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異世界にTS転生した僕がサキュバスクイーンになった理由  作者: 望月優志


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私だって…アリスみたいに…

今回もアイビス視点になります。

残酷な描写、悲しい描写があるため苦手な方はご注意ください。

前話が不穏な終わり方だったので早めに書き上げました。

次回からセラ視点に戻る予定です。

「あのねぇ、アイビス。世話人からお話があるんだってぇ。…頑張れる?」


 アイラが心配そうな顔で聞いてくる。


「…がんばる」


 本当は嫌。


 今でも世話人を見かけるたびに、あの時の怖さがぶり返してきて身体が震えてしまう。


 ご飯の時はできるだけ下を向いて世話人を見ないように頑張ってるけど、それでも近くにいるって思うだけで怖くて怖くてたまらない。


 お話はたぶん、そのことだと思う。


 アリスだって、マルドレーヌにいっぱい意地悪された。


 でも、負けなかった。


 私だって、負けない。



 アイラと手を繋いで食堂に入る。


「ひっ!!」

「アイビス!?」


 食堂に入った瞬間、世話人と目が合った。


 たったそれだけだった。


 それだけで怖い気持ちがぶわっと吹き出して来て、とっさに下を向いたけど、それからは身体が動かなくなった。


 私の中に、世話人がこっちを見ている目が焼き付いていて、うまく息ができない。


 怖い。


 怖い怖い怖い…


 苦しい。


 手も足も冷たくって、頭がぐわんぐわんして、目の前がぐるぐる、回ってる。


 周りは明るいはずなのに、目を開けてるはずなのに、目の前が真っ暗になっていく。


 なに、これ。


 怖い。怖い。怖い。


 助けて…



 どれくらい暗かったのかわからないけど、だんだん目の前が少しずつ明るくなって、気がつくと私は寝転がっていて、アイラに抱きしめられていた。


 アイラの匂いがする。


 身体が動くのに気がついて、ぎゅっとアイラに抱きつく。


 涙が溢れて止まらなくなった。


 なにがおきたの?


 怖くて、苦しくて、悲しくて、よくわからない。


 アイラに「世話人はもう居ないよ」って言われたけど、怖くて周りを見れなかった。


 その日はそれでおしまいだったけど、次の日にまたお話があるって呼び出されてしまう。


 でも今度は、ずっと下を見てていいって言われた。お話しなくちゃいけないけど、顔は見なくていいって。


 そうしてアイラに手を握ってもらって一緒に入った食堂には昨日と同じように世話人が待っていて。


 ずっと下を見てても怖くて震える足を一生懸命動かして、椅子に座った。


 テーブルの向かい側に世話人がいる。


 そう思うだけで息がうまくできなくなる。


 こわい。


 でも、がんばらなきゃ。


 息がうまくできないから、がんばって吸って。


「おはなし、って、なに」


 途切れ途切れになったけど、なんとか声にする。


「…大丈夫か?」


 こわい。


 世話人の声は怖い声じゃなかった。


 でも、こわい気持ちが心の中にいっぱいで。


 大丈夫って言おうとしたのに、喉がひくついて声にならない。


 こわい。


 でも、がんばらなきゃ。


 隣に座るアイラの手をギュって握って、無理矢理声を出した。


「…だいじょうぶ!!!」


 凄いおっきい声が出て自分でもすごくびっくりしたけど、びっくりしたおかげで少し落ち着いたかもしれない。


 息が自然とできるようになってた。


「…だいじょうぶ。おはなしはなに?」

「…アイビス、これからの事だ。アイビスが望めば、孤児院に戻ることも出来る」

「…もど…る?…なんで?」


 …孤児院に??なんで??どういうこと??


「ここに残れば、将来必ず仕事をしなくてはいけない。娼婦として…お客様のお相手がある」


 お客様のお相手。


「ッッ!!うっ!?」

「アイビス!?大丈夫!?」


 お客様のお相手をする。そう思っただけで頭の中がぐちゃぐちゃになって、さっき食べたご飯が口から出てきた。


 こわい。くるしい。きもちわるい。


 涙がどんどん出てくる。


 なんなの、これ…?


