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異世界にTS転生した僕がサキュバスクイーンになった理由  作者: 望月優志


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みんなに内緒はみんなが知ってる

※誤字と言い回しを少し修正しました。

 ウィルの相手をしてから、僕の日課は忙しさを増した。


 毎日暇を持て余しているように感じていたが、それなりに毎日やる事はあったらしい。


 日課と言ってもみんなと走り回ったり、遊びという名の体力作りをするくらいだが…休憩している時や食事中など、今まで特に何も考えていなかった時間に体内の魔力を動かす練習をしている。


 魔力、というか…実際は身体の中に埋め込まれているらしい装置を使って電波とか磁力とかを動かしているんだろうけど。僕もこの感覚をウィルが言っていた魔力と呼ぶことにした。


 僕は記憶を無くしているていになっているので、電波とか磁力とか、ここで知るはずのない言葉をポロッと口走ってしまっては大変だからだ。


 僕の身体を子どもにする実験をした奴は、とことんマッドサイエンティストだったらしい。


 正体不明の装置まで身体の中に埋め込むなんて…全く。


 ちなみに僕と同じ時間に仕事していたシアノのお相手も、なんと魔法使いだったらしい。


 ウィルは水の魔法を見せてくれたが、シアノの相手は火の魔法を見せてくれたそうだ。


 ウィルの相手が終わってみんなの所に戻ると、シアノは僕より先に戻っていたらしく火の玉が空中をクルクルと飛び回っていた話で盛り上がっていた。


 シアノの相手は内緒にしてくれと言わなかったのかな?


 みんなが盛りあがっている中、シアノにそれとなく聞いてみると、一応内緒だと言っていたらしい。


「秘密など、どうせいつかはバレるのです。早いか遅いかの違いですよ」


 などと尤もらしいことを言ってはいるが、これは本人が言わなきゃ絶対にバレない類の秘密だと思うよ…


 …まぁ、僕もみんなに話すつもりだったけど。


 みんなの話に僕も加わり、火の魔法の後は水の魔法の話で大盛り上がり。


 みんなに内緒はみんなが知ってる。


 使う言葉や文化が違っても、人の口に戸が立てられない事は変わりないのだ。



 そんなこんなで毎日遊びという名の筋トレと魔力を動かす練習の日々だが、今日は朝から少し違った。



 なんといっても今は秋。


 秋はアッポやビグルミのあま〜い匂いがあたりに立ちこめ、いつもお腹がすいている気がしてしまう実りの季節。


 そして今年も大きく毒々しい紫色に育ったビグルミの実を、みんなで収穫する日がやってきた。


 ビグルミはアケビが濃い紫色になったような見た目で、暴力的な甘さのバナナのような味がする、もっちりモチモチ食感の魅惑のフルーツだ。


「つまみぐいしちゃダメだよ」

「…これはルーンの」

「…こっちはリリカ」

「よ、よだれかかっちゃってる…!?」

「みんなのだから、カゴにいれよ?ね?」

「…はぁ。とりあいしてたらつぶれちゃうわよ?」

「「!?」」


 クルカラ、オープル、僕の3人がかりでルーンとリリカからビグルミを取り上げようとするも、熟したビグルミの実はそれなりに柔らかいため力ずくで取り上げるわけにもいかず…


 フルフルと首を振って応じない2人の様子に困っていたが、アイビスの的確な指摘により、2人の手からビグルミの実を救出することに成功した。


 ちょっと涙目で睨みつけてくるルーンとリリカから隠すように、急いで傷ありの実専用のカゴに入れる。


 ヨダレでベトベトだし…わかりやすいように端に避けておこう。きっと今日の夕飯にはこのビグルミが出てくるんだろうな。



 ビグルミは熟した実がまだ出始めたばかりのため、僕ら背が小さい年少組はビグルミの収穫が早々に終わってしまう。


 そうなると、次に向かうのは必然的にアッポの木だ。


 今年も見た目だけならとても美味しそうな赤い実と、見た目はあまり美味しくなさそうな真っ白の実がなっているな。


 去年は美味しそうなアッポの実を眺めていたら、ジュリから食べちゃだめよって言われたんだっけ。なつかしい。


 …あれ?


