表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嫌われ者のネクロマンサー  作者: 海の紅月くらげさん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/72

24話

◇◇◇◇



 ノクスグラートの風は冷たかった。


 城壁の上で外を見ていたセレナに、背後から低い声がかかる。


「セレナ」


 振り返らずとも分かる。


「……レオニス様」


「ここを離れろ。バリスハリスの城に来い」


 迷いのない命令口調だった。


 セレナはゆっくりと首を振る。


「いやです」


 即答。


 レオニスの眉がわずかに上がる。


「俺の誘いを断る理由が欲しい。なぜだ?」


「また魔物が来たら、呪いはどうするのですか?」


 振り返った彼女の瞳は真剣だった。


「それなら心配ない。呪い専門の魔術師は連れてきた」


「……呪い専門の、魔術師ですか?」


 心底不思議そうに目を瞬く。


「知らないのか?」


「はい。呪いは限られた魔女しか癒せないと、お師匠様に言われていたので」


「魔術師はいただろう」


「そうですね。ヴァルディウスでは、戦争用の殲滅魔法の研究をしていました。それ以外は、あまり聞きませんでした」


 レオニスは小さく息を吐く。


「……ヴァルディウスは、呪いの本質を分かっていないらしい」


「本質?」


「呪いは、死なない病だ。人が死ねば、次の器を探す。国を腐らせる」


 その声は、王の声だった。


 セレナは少しだけ首を傾げる。


「恐ろしいですか? 確かに病より魔力は使います。でも、呪いは血が見えません。怪我よりは楽です」


 一切の悪意なく、そう言う。


 レオニスは額を押さえた。


「……はぁ。さすが白の魔女だな」


 彼女にとって呪いは処理だ。

 恐怖の対象ではない。


「だがお前がここにいる理由は、もうなくなっただろ」


 レオニスは一歩近づく。


「バリスハリスの城に来い」


「それは……」


 迷いが揺れる。


「安心しろ。まだ一緒の寝室になるわけじゃない」


 わざとらしく視線を逸らす。


「……セレナに、俺の国を見せたいだけだ」


 珍しく言葉を選んでいる。


 その不器用さに、セレナの胸が熱くなる。


 レオニスは手を差し出した。


 王の手ではない。一人の男の手だった。


 頬がわずかに赤く、ぶっきらぼうに視線を逸らした。


「その言葉は、反則です」


 セレナは小さく笑う。


 そして、その手を取った。


 冷たい風が吹く。


 けれど、指先は温かい。


「……少しだけですよ」


「十分だ」


 握る力が、わずかに強くなる。


 城壁の向こうで、雲が流れていく。


 白の魔女は、今だけは。


 彼の隣に立つことを選んだ。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