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恋愛ゲーム、ですよね?  作者: 雪屋なぎ
中学生 編
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電話

 今夜も秘密のノートを眺めてます。

 前日、水原くんの詳細を手に入れたので書き足しました。データが増えていくというのは、嬉しいですねぇ。マル秘ノートに追加された、水原翔太の中学二年生時の身長と体重。そして血液型。


「……ん?」


 読み返して何かおかしくないか、と気付く。

 身長と体重なんて、何の意味がある? と。攻略に中学生の記録なんて全く関係ないじゃない! これは攻略ノートじゃなくて成長日記か!?


「いや、まて」


 ……もし、もしもよ? 誰かがこれを読んだらどう思う?

 考えただけで怖くなった。妄想プラス実在する人物の身長体重が書かれたノート。一気に犯罪臭くなったよ、絶対!

 私は急いで身長と体重を消した。知りたいのは誕生日と血液型! それだけでいい。

 もう、ほんとに気が付いて良かった。もし遥ちゃんに話したら、心の距離が出来ていたに間違いない。

 ストーカー扱いされても文句言えません。ドン引きして離れていく姿なんて、絶対見たくない。

 好きな人の情報に、身長体重は含まれませんよね? 必要なのは誕生日と占いに必要な血液型で十分。気が付いてほんとーに、良かった。


「まだ話してなくて、良かったぁ……」


 そして、遥ちゃんから好きな人を打ち明けてくれるまで待って良かった。

 すぐ情報を流そうかと思ったけど、いきなり接点のない水原くんの話をするのは怪しいから止めてたんだよね。ナイスだ、私。

 ストーカーという汚名を着ずに済んで助かった。


「……ふむ」


 でも、和田くんの時は話してくれたのに、今回はどうして教えてくれないんだろう。相談してくれないのって、ちょっと寂しいな。

 ふと、机の上に飾ってあるカレンダーを見つめて溜息をつく。

 話すきっかけになるイベントを探すも、中学生が色事で騒ぐのはバレンタインくらい。クリスマスは誰と過ごす? なんて高校生からだ。それとも、もう中学校でも早くないのかな?

 でもなぁ……高校まで遥ちゃんは片思いなんだから下手に動かない方がいい? 今は情報を集めて、その時開示するか。……無駄にならないといいけど。

 誕生日や血液型って、聞こうと思えばすぐ聞けるものだからなぁ。


 夜の所為だろうか、不安になってしまう。こうやってノートに色々書いて情報を集めているけど、意味があるのか? と。

 私のゲームは、信憑性が薄い。

 氷室くんは江里口くんに認められたけど、私は違う。何か、打てば響くような反応があるわけでもないし、現に水原くんの状況も違って戸惑うばかり。サッカー部でサッカー命かと思えば、バレー命らしいし……。


 私のする事が、何かの足を引っ張るのではと恐くなる。


 ううん、大丈夫。きっと上手く行くよね? 怯えたりせず、やれる所までやってみよう。私のゲームはただの恋愛シミュレーションなんだから。


 朝。

 今日は雨なので、日課のランニングは中止。

 のんびりとテレビを見ながら、ストレッチだ。ちょうど海外のニュースで、飛行機のハイジャック未遂事件が話題に。落ちていたかもしれない事を考えると、恐かった。乗っている人達はさぞや恐ろしかったろう。

 他にも内戦の話やテロの話が流れ、天気予報に変わった。

 そういや明智くんは外国に行ったんだっけ。元気に親子睦まじく過ごしているだろうか?


「……あれ?」


 明智くんが子供らしくはしゃぎ笑う姿を思い浮かべようとするけど、どうも想像できない。口の端を上げ……うーん、目元を見た事ないので嘲るっぽくてちょっと怖いな。まぁ、彼の笑顔を見たことがないので、無理な話か。団欒がぎくしゃくしてないといいけど。似たもの家族だったら……いやいや、始終無言で終わってませんように。

 あ、そうだ。海外で忘れちゃいけない人がもう1人いた。

 天ヶ瀬司くんだ。今頃彼もバイオリンを弾いてるんだろう。挫折して落ち込んでないよね?

 ゲームでは、同じ高校になった。外国の大会でいい成績が残せずに落ち込んで拗ねていたけど、主人公と話してまた音楽を目指していく……卒業後は遠恋。彼の場合、ライバルの女の子がいないのでどうしようかな。

 いや、そうだ。彼は私の事を忘れているから、遠くから見守ればいい。

 私がしつこく食い下がっても思い出せず、カバンに下げていたキーホルダーで気が付くという流れだったので、ようはキーホルダーを装着しなければOK。しつこく係わっても思い出してもくれない彼に、絡みに行く主人公の度胸には恐れ入るよ。普通なら落ち込む天ヶ瀬司に近づくなんて、考えないだろう。

 よく考えると、主人公の空気読めないっぷりに辟易する。周りは引かなかったのかな? 彼女の友人は咎めて注意してくれなかったのかな? 

 ……どう考えても健気に頑張る風にみえないから、恐い。

 あれ? 普通の恋愛シミュレーションゲームだよね?