「ルーンと、リリカは?」

「え?」

「あれ?さっきまでいたのに…」

「…ふたりならあっちにはしってったわよ」


 少しむくれ気味のアイビスが教えてくれる。


 どうやらルーンとリリカはアッポの木が沢山ある奥の方に駆けていったらしい。


 いつの間に。


 アイビスは一緒に行かなかったのか。…いや、誘われなかったからついて行かなかったのかな…


 うん…何も言うまい。ちょっと怒ってる雰囲気だし、気付いてないフリしとこう。くわばらくわばら…


 とはいえ、ルーンとリリカに赤い実は食べちゃダメだよと伝えておかないといけない。


 シアノを含めた年長組はビグルミの収穫に夢中になっているので、多分、アッポの赤い実を食べちゃいけないことや、木に登ったりしちゃいけないことをまだ伝えていないだろうから。


 3人を引き連れてアイビスが指さした方向へ木々の間を進んでいくと、ルーンとリリカの姿を発見した。


 声をかけようとした時、ルーンが赤い実を手にしているのに気が付く。


 まだ時期的にアッポの実は熟してないはず。だから地面に落ちてこないはずだ。

 ルーンもリリカも木登りはしないし、できない。


 それなのになぜルーンは赤いアッポの実を持ってるんだ?



 予想外のことに驚き、声をかけるのが一瞬遅れてしまった。


 いつもなら問題ないようなこと。


 危険な事がないように配慮されたこの庭で、普段なら一瞬遅れたくらいでは大した問題にもならない。


 …そう、いつもなら。


 今が秋でなく、アッポの収穫時期ではなかったのならば…


 ………


 そして、悲劇は起きた。


 声がけが一瞬遅れたことにより、ルーンがその手に持った赤いアッポの実を齧ってしまう。


 ルーンの突然の行動ゆえか、驚きのあまり目を見開いて固まるリリカ。


 声をかけようとしたまま固まってしまう僕達。


 齧られて一瞬の後、手元を離れ地面に落ちる赤い実。


 ………


「…あぁー…」


 ルーンは齧りとったアッポの果肉を口からボロボロとこぼし、静かに鳴き始めた。


 泣きながら唾をぺっぺと捨てる姿に既視感はあるものの、違和感もある。


 …なんか僕たちが齧った時より、すごく静かじゃないか?


 去年はこう、盛大にうわーんと鳴き声が響いてみんなが集まってきて、だから食べちゃダメって言ったのに!みたいな感じだったと思うんだけど…???


