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異世界にTS転生した僕がサキュバスクイーンになった理由  作者: 望月優志


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1人だけ仲間はずれはさみしい

 アイビスと一通り話した後にアイラが迎えに来て、アイビスは今日もお勉強に連れていかれてしまった。


 彼女のような被害者を増やさない為にも、嫌だとか憂鬱だとか、そんなことを考えている暇なんかない。


 みんなを連れてここから出て、日本に帰るんだ。


 そう改めて目的を再確認した。


 考えてみれば、今回客の相手をする事になったのは、実は僕にとってとても都合のいいことだったのだ。


 情報を集めるために、少しでも客から色々な話を聞き出さなければならない。


 ジュリが居なくなってジンムカ様も来なくなった以上、他の情報源を得なければならないからだ。


 ただし、今回の客が僕をここに連れて来た犯人の可能性だってある。質問の内容は慎重に選ばなければいけないし、あくまで記憶が無い設定で、好奇心旺盛な少女を演じる。


 大丈夫、今まで通りでいい。いつも通りだ。


 …もしも、身体を求められたら。


 そんな考えが頭をちらつく度に胸の奥が震えて、抑えようのない吐き気が込み上げてくるけれど…もしもの事なんて考えるだけ無駄なんだ。


 少しでも情報を集めなければいけないから。


「…セラ、アイビスにいじわるなこと言われたの?だいじょうぶ?」

「!!」


 突然の声掛けに驚いて顔を上げると、今度は目の前にクルカラとオープルが立っていた。


 いつからそこにいたんだろう…さっきアイビスの時にも気が付かなかったが、今日の僕は相当周りの様子が見えていないらしい。


 いつもなら、誰かが近付いてくればすぐ分かるはずなのに。


「だ、だいじょぶ!それにアイビス、いじわるなこといわないよ?」

「えー…」


 クルカラがとても疑い深そうに僕の顔を覗き込んでくるが、本当のことだ。


 僕はアイビスが悪口を言っている所なんて見た事がないし、意地悪してる所だって見たことがない。


「クルカラは、アイビスがいじわるしてるの、みたことある?」

「セラのおなまえ呼ばないもん」


 即答するクルカラの答えに、思わずキョトンとしてしまう。


 それは…確かに?


 でもそういう事じゃないんだよなぁ…


「えっと…それいがいで」

「えー??うーん…」

「わたしもアイビスがいじわるしてるの、見たことないかも。この前もお花のかんむりつくって、みんなでおひめさまごっこしたよ」


 うんうん。オープルはちゃんとアイビスの事を見てくれてるみたいだ。


「むー…でも…でも!!セラ、さっき泣いてたもん!!アイビスにいじわるされたんじゃないの??」


 あー、さっきの見てたのか…完全な誤解だ。


 というか、見てたのに突撃してこなかったのか。クルカラも場の空気を読むことができるようになったらしい。


 子どもの成長は早い…


「すぐたすけにいこうと思ったのに、オープルがダメだって、はなしてくれなかったの…セラ、すぐにこれなくてごめんね…」

「だって…セラとアイビス、だいじなお話してるみたいだったから…」


 …うん、僕の勘違いだったようだ。

 オープルは場の空気を読むことができて偉いね。


「オープル…ありがと…」

「えへへ…」

「セラぁ…クルカラは?クルカラもきたよ?」


 まるで仔犬のように目をウルウルさせているクルカラを見ていると、つい意地悪なことを言いたくなってくるが…そういうのはいけない。


 子どもは純粋で無垢で無神経で傲慢で自分勝手なところもあるが、時に傷付きやすいのだ。


 誰かのためを思って何かをした時には、もし正しい選択ではなかったとしてもその心を褒めるべきで、それを茶化したりバカにしたりしてはいけない。


 ただし、今回は間違っちゃったね、という説明は必要だけれども。


「クルカラも、しんぱいしてくれてありがと」


 クルカラがパアっと明るい笑顔になる。


 ぎゅっと勢いよく抱きついてくるクルカラ。


「うんっ!!セラのことはクルカラがまもってあげるからね!!」


 うぐっ、嬉しいけど…苦しい…


 オープルがもじもじしているのが見えたので、オープルにも片手を広げておいでのポーズをすると、オープルも抱きついてきた。


 1人だけ仲間はずれはさみしいもんね。



 …この子達のことも、助けてあげなくちゃいけないんだ。


 怖気付いてなんていられない。



 その後、クルカラ達と少しだけ追いかけっこして遊んで、お昼ご飯を食べ、お客様のお相手の時間になった。


 今日は久々にお昼にお客様が来るということで、こんなに天気がいいのにみんな部屋にこもっていなければいけないのを残念がっていたが、部屋に戻る前にみんなが僕を応援してくれた。


