二人仲良く、ベットに
ウィルの話もさっきの感覚も訳が分からないけれど、考えていても埒が明かない。
とにかく、このままなんの収穫もなく諦めるなんて嫌だ。
「…おみず、うごかしたい…」
「セラ…」
僕も見た目だけなら可愛らしい子どもだ。
健気に頑張る姿を見せていれば、根負けして「実はこのコントローラーで動かしていたんだ…」とかって白状するかもしれない。
「セラ、がんばる。ウィル、おねがい」
「…わかったよ…でも本当に、無理はしないで」
「うん!!」
そしてまた、先程と同じようにみぞおちに手を当てられて…
「今度はもっと優しくやるから、気持ち悪くなったらすぐ言うんだよ」
「うん………???」
なにか動いてるような…なにも動いていないような…??
身体の中に、さっきとは打って変わってみょんみょんとしたわずかな波が伝わってくる。
集中していないと気が付かないほど微妙な揺らぎに、思わず頭を傾げてしまう。
「…ウィル、やってる??」
「うん。思いきり弱くしてみたんだけど…ちょっとずつ、強くしてみるね」
少しずつ身体の中に伝わってくる揺らぎが強くなっていき、はっきり感じ取れるくらいまで大きくなった。
「な、なんか、うごいてる??みたい??」
「それが魔力だよ。身体の中の、手や足の先まで動いている感覚が伝わってる?」
言われて意識してみると、確かに指の先までゆらゆらとしている…気がする。
「なんか…うごいてる…かも??」
「じゃあ次は…水の魔法を使う時と同じ、青色の魔力を流してみるね」
青の魔力とか言われても…
身体の中で何か動いているのは感じるものの、色なんか全然わからないんだが??
頭の中に???を浮かべていると、ウィルから流れてくる何かが一旦止まり、再び何かが流れ込んできた。
!?!?
「さっきと、ちがう…!?」
「よくわかったね。これが青色の魔力だよ。あと、自分の中の魔力の色と、違うのがわかるかな??」
ウィルに何度か最初の魔力と、青の魔力を交互に流してもらい、ようやく自分の中にある魔力というものの感覚が何となくわかる。
「自分の中の魔力を、さっき教えた青の魔力と同じ色になるように変えるんだ。そうしたら、水を出したり、水を動かせるようになるんだよ」
色を変えろと言われても、どうやって変えたらいいのかさっぱりわからない。
「…どうやって変えるの??」
「それは…頑張って練習するしかないんだよね…ぎゅーって変えるというか…説明できるものじゃなくって…」
自分の身体の中に、今まで生きていて全く気が付かなかった『何か』の感覚がある事はわかった。
それは身体の隅から隅まで満ちていて、ウィルの魔力?に押してもらって、初めて認識することが出来た。
今はウィルに魔力を流し込まれていないけど、意識を向けると、身体の中の『何か』を少し動かすことができている…気がする。
ただ、動かすことは出来ても、さっき流し込まれた色に変える方法がわからない。どうやるんだ??
…そうだ!!
「ウィル、まりょくながしながら、いろかえて??」
「え??」
「ちょっとずつかわったら、わかるかも??」
「ちょっとずつ…??試したことが無いから…どうだろ」
ウィルにそのままの色の魔力を注いでもらい、途中でゆっくり青色の魔力に変えてもらう。
「うっ!?」
「ご、ごめん!!セラ大丈夫!?」
流れてきていた魔力が急にグンッとうねる様な感覚がして、青色の魔力が流れ込んできた。
「だ、だいじょぶ…ぐんって、きたから…ちょと、きもちわるかった…」
ウィル曰く、幼い頃から青色の魔力にする事にあまりにも慣れすぎており、段階を踏んで自分の魔力の色を青色に変える感覚が全く分からないんだそうだ。
これは…困ったな…
頭を悩ませていると、今度はウィルから赤色の魔力にならゆっくり変えられると提案があり、やってもらうことにした。
「友人が火の魔法、赤系統の魔法使いでね。色を教えて貰ったから練習してるとこなんだ」
青から赤へ。ゲームとかだと有利だったり弱点だったりするけれど、色を変えるのは問題ないんだろうか?と思っていたら、思った以上に大変らしい。
試す前に火魔法を見せてもらったところ…
1分くらい集中し、立てた人差し指の先に小さな火がポッとついたと思ったら、ウィルはすぐに力尽きてしまった。
「はぁ…はぁ…最近…ようやく火が…出せるように…なったんだ…」
ベットに寝転がりながらぜいぜいと息を切らせているウィルをみて、指先に火が灯ったことよりも、『魔法ってやべえ』という感想の方が先に来てしまった。
もちろんいい意味の『やべえ』ではない。
顔に汗がにじみ出てくるほど集中して、一瞬ポッと灯るだけ。
あまりにも…あんまりにも…なんかこう、残念だ。
ただウィルは物凄く頑張ってくれたようなので、手でいっぱい仰いであげた。お疲れ様です。
しかし水はあんなに涼しげな顔で悠々と操っていたのに…あっ。そうか!それが適性なのか!!