 強い違和感に僕が何も言えないでいる間に、困惑しているアイビスにクルカラがお姉ちゃん風を吹かせて説明していた。


 アッポの実について何も知らないと、状況が理解できないよね…


 アッポの実は白いほうが食用で、赤い実は酸っぱすぎて食べられないこと。


 赤い実はバカ鳥のご飯になること。


 バカ鳥とはなんだという説明に、バカ鳥はバカ鳥だとか説明にならない説明を返しているクルカラを横目に見つつ、ルーンに駆け寄って声をかける。


「だいじょぶ??」

「あぁ〜…」


 舌を両手でかきかきしながら、ふるふると首をふるルーン。


「…リリカもいっしょにたべたかった…」


 いつもは無表情気味なのに、若干不貞腐れたような表情で一緒に食べたかったというリリカ。


 ルーンがこんな状態なのに…よく一緒に食べたかったなんて言えるね…


「…ルーン、ちゅうしよ」

「えっ!?」


 ルーンにキスしようと迫るリリカを咄嗟に止める。


 去年ジュリがキスしてくれた時は、酸っぱいと言われてしまった。


 あの時はちょっと傷ついたし、現在進行形で酸っぱさに苦しんでいるルーンを余計に傷つけてしまわないだろうか。


「…リリカ、ちょっと…あとにしたほうが、いいかも?」


 僕の言葉にリリカが目をぱちくりとさせ、納得したように頷く。


「…セラもルーンとちゅうしたい?」


 一瞬考えて出てきた答えがそれなのだろうか。


 勘違いされたままなのは都合が悪いので、ちゃんとわけを説明しておこう。


「あのね。あかいアッポのみは、たべられないの。すごくすっぱくて、たいへんなことになっちゃう」

「ルーンがたいへん」


 うん…大変そうだね…


 リリカを止めるためにルーンとリリカの間に割って入ったんだけど…背中側のルーンが僕の背中に舌をこすり付けてる感触がしてるもん…


 …あとで世話人に洗濯してもらおう。


 それにしてもルーンはどこから赤い実を採ってきたんだろうか。周りを見ても、僕たちの手の届く範囲にアッポの実はないけど…


「あかいみ、どこにあったの?」


 僕の問いに、リリカは真上を見上げる。


「そこ」


 見上げた先には確かにアッポの実がなっているけど…ジャンプして届くか?


「リリカのせなかにのせてあげた」

「え?」

「ルーン、リリカのせなかからジャンプした」


 え、痛そう…


「…もういい?」


 もういいとは?


「え、と…ちゅう、するの?」

「うん」

「やめたほうが、いいとおもう…けど…」


 全然よくないけど…本人たちの自由にさせるか…あんまり嫌われたくないし。


 僕が離れるとすぐにキスしだす2人。


 目の端に涙をためながら、頬を赤くして貪るように夢中でキスしているルーンにどぎまぎしてしまう。


 が、リリカのほうは…


「…しびしび…」


 ルーンのキスを受け入れながらも、目を><の字にしている。とても可愛い。


 …しびしび??


 足元に落ちている赤い実を拾ってみる。


 匂いは…美味しそうなリンゴの匂いがしているけれど、まだそれほどでもない。


 アッポの収穫はビグルミの1週間くらい後だったし、そもそも熟しきると勝手に落ちてくる実だ。


 無理矢理もぎりとった実はあまり酸っぱくないのかもしれないな。


 ………


 …しびしび、って何だ?


 どうにも気になって、手に取った赤いアッポの実をひと舐めしてみる。


 !!


 丁度いい酸っぱさの中にほのかな甘みがあって、これはこれで美味し…うっ!?


「…しっぶ!!」

「あー!!セラ!?なんでまた食べてるのー!?」


 やば、クルカラに見つかっちゃった…


 ちょっと美味しいかも?なんて気が緩んだ次の瞬間に広がった強烈な渋みに、思わず叫んでしまったせいだ。


「なになに??」

「アッポ食べたの〜?」

「…ちょっと早くない?」

「つまみ食いかな…」

「今年もセラ!?」


 クルカラの大声に反応して皆が集まってきてしまい、食いしん坊だなぁとわっちゃわっちゃと揉みくちゃにされる。


「ちがうってばー!!」


 僕の必死の叫びも虚しく、誰の耳にも届かない…


 みんな僕の言い分なんか聞きもしないのだ。


 ………


 ……


 …


 …はぁ…酷い目にあった。


 お昼ご飯の時間になり、今日もみんなで列に並ぶ。


 今日はビグルミの収穫があったし、夜にはデザートとしてここに並ぶはずだ。


 ………


 やっぱりまだ無いよね?


 うぅ、口の中がまだしぶしぶしてる…


 少しだけ期待して辺りを見回してみても、やはりビグルミは並んでいないようだ。やっぱり夜からか。


「去年も言ったが、ビグルミは夜からだぞ?」

「!?」


 少し見回していただけなのに世話人に見つかってしまった。


「セラは食いしん坊だな」

「〜ッ!?」


 フッと笑われてカチンとくる。


 周りのみんなにまで笑われてしまい、僕はこの怒りと恥ずかしさを誰にぶつければいいのか。


 …それに、僕は食いしん坊ではないぞ!!


 口の中の!!渋みを!!どうにかしたいなと!!思っただけだ!!


 込み上げる怒りをぶつけてやりたいが、1年半で外国語もある程度喋り慣れたとはいえ、まだ急に言葉など出てくるはずもなく…


「ッ!!せわびと!!きらい!!」


 結局とっさに出てきた言葉は、子どもの見た目相応の悪口だけだった。


 ぐぬぅ…

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