 今日は僕だけじゃなく、シアノもお客様のお相手があるらしい。


 お互いに洗いあいっこをして、綺麗な洋服に着替え、控え室へ。


 シアノにはたまに洗ってもらっているので、最初こそ緊張したが、もうすっかり洗いあいっこにも慣れた。


 淡々とした表情でテキパキと事務的にしてくれるおかげなのか、こっちも全然よこしまな気持ちにならず、とても助かっている。


 これがジュリならくすぐってきたり、ちょっと…情熱的な視線や表情を向けてきたりするので、ジュリとシアノでは天と地の差だ。


 どっちがいいとかじゃないけどね。


 …シアノはこんなに無表情で淡々としてるのにリピーターが多く、今小鹿亭にいる少女の中では1番客足が多いらしい。


 一体どんな接客をしているのか…謎は深まるばかりである。


 そして控え室で何故かシアノの膝の上に抱えられながら待っていると、先にシアノが呼ばれていった。


 …誰もいない個室に僕一人きりの状態は、なんだかとても久しぶりだ。


 トイレの時は個室に1人だけど、外ではしゃぐ少女たちの声が聞こえていたから…


 こんなに静かで、僕一人の空間というのは本当に…いつ以来だろう。


 ………


 アイビスに励まされ、クルカラやオープルにも勇気づけられて。


 僕はこれから、初めて一人でお客様のお相手をする。


 身体を洗ったばかりだというのに背中が汗でベッタリとしているし、心臓がバクバクしてうるさいし、気分は最悪だ。


 それでも、僕にはやらなきゃいけないことがある。


 情報を集め、抜け出すための算段をつけ、日本に帰る。


 この建物を脱出するだけで終わりじゃない。


 ここを抜け出した後に、どうにかして日本の安全な場所までみんなを連れて行く必要があるのだ。


 ジンムカ様はこの辺りで使われているお金についても教えてくれた。


 そこから推察するに、この建物を出てもすぐに安全圏に出られる訳ではない事は明白。


 ここはオーライン大陸にあるオーライン王国だ、とか言っていたし、本当に島じゃなくても島のように周囲と隔絶されているような状況だったり、なんらかの集団の中にある場所のはず。


 ドルや円、一般的なお金ではなくメルというお金が使われているらしいし、見たことの無い硬貨を用意してまでわざわざ手の込んだ嘘をつく必要なんか無い。


 つまり、この周辺では実際にメルというお金が使われていて、それなりの規模の集団が形成されているということだ。


 ジンムカ様や世話人が言っていた事を全て鵜呑みにすることは出来ないが、2人の話に大きく矛盾する様な内容はなかったと思う。


 …今回の客から、新しい話が聞ければいいんだけど…


 いや、聞き出すんだ。策はないけど…なんとか頑張ってみよう。


 情報を整理しながらそう心を落ち着かせていると…


 コンコンガチャリ。


「セラ、待たせたな。行くぞ」


 例に漏れずいつものように、ノックはするくせに返事も待たずに扉を開ける世話人に軽くジト目を向けつつ、イスから降りて世話人の後に続いて部屋を出る。


 お客様がいる部屋の場所はいつもジンムカ様と会っている1階の部屋のようだ。


 部屋への扉に歩いて近付いて行くが、そこでふと心に何かが引っかかった。


 …いつもはジュリがノックして声がけしていた。ジンムカ様、ジュリです、と。


 でも今回はジュリがいない。


 もしかして、僕がノックするのか!?

 なんて声をかけたらいい!?

 あ、相手の名前なんか知らないんだけど!?


 世話人の後ろであわあわしながらそんなことを考えていると、そんな心配をよそに世話人は扉の前で立ち止まり、おもむろに手を胸の前まで上げる。


 ああ、よかった…今日は世話人が対応してくれるんだ…なんて一瞬安堵したが、すぐに不味いことに気が付いた。


 世話人はノックからノータイムで扉を開けてしまうマナー知らずなのだ。


 このままでは第一印象最悪な状態からのスタートになってしまう!?


 慌てて止めようと手を伸ばそうとしたが、時すでに遅し。


 トントン。


 …あああ!!


「ウルイル様、お待たせしました。入室しても宜しいでしょうか」


 僕の心配をよそに、普通にノックして声をかける世話人。


 もちろん勝手にドアを開けたりもしていない。


 ………。


 今までノータイムでドアを開けてきたのは何故なのか。


 できるなら最初からやれよと、様々な葛藤が高速で頭の中を駆け巡る僕のことなどお構い無しに、部屋の中から「どうぞ」と声が聞こえ、世話人は律儀に?「失礼します」と声をかけ、扉を開けた。


「セラ、入りなさい」


 扉を開けたところで世話人に背中を押され、正気に戻る。


 危ない危ない…危うく呆然としたまま客と対面するところだった…


 正気を取り戻したものの、じゃあどんな顔で向き合えばいいのかもちょっとわからず…ちょっと怖々とした表情で部屋に入る。


 窓のない部屋の中は夜に来た時と変わらずいつもの様に、明る過ぎず暗過ぎずといった感じだ。


 ドアをノックした時にソファから立ち上がったのであろう青年は僕を見て目を見開き、ポツリと何かを口にした。



「………に愛された子ども…」

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