「いやいやいや」


 とにかく、彼には素敵な女性が現れると思うので陰ながら応援しよう。うん、そうしよう。よし、9人中1人片付いたぞ。

 仕上げの伸びをして、私は満面の笑みを浮かべた。

 考えが纏まると、気分がいい。朝ごはんも美味しく食べれそう。

 今日の朝食は洋食なので、食パンをトースターに入れて焼く。この前買ったりんごジャムを使おうか、マーマレードにするか悩んでいると電話が鳴った。

 お父さんはテレビの前で馨にミルクをやりながらオムツを交換していて、お母さんはコーヒーを入れている。なので私が受話器を急いで取った。


「はい、伊賀崎です」

『……』

「?」


 無言電話か? 朝から? もしかして電話にまで変態や痴漢の手が!?

 構えてしまったが、次の声で電話に飛びつく。


『花音ちゃん』


 小さな声だけど、はっきりと相手が分かる。この声は愛梨ちゃんだ!

 消え入りそうな声に受話器を耳へ思いっきりくっ付けた。


「どうしたの? 愛梨ちゃん。何かあった?」

『ご、めん、ね……朝から』


 朝の忙しそうな時間帯に彼女から電話なんて珍しい。

 ……泣いてるの? 声が途切れ途切れで、小さな嗚咽が聞こた気がする。


「いいって、どうしたの?」

『……声を、聞いたら、安心出来た、ありがとう』


 情緒不安定になっているのかもしれない。何があったんだろう。


「今日学校に行ったら、お話しよう! クラスに行くよ」


 努めて明るく喋ったつもりなのだが、拒否された。なんで?


『今日は、お休み……する』

「もしかして熱とか? 風邪引いた? 大丈夫」

『ちが……行きたくない、行けない』


 学校に行けないって、……いじめか!? あの、可憐な愛梨ちゃんを? 誰だ、誰が彼女をそんな目に!


「分かった、今日お見舞い行くから待っててね!」


 そう話すと彼女が分かるよう泣き出した。


『あり……かの……うれ……』

「今は休んで、放課後ぜったい遊びに行くから、よろしく!」


 今日の約束を取り付けて、電話を切る。愛梨ちゃんに何があったのか……今日一日で情報が分かるだろうか?

 2年生になってから、朝は遥ちゃんと登校しているが、合流するまで要と一緒だったりする。

 よし、お隣さんの彼の情報力を頼ってみるか。この前相談したときに、愛梨ちゃんを知ってるような事を言ってた。


「お友達、どうかしたの?」


 全員揃った部屋で電話を取ったので、会話は聞かれている。私の緊張具合から、お母さんが心配してくれた。


「愛梨ちゃんからだった。何か泣いてたみたい」

「そうか」


 父親が馨を抱いてこちらに来てくれる。


「学校に行きたくないって……」


 両親共々やはりいじめを思いついたのかもしれない。沈黙が部屋に降りる。

その中、馨だけが嬉しそうに笑っていた。


「だからさ、今日帰ったらちょっと会いにいってくる」

「そうね、遅くならないうちに帰ってくるのよ」

「うん」


 トースターに入れていたパンが焦げて黒くなっていた。残念、もう食べれそうにない……。


「あ、そうだ。入れたまんまだったね」


 あははと笑うも、明るく食事を楽しめる気分じゃなかった。飲み込むように焼いていないパンを食べると、制服に着替えて準備をする。


「行ってきます」


 急いで出ても要はまだだろうに、いてもたってもいられなかった。

 傘を差して玄関から出る。まだ5分ほど早い。だから要はまだ出てこない。大河家の玄関前に傘を差して立っているが、自宅の玄関で雨宿りに戻るか?

 ふと。その時、明智くんを思い出した。

 雨の中も先に来ていて、待っていてくれた。……待つって辛いよね、早く出て来て欲しいと苛立ってしまう。1年近くお世話になった事を思い出し、彼の胆力に恐れ入る。

 彼は本当に中学生だったのだろうか……絶対年上だよね、老成しすぎている。お祖父さんと暮らしていたから?


「ごめん、花音待たせた?」

「いや、待ってないよ」


 考え込んでいたら、要が出てきた。傘を脇に挟み、慌てて靴を履いている。


「おはよう、要」

「おはよう、今日は雨だから体が鈍っているようでキツイよ」


 改めて挨拶をすると、返事をして急いで傘を差す。


「早速で申し訳ないんだけどさ、愛梨ちゃん知ってる?」

「ん? 花音の友達だろ?」


 不器用そうな子、と笑う。まさか私の知らない所で友人になってないよね?


「その頼元さんがどうかした?」

「う……何か彼女について噂話とかある?」


 正直に電話内容が言えず、口篭る。


「花音」


 要の視線に、注意がくる! とつい身構えた。


「曖昧な聞き方されると分からないよ」

「……それはそうだよね」

「まあ、最近何か噂聞いたことはないけど、何があった?」

「実は、朝電話でちょっと……」

「電話で?」


 ああ、全部言わなきゃ駄目かな? ジッとこちらを見られて、困る。


「電話で泣いてたから」

「何か言ってた?」

「その……学校に行きたくないって」

「そか、わかった」


 いきなり歩き始める。


「え? え?」

「ほら、早くしないと一条さんと一緒に学校に行けないよ?」

「あ、うん」


 先程までの尋問官の雰囲気が抜けたから、少し驚いてしまった。

 何がわかったんだろうか? もしかしたら、学校で情報収集してくれるのかもしれない。頼ってしまうことに申し訳なさが混じるが、正直嬉しいので感謝する。


「今日の放課後は一緒に帰ろう」

「ありがとう」


 でも何があったのかな? 愛梨ちゃん。



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