…あれ??それってつまり…適性がないって言われた僕は…???
「ごめん、待たせたね。じゃあ早速試してみよう」
ウィルは息が整ったのか、すくっと起き上がってきた。
なんかワクワクしているような、妙に乗り気な感じがするんだけど…
さっきまでの「でも…」とか「やめたほうが…」とか言っていたウィルはどこに行ったのか。
こっちが本来のウィルなのかな。
実験大好き!!というような雰囲気がプンプン伝わってくる。
僕も実験とかは好きだし、嫌な感じはしないけどね。
そうして早速試してみた結果…二人仲良く、ベットに倒れ込むことになった。
「うっ…ぷ…ぎも…ぢ…わる…いぃ…」
「ご、めん…うまく…コント…ロール…でき…なくて…」
ウィルは頑張ってくれた。
ただ、先程の疲れが抜けていなかったのだろう。
途中まではいい感じだったのだ。
色が少しずつ変わっていく感覚が伝わってきて、なるほど確かに、さっきのが青だとすると、今度は確かに赤っぽく変わってる感じがするな…なんて一人で納得しながら色が少しずつ変わっていく様を感じていたのだけれど、問題はその後。
いよいよ赤っぽい雰囲気の色に近づいてきた時だ。
「セラ、ここからはすごく集中しなくちゃいけないから、赤色に合わせても声をかけてあげることができないと思う。僕も頑張って赤の所に合わせるから、セラも何となく感じ取って欲しい」
そう真剣に言われてしまえばNoとは言えないし、火と水の色を教えて貰えるなら好都合だ。
「うん!がんばって!」
なんて気軽に答えたものの、いざそれっぽい色の付近に来たところ、魔力がまぁ揺れること揺れること。
色が行き過ぎたのか少し戻り、戻りすぎたのか少し進み、ぐわんぐわんと…
ウィルは目を閉じて必死に集中しているし、僕も邪魔をしちゃいけないと必死に自分の中で揺れ動く魔力に耐えていたが…
結果、ウィルは疲労で、僕は吐き気で。二人仲良く倒れ込むことになったのだ。
うっぷ…きもちわるい…
…なんでこんな気持ち悪い思いをしてるんだっけ…??
魔法を使うため…だよね??
でも水を動かすのは…ウィルが隠し持ってる装置で…手品を…あれ??
冷静に考えてみたらなんかおかしいぞ???
えーっと...
ウィルが手を当てた所から身体の中にぐわんぐわんとした感覚が伝わってくるから、ちょっと面白くなって「がんばる!!」なんてやってたけど…これ、必要なのか???
「これ…これで…おみず…うご…かせる…??」
身体の中もぐわんぐわんしているが、頭の中もぐわんぐわんしている気がする…うっぷ…
「はぁ…はぁ…自分の魔力を、青や赤に、合わせることが、できたらね…ふぅ…」
またそれか。
「いろあわせたら…どうやってまほう?つかうの?」
「…色を合わせた次は、魔力を身体の中で動かす練習や、身体の外に出す練習だね。そして、何をやりたいか考える。ふぅ。例えばこれ」
言いながら人差し指を立て、指先から少し離れた所に小さな水の玉を作り出すウィル。
「これは魔力を青色にしたまま指先に集めて、指の上1cm…この水玉のある場所に、僕の青色の魔力の塊を丸の形にして置いて、その魔力の塊に『水になれ!』って念じるとできるんだ」
指先に浮いている水玉は綺麗に透き通っていて、何の不純物もない。
「念じる…思い浮かべるって言ったほうがわかりやすいかな?…とはいっても、なんとなくじゃダメだけどね。水の手触りとかいろいろ…なんて言うのかな。とにかく水をしっかりイメージしないといけないよ」
ツンツンとつついてみると波紋が広がる。
喉が渇いているせいかとても美味しそうに見えてパクッと食べてみたい衝動に駆られるが…我慢だ。
ウィルは魔法でできた水だと言い張っているが、実際にはどこから出てきた水か分からないし、変なものが溶けだしていたり、腐っていたら嫌だ。
………
「…おみず、たべれる?」
「え??」
ウィルは何を言われたのかわからなかったのかきょとんとした顔をして、次の瞬間、大爆笑した。
「…あっははっ!!セラは…食いしん坊なんだね!!」
…何故そうなる?
腹を抱えて笑っているウィルを見てイラッとした。




