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嫌われ者のネクロマンサー  作者: 海の紅月くらげさん


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19話

◇◇◇◇



 その人混みの中を、異様な組み合わせが歩いている。


 白の魔女とバリスハリス王国国王、レオニス・バリスハリス。


「これはなんだ?」


 レオニスは露店に並ぶ黒紫の粒を指差した。


「香辛料です。ぶどうのような見た目ですが、中は緑色で。潰すと柑橘系の香りがします」


 セレナが一粒つまみ、軽く割る。

 爽やかな匂いが、ふわりと立った。


「ほう……肉に合いそうだな」


「ええ。脂の強い料理と相性がいいですね。最近ではお湯に入れるのが流行っています」


 レオニスは感心したように頷き、次の店へ視線を移す。


「では、これは?」


 吊るされた青黒い干し肉。


「ブルービストという、豚に近い魔物の干し肉です」


「青いな」


「ええ。見た目は最悪です」


「美味いのか?」


「美味しくはありません」


 きっぱりと言い切る。


「ただ、不味くもないので。貴重なタンパク源として重宝されています」


「なるほど」


 レオニスは腕を組み、真面目に考え込む。


「では兵糧向きだな」


「……王様は市場でも軍備のことを考えるのですか」


「癖だ」


 あっさりと答える。


 その横顔に、昨日森を焼いた男の面影がよぎる。だが今は、どこか楽しげだ。


 ふと、セレナが足を止めた。


「ところで、レオニス陛下」


「なんだ?」


「なぜ、朝一番に私が泊まっている宿へと来られたのですか?」


 しかも護衛を最小限にして、レオニスは当然のように答えた。


「それはもちろん、デートというものをしているのだが?」


「……デート?」


「おや」


 口元がにやりと歪む。


「白の魔女はデートを知らないのか?」


「それぐらい知っていますよ」


 即答。


「ほう、知っていたか。異性同士が親密になるためのイベントだ」


「それを、なぜ私と陛下が、という意味です」


 レオニスは満足げに頷く。


「つまり今、俺たちは親密になる時間を過ごしているわけだ。これ以上の説明がいるか?」


「私は了承した覚えがありません」


「今、共に市場を歩いているだろう?」


「それは陛下が勝手に!」


「嫌なら帰ればいい」


 さらりと言う。足は止めない。


「だが、ついてきている」


 視線だけが、横へ流れる。


「違うか?」


 セレナは言葉を詰まらせる。


「違います」


 きっぱりと否定する。


「レオニス陛下が『来い』と言えば、私は来るしかない。この国の王の言葉は、私の行動など、容易く縛れるほどに強力なのです」


 感情を抑えた声音。


 だが、その歩幅は王と揃っている。


 レオニスは、ふっと笑った。


「なるほど」


 一歩、わずかにセレナへと近づく。屋台の柱に手を置き、凛々しい顔を寄せた。


「では俺は命じない。白の魔女よ、俺とデートしてくれるか?」


「……」


 レオニスの直球な言葉に、セレナはパクパクと口を開けては閉じる。手で口を抑え、頬が真っ赤に染まる。


「3」


 一拍。


「2」


 セレナは端正な顔から視線が逸らせない。


「ッ! なんのカウントですか!」


「それはもちろん。王の俺の時間は貴重だ。早く答えを言え。行くか、行かないかだ」


「行かな……」


「そうか。少ない時間だったが楽しかった」


 レオニスはそうぶっきらぼうに言うと、歩き出した。


「本当に王なの」


 セレナの心臓がバクバク早鐘を鳴らす。



「白の魔女!」


 遠くからセレナを呼ぶ声。


「明日もデートするぞ」


「えっ!?」


 市場の喧騒が、遠のいた気がした。







楽しかった! 続きが気になる! という方は☆☆☆☆☆やブクマをしていただけると嬉しいです!

作者のモチベーションの一つになりますのでよろしくお願いします!


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