「…アイラ、少しアイビスを頼む。今日の話は終わりだ。道具を持ってくる」


 アイラが抱きしめてくれる。


 アイラはとっても温かいのに、私の身体のなかはとっても冷たくて。


 頭がガンガンして痛くって、心の中が怖い気持ちでいっぱいで、うまく考えられない。


「ここに残るか、孤児院に戻るか。数日の間に考えておいて欲しい。もし残る事を選んだとしても後から孤児院に戻ることも出来るし、アイビスの今後の状況次第では孤児院に戻ってもらう事になるが…アイラ、すまんがアイビスが落ち着いたらもう一度話しておいてもらえるか」


 何も考えられなくても、世話人の声は聞こえてた。


 私もアリスみたいに娼婦になって、王子さまに見つけてもらわなきゃいけないのに。



 それから数日、これからの事について考えていた。


 ここに残る。孤児院に戻る。


 お仕事をする。お仕事を、できる?


 考えようとするたびに頭の中にずっともやもやがあって上手に考えられないし、一生懸命に考えようとしてるのに、アイツが遊びに誘ってくる。


 考え事してるのって言ってるのに、勝手に私の手を引っ張っていく。


 結局つられて遊んじゃって、気がついたら夜になってる。


 …このままじゃだめ。


 のーてんきなアイツに流されて、ただ遊んでばかりじゃだめなんだ。


 そう思って、寝る前にアイラに抱きつきながら一生懸命考えた。


 これからのこと。


 ルーンもリリカも、実はもう私に内緒でこっそりお勉強に行ってるって知ってる。


 アリスだって、嫌なお客さまのお相手もがんばって王子さまに見つけてもらった。


 お勉強して、お客さまのお相手をしないと…王子さまに…見つけてもらえないから…


「うっぐ…」


 考えるたびに気持ちがわるくなって震えてしまう。


 でも、私だって、がんばるんだ。


 アリスみたいに…



 次の日、アイラにお願いして世話人に話があるって伝えてもらった。


 世話人を前にすると怖い気持ちが溢れてくるけど、前ほどじゃない。ちょっとずつ大丈夫になってる…と思う。


 まだ世話人の方を見ながらは話せないけど…


「わたし、ここにのこる。おべんきょうもして、おきゃくさまのお…おあいて、も!!して!!ちゃんと、はたらける!!」


 途中で声が出なくなりそうになったけど、頑張って全部言い切った。


「…そうか。わかった。初めのうちはアイラにもお勉強に付き添ってもらう事になるだろうが、頼めるか?」

「もちろん。アイビス、頑張ろうねぇ」


 これからお勉強するんだ!って覚悟してたんだけど、お勉強は明日からって言われて、今日はゆっくり休むように言われた。


 ちょっと拍子抜けしちゃったけど、食堂の外に出た途端、足から力が抜けてぺたんと座り込んでしまった。


 アイラが頭を撫でてくれる。


 ふわっと吹いた風が気持ちいいと思ったけど、背中がすごく冷たくて触ってみると、手にべったりと汗がついてきた。


 知らない間にすっごく汗をかいてたみたい。


「…よく頑張ったねぇ。アイビスは凄い子だよ〜」

「…うん」


 ベタベタの手をお洋服の裾でばっばっとぬぐって立ち上がる。


 おもわずうんって言っちゃったけど、まだ何も頑張ってない。これからなんだ。


 明日からお勉強が始まる。


 そう思うと心がざわざわ、嫌な感じがしていてもたってもいられない。


 ざわざわする心をどうにかしたくてアイラと一緒にお散歩していると、畑のそばでアイツが他の子たちと遊んでるのを見つけた。


 何してるんだろって近付いてみると、畑の土でみんなでお団子を作ってるみたい。


 …アイツのだけなんかおっきいんだけど?


