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恋愛ゲーム、ですよね?  作者: 雪屋なぎ
中学生 編
33/503

水原翔太

 聞いて後悔した。いるに決まっている、要は本当に友人が多いから。


「バレー部の友達? いなくもないかな」


 少し妬んでしまいそう。そうか、やはりバレー部にも知り合いがいるのか……顔が広いんだね、やっぱり。私もたくさん友達が欲しい。

 そう言えば小学校の時の友人と遊ばなくなったな。最近色々な目に遭っていたから、かなり疎遠になっている。久しぶりに連絡して、遊ぼうかな?

 いやいや、目的を忘れちゃいけない。私には重大な使命があるんだ。ただでさえ氷室くんのゲームの所為で、色々と立て込んでいるのに巻き込みそうな約束は出来ないよね。


「要は本当に顔が広いね」

「こんなの普通だよ、普通」


 あんまり普通を強調しないで。……私が普通じゃないみたいじゃないか、落ち込むぞ。心のヒットポイントがなくなる前に、話を進めなきゃ多分撃沈してしまう。


「二年生の水原くんを知ってる?」

「あー、あの背の低い」


 知ってるんだ? 同級生でも無いのに。でも背が低いって……先輩なのに容赦ないな、少しは控えめに言おうよ。運動部関連って上下関係大事なはず、絶対に気をつけたほうがいい。注意しようと思ったら、カウンターを食らった。


「好きになったの? 明智はどうするの?」


 久しぶりに彼の名前を聞いたから、驚く。話題にも出なかったから、すっかり記憶の奥の人になりつつあったり……いや、恩は忘れてないですよ? ええ、ほんとに。

 でもまた『明智』ですか……一応年上なのだから、敬称をつけようよ。


「明智くんは関係ないから……」

「寂しいから?」


 いない人の話をしてどうする。しかも私は遠恋中ってですか!? おかしいな、そういう誤解は随分前に解いたはずなんだけど……まぁいっか。私の事は置いといて、先ずは遥ちゃんの為にも情報収集をしなくては。


「私のさ、友達が気になってるみたいだから、知っておきたいの」


 要がジロリとこちらを伺う。やましい気持ちは無いので、もちろん平気だ。宣言だってしてもいい。


「なによ、疑うの?」

「いや、花音の友人なら一条さんか頼元さんだろ?」

「!?」


 君は何者なんだ? 何故に私の数少ない友人を知っているんだ。恐るべき情報収集能力、もしかしたら既に彼は、手遅れなところに行ってしまったんじゃないのか!? 驚く私に彼は軽く笑った。


「何だよ、これぐらい知ってるよ」

「もっと友達はいるわよ、小学校の時の友人だって」


 最近かーなーり、疎遠だけど。


「そいつらは違う、花音の友達なんかじゃない」


 きっぱりと言われた。情報通の要に言われると、凹むよ……だって確定だから。そうか、中学校に入ってから遊ばなくなったのは、そういう事だからなのか……。

 私は友人のつもりだったけど、彼女らはそうじゃなく、クラスメイトだった……それだけの話。心に強い痛み(ダメージ)が、……なんだろう目の奥が痛む。


「水原を好きになりそうなのは、一条さんだろうな」

「うぐっ!!」


 ダメージを受けている場合じゃなかった。君は勘も冴えているのか!! 彼女の話を君にしたこと無いのに、ここまで読むなんて。もう何か特別な能力でも備えているのでは?

 江里口くんを知っているだけに、疑ってしまう。


「そんな目で見ないでよ。一条さんって恋するのが好きそうだから、なんとなくだよ」


 なにぃいい、そんな目で遥ちゃんを見てたのか、少しムカつくぞ。すごくいい子なのに。


「花音、そんな顔しないでよ、分かった、調べとくから、ね」


 そこまで顔に出したわけではないが、彼に宥められた。なんだか私の方が年下みたいな扱いを受けてる様な? 気のせい?


「俺、もう一度サッカー部に戻らなきゃ、また後で」


 すぐさま校庭に向かって走り出した。なんだか逃げられた……? まぁいいか、また眼鏡を掛けて帰らなきゃいけないし。


「誰も見ませんように……」


 私は更に注意して柱と木の間で眼鏡を掛けた。

 本当にすごく便利な眼鏡だ。ちらりと足元を見れば、欲しいなと思っていた靴を履いている。少し足を動かすと、走りやすそう。やっぱり欲しいな、この靴。

 でも服装すら思いのままなのは、助かる。中身が変わっても、服が変わっていなかったらさすがに怪しいもんね。ただ、私が知っている服にしか変身できない。

 今、ジーパンにシャツというシンプルな服なのは、私が考えるのを放棄したからだ。……靴だけに意識を向けすぎたかも。これからおしゃれに気をつけないといけないのにね。

 今の私は、流行パラメータが「0」の様な気がする。チート機能が欲しいよ……。誰かに頼めない頼みを考えながら、家に帰った。

 家でのんびり馨をあやしていると、玄関から要の声が聞こえた。


「花音いる?」

「居間にいるよ~」


 返事をすれば、洗面所に向かう。よし、ちゃんと今回も手洗いうがいをしてくれている。教育が行き届いてお姉ちゃん嬉しいよ。


「馨、お隣の要お兄ちゃんが来ましたよー」


 一生懸命ハイハイをしながら弟がにんまりと笑う。おーおー、よだれがすごい。柔らかいガーゼで口元を拭けば、嫌がって顔を背けた。


「ハロー、馨。んで、水原の情報聞いてきたよ」


 手を洗ってきた要が側に座る。

 早い! ……そういや学校にはバレー部もいたからたまたま聞けたのかな?


