気すら重かった。


 


「……我らが協力した暁には、何がある?」


「俺に貸しが作れる。それで十分だろ」


「我らが、白の魔女が欲しいと言っても、同じことが言えるか?」


 レオニスの瞳がわずかに揺れた。


「何だと」


「白の魔女は、神と呼ばれるほどに信仰を集めていた」


 バルタザールは淡々と言う。


「奇跡は、教義を揺るがす。救済は、神の専売特許だ」


 レオニスがガタンと椅子に座った。


「我らも、白の魔女には『生きていてもらっては困る』のが事実だ」


 バルタザールが椅子から立ち上がる。


「今日は、それを伝えに来た」


「……お前の考えか?」


「我ではない」


 バルタザールは首を横に振る。


「エリシュニカ聖教国の総意だ」


 低い声で告げる。


「バリスハリス王国との同盟を返上する。我らはヴァルディウス王国に付く」


 空気が凍る。


「本気か、バルタザール」


「盟友レオニス・バリスハリスに誓って、敵対はせぬ」


 苦い顔で続ける。


「だが、味方にもなれぬ。これが教皇バルタザールの、我にできる精一杯だった」


 長い沈黙。


 


「……そうか」


 レオニスは目を閉じる。


「すまなかったな」


「いい」


 バルタザールは眉間に皺を寄せる。


「力になれなくて、こちらこそすまない」


 二人の間にあるのは、裏切りではない。


 かつて竜を討った英雄と、共に杯を交わした盟友。


 その距離が、確かに一歩離れた。


 


 窓の外では、まだ陽が高い。


 バルタザールは部屋を出て行った。












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