「それなに?」

「あ、アイビス!これはねぇ…ばかどりだよ!」


 丸くて大きい変な形の泥団子にしか見えないけど、アイツが言うには鳥なんだって。へんなの。


 私も隣でしゃがんで泥団子を作ることにした。


 こねこね。くるくる。


 アイツはクルカラと「おいしそう」とか「もっとふとらせよう」とか言ってるけど、そんな鳥、私は見たことないし絶対へん。


 だって鳥なのに太ってて飛べなさそうだし。


 こねこね。くるくる。


 あーあ、なんかお団子作るの飽きちゃったな。


 アイツはまだばかどり?っていうの作ってるし。


 あ、線で鳥っぽい顔とか羽とか書かれてる。木の棒で足が付いてて、座ってるみたいでちょっと可愛いかも。


 私のは…ただの泥団子。つまんないの。


 そうだ。


「ほら、こっちみなさい!」

「え?」

「おとしたらまけだから!」

「うえ!?わっ、わっ」


 私は持っていた泥団子をアイツに投げた。


 投げたって言っても、やさしくふわっと。


「アンタもなげてきなさいよ!」

「アイビス!セラって言って!」

「うるさいわね…クルカラにも、はいっ!」

「わわわっ!?」


 クルカラにも泥団子を1つ投げる。


「もー!あぶないでしょ!もう!おとしたら負けだからね!はいっ!!」


 クルカラも負けじと投げ返してくる。


「な、なげるの、あぶないよ!」


 アイツがなんか言ってるけど、今更何を言ってるんだろう。


 いつも走り回って、木の枝から木の枝に飛び回って遊んでるくせに。


「ほら、アンタもなげなきゃどろだんごふえちゃうわよ!」

「わぁ!?」


 そう言ってクルカラから帰ってきた泥団子をアイツに向かって投げたら、今度は避けて泥団子が落ちちゃった。


「あー!わたしのどろだんご、つぶれちゃったじゃない!」

「ご、ごめんね…」

「もう!いいからもってるのなげなさいよ!」


 そうして私とアイツとクルカラで泥団子を投げあってると、周りの子たちも投げて遊び始めて、他のところで遊んでた子たちもみんな集まってきて、みんなで泥団子合戦になって、とーっても楽しかった!!