「両親、兄、弟、妹の家族構成で」

「……え?」

「なんと親は元リーグの有力選手で、次期海堂グループのバレー実業団監督の予定らしいんだ」

「……」

「兄は有名なバレーボール強豪校の寮住いで、弟は小学3年生、妹は1年生」

「あ……あの、要さん」

「あ、そうそう、身長は148cmで、体重は38kg。血液型はA型」


 馨がおもちゃを掴む。寝転がり、足を上げる姿は可愛すぎてたまらない。


「恋愛遍歴は皆無に近いと思うよ。バレーボール命でそれどころじゃないみたい」


 そう、それよ。そういうのが聞きたかったの。なのに何故に家族構成? 本当に探偵になったようで、恐いぞ。そして、それをどうやって調べたのか不安になる。犯罪には手を出してないよね? 書類か何か盗み見とかじゃないよね? 聞いたのは私だから、私がやらせた事になる。

 うう、恐いけど責任は私が取らなくては。


「お兄さんは片思いの彼女がいるらしくて、メンタルに弱いのが悩みの種かも」

「いや、家族の事はいいから」


 何故に彼のお兄さんの恋愛情報まで……このままでは弟や妹の事まで語りそう。もしやそれを手助けすれば、更に水原くんのより詳しい情報がとかじゃないですよね?


「えっと、その……水原くんはバレーが好きなの? 例えば他の……そう、サッカーとかは興味ないのかな?」


 私が聞きたいのは、水原くんの話だ。彼自身の事だけでいい。


「あると思うよ」


 何故気持ちを知っているんだ!、と聞きたい。要はチート能力者なの!? ああ、ツッコミしたい。


「なんでそう思うの?」

「だって、小学校の間は俺のいるクラブに所属してたもん」


 なんでその事を教えてくれなかったの!? いや、話してないから教えてもらえるはずは無いけどね。


「そうなの?」

「うん、足腰を鍛える為って言ってたけど、楽しそうだったし」

「楽しそうなら、何で辞めたの?」


 ならば高校でサッカーを始めたのは、バレーよりもサッカーがしたかったからなのか。


「バレーの為」

「バレーの為?」

「そう、中学からはバレー一本で頑張らなきゃいけない、って話を聞いたことがあるから」


 親が、親がバレー選手だったから、バレーを強制でやらされているのかも。

 でも高校で方向転換とは……親と喧嘩になってないかな。


「可哀想だね」


 そんな、あの爽やかイケメン水原くんに、そんな暗い過去があったのか。本格的に攻略していないので、事情を知らなかった。


「そうでもないよ?」

「へ?」


 要が馨を抱き上げる。


「水原は一生懸命バレーに打ち込んでいるし、将来実業団入りを目指してるよ」

「???」


 どうしよう、ゲームと辻褄があわない。


「だってサッカー好きだったんでしょ?」

「まぁ、好きだったと思う」

「それを親に止めさせられて、無理やりバレーを」

「違う、違う、バレーの為のサッカーをしていたんだよ」


 なんじゃそら?


「たださ、サッカーが上手かったから、もう少し続けないかと親も言ってくれたらしいけど、水原が辞めると決めたんだ」

「?????」


 なら何故高校でサッカー部に?


「水原くんは本当にバレーが好きなの?」

「夢を語る目に嘘は見えなかったよ」


 って本人に聞いてきたんかい!


「……もう知り合いって言うより、友人だったりするのか……な?」


 さり気に聞いてみれば、肯定の言葉が返ってくる。


「まぁね。小学生の時、一緒にサッカーしてたし家に遊びにも行ったよ」


 なんだか疲れた。酷く遠い回り道をしたような気分になるのは何故でしょう。いや、先程の心配が消えただけ、うん、よし! 犯罪ルートでの情報収拾じゃなかったんだから、よかったと思おう。

 家にまで遊びに行く仲ならば、友達だよね。うんうん、それなら家族を知っていてもおかしくない。


「今聞いた話を遥ちゃんにしてもいい?」

「いいと思うよ」


 要は馨を抱えたまま、部屋を歩き回る。弟の喜ぶ声に、私も嬉しくなって笑う。結構情報収集が簡単に終わったので、気が抜けた。

 少ししてお父さんとお母さんが帰ってくると、彼は帰っていった。なんだ、このままなら要も普通に過ごしていけるかも。

 でも、考えを改めさせられるのは布団に入ったときだった。

 身長と体重はどこから? 血液型って男子もよく聞くもんなの? 学校の書類か何かを見たのではなかろうか?

 気になり眠れなくなったのは、言うまでもない。


「……要は、もう寝てるか」


 そっとカーテンの隙間からお隣を見れば、真っ暗。明日の朝、私は彼に聞ける? どこで知ったのって……。

 午前様まで悩み続けたけど、翌朝杞憂だったことを思い知らされた。単純に普通に聞いたそうです。

 要をそういう風に仕立てていこうとしているのは、自分ではないだろうか……。新たな悩みの種に、まだまだこれから苦労しそうだ。



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