 でも遊び終わったあと、みんな泥だらけになってて…みんなで世話人にちょっと叱られてしまった。


 1番泥だらけになってたアイツだけ名指しで怒られてた。ざまあみろ。


 その後はみんなで身体の洗いあいっこ。


 大きな桶に井戸からどんどん水を汲む世話人がとーっても大きなため息をしていて、ちょっと笑っちゃった。


 世話人がこわいの、無くなったかも。

 これならお勉強も大丈夫かな。


 なんて思ってたけど、いざお勉強が始まったら全然平気じゃなかった。


 1日目はアイラと一緒に地下室に降りるだけで胸がバクバクして、目の前がぐるぐるして、階段の途中で動けなくなった。


 世話人に辞めるかって聞かれたけど、頑張るって言った。毎日やればできるようになる気がするからって。


 世話人の顔はまだ見れないけど、目の前にいても普通に会話できるようになった。


 毎日ちょっとずつ、できることを増やしていけばいいの。


 みんなお勉強は週に1回くらいだけど、私はまだ『お勉強』をする部屋に辿り着けてもいない。


 だから毎日練習させてって言った。


 このままじゃ、いつまでもアリスみたいになれない。


 そんなの絶対にイヤ。


 地下室への階段を降りていって、途中で動けなくなって。


 アイラに助けて貰って、その日はおしまい。


 毎日毎日くりかえして、1歩1歩、ようやく地下室のお勉強部屋の扉まで辿り着く。


 でもそこからが無理だった。


 扉を開けなきゃいけないのに、手を伸ばせない。


 扉を開けようと手をかけるたび、胸がバクバクして何もわからなくなって、気が付いたら倒れている。


 扉を開けるのに何日もかかったけど、何度も吐きそうになったり、吐いちゃったり。倒れたりしながら。



 ようやく扉を開けた瞬間、意識が途切れた。



 それからは、何日かけても全然ダメで。


 気が付くと小屋の中で寝かされていて。


 ああ、今日もダメだったんだって、自分で自分が嫌になる。


 そんな時、世話人からお勉強部屋の前の部屋でやろうって提案があった。


 階段を降りて、扉を開けるとほとんど何も置いてない部屋になってて、そこからお勉強部屋に続く扉がある。


 そのほとんど何も何も置いてない部屋でお勉強したらどうかって。


 それでいいのかわからなかったけど、お勉強はお勉強部屋じゃなくてもできるって聞いてびっくりした。


 今まですっごい大変だったのに。


 一瞬、すっごくすっごく怒りたくなったけど、我慢した。


 みんなはお勉強部屋でお勉強してるんだ。私がお勉強部屋に入れないから…ずっとお勉強できてない。


 私のせいなんだから。


 そしてようやくお勉強がはじまる。


 お勉強っていっても、まだまだ全然、お勉強らしいことはできない。


 毎日地下室に向かうように、ご飯の時に世話人のことをみる練習をしてたおかげで、もうすっかり世話人の顔を見て話せるようにはなったけど。


 最初は手を触られるだけで気持ち悪くなって、その日はおしまい。


 触られると身体が動かなくなって、こわい気持ちがいっぱいになって、涙が溢れて何も考えられなくなる。


 手を触られても大丈夫になったら、腕を、肩を、頭を、頬っぺたを。


 毎日毎日ちょっとずつ、触られても大丈夫なところを増やしていく。


 いつもいつも、心がぐしゃぐしゃになる。


 いつもいつも、涙で顔がべたべたになる。


 こわくて、泣いて、吐いて、倒れて。


 いつもふらふらしながら、帰りの階段をのぼる。



 …この扉を開ければ、みんなのいる庭に出られる。



 でもこんな姿、みんなに見られたくない。


 知られたくない。


 外に続く扉の前で、涙が止まるまでぎゅってアイラに抱きしめてもらう。


 大丈夫。


 絵本にも書いてた。


 アリスだって、辛いことも、嫌なこともあったって。


 でも、挫けなかった。


 私だって…アリスみたいに…


 そう思ったらさっきよりも涙が出てきて、どんどん溢れて止まらない。



 私はアリスみたいになりたい。


 アリスみたいに、なりたいのに。


 心の中がぐちゃぐちゃで、自分の心がわからない。



 私もアリスみたいになるの。


 王子さまに見つけてもらうの。


 私だけの王子さまに。


 私、がんばるから。



 考えるたびに涙が出てくるなら、何も考えないようにして。



 …うん、大丈夫。


 涙も止まった。


 もう顔も熱くない。


 扉を開けて、みんなの所に戻らなくっちゃ。

記憶を残したままトラウマを抱えて生きていくアイビスと、記憶を無くして身体だけがトラウマを覚えているセラ。

アレのせいで怖い思いが溢れてきていると理解しているアイビスと、訳も分からず身体が恐怖に支配されてしまうセラ。

どちらがマシなんでしょうね。



物語の補足

「お勉強部屋の前の部屋」というのは、セラが寝たきりになり悪夢にうなされて叫んでしまっていた頃に使っていた地下室のこと。


世話人やアイラは意地悪でアイビスにお勉強をするか孤児院に戻るかを選ばせた訳でも、お勉強をしている訳でもありません。

善意100%…といったらおかしな話ですし、もやもやしてしまう話ですが…

小鹿亭は中級の娼館で、オーライン王国の孤児出身者にとって勝ち組コースのような、本人が望んだからといって簡単にいけるような場所ではないんです。


中級娼館で働くことは、世話人にとっては必死の思いで努力して勝ち取った場所、ほとんどの少女達にとってもシンデレラストーリーに憧れて夢を抱いてきた場所です。(※一部の少女を除く)


だからこそ世話人もアイラも、アイビスの意思を尊重しています。


ep6でジュリに説明してもらった部分をコピペしてきました

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 女児専門の娼館に限ったことではないけれど、娼館はそれぞれ6つにランク分けされている。

 庶民向けの最低級、庶民向けだが少し高級志向の低級、商人や実業家などそれなりにお金を持っている人達向けの中低級、小金持ちの商人や下級貴族向けの中級、中級貴族向けの上級、上級貴族と王族専門の特級。

 私のいる小鹿亭は中級ランクで、小金持ちの商人や下級貴族向けの娼館らしい。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

特級の娼館は王族と上級貴族だけが利用しますが、上級貴族は王族に連なる者達です。


なので中級娼館は上から3番目といっても、かなりのエリートコースなんですね。



話は打って変わり私的な愚痴なのですが。

仮想通貨で大損しました。もう散々です。なけなしのお金がいっきにぱぁになりました。

始まった途端に半分になるお金。ガンガンと値段が下がり、遂には5分の1に…

「少しでも増えるかな」なんて淡い期待を抱いた末路。ショックです…ショック過ぎます…沢山増えたらパソコンとか買えるかな、あれもこれも買えるといいな、なんて幻想は瞬時に吹き飛び、あれよあれよという間に消え去りました。欲を見るとダメですね。

あ、先に断っておきますが、心の底からどんよりした気分で書いたから今回アイビスが辛い目にあっている訳では無いです。元々こういった内容だったんです。本当です。信じてください。あしからず。

皆さんもギャンブルには重々気を付けてくださいね。

堅実が1番です。はぁ。

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