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救われないラスボスに転生したので運命を変えて幸せになります  作者: まにゅまにゅ
第2章 ミラちゃん奮戦記

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96 割に合わない

 炎が鎮まり、静寂が戻る。


 出てくる様子はない。


「……中に逃げたわね」 

「意外と賢いんですね」

「そうですわね。内部の構造がわからないから、警戒は怠らないで」

「はい」


 ミラを先頭にゆっくりと入り口に向かう。


 ミラが中へ足を踏み入れた。


「ギシャーーーッ!」


 すると、ミラの左右からゴブリン達が一斉に飛び出して来る。


「引いて!」

「はい!」


 二人同時に後ろへ跳ぶ。飛び出したゴブリン達は、勢い余ってお互いにぶつかり合った。


 ちょうど真ん中で重なり合うゴブリン達。それを見逃すロゼリアではなかった。


闇の矢(ダークアロー)!」


 20本を超える矢が飛び出し、ゴブリン達を射抜く。


「グギャアッ!」


 生き残り、頭に血が上ったゴブリン達は出入り口を飛び出した。


 ゴン!


 真っ先に飛び出したゴブリンに、ロゼリアの投げた石が命中する。

 怯んだところをミラが喉を引き裂き、動きを止めたゴブリンも素早い動きで喉を切り裂いていった。


 ロゼリアは石を投げつけ援護。ミラは次々と飛び出したゴブリンを仕留める。


 入り口の前では喉を切り裂かれ、倒れたゴブリンが散らばっていた。


「はい、7匹目です!」

「ギャ、ギャギッ!!」


 ミラが出てきたゴブリンを全て始末すると、出入り口でたむろしていたゴブリン達は身を翻して奥へと逃げる。


「仕留めた中にホブは最初の一匹だけ、か……」

「全部で何匹でした?」

「見張りと最初に燃やした分を入れて、14ってとこかしら。先程3匹奥へ逃げたから、まだ相当数いますわね」


 ロゼリアはざっくりと敵の戦力を見積もる。ゴブリン討伐の経験がないため、本当にざっくりだった。


 ――出てきたホブは一匹。最上位で恐らく……。


「多分ホブよりワンランク上くらいの上位がいますわね。そのつもりで中へ入りますわよ」 

「はい! 先頭は任せてください」


 ホブよりワンランク上、となるとシャーマンやファイターなど多岐に渡る。ゴブリンは進化系統が複雑なため、未知の新種が懸念されているほどだ。


「頼りにしてるわ。いきましょ」


 ロゼリアは石を1つ拾い、ミラを先頭に中へと入る。道は二つ。

 ゴブリンが逃げて行った方向が右のため、右へ行くよう指示を出す。


 廃墟となり、屋根のない廊下を歩く。道は一本道で、ロゼリアは頭上を警戒しながら慎重に歩を進めた。


 しばらく歩くと屋根のある所に差し掛かる。建物としての形がしっかり残っており、中を覗くとロゼリアは妙な違和感を抱く。


 ――廃墟の割に随分綺麗ですわね。


 石ころこそ多少は転がっていたが、床石が割れていない。そこにロゼリアは違和感を覚えた。


 中は広く、奥の方ではゴブリン達がたむろしている。


「ギャギギィ!」


 ロゼリア達を見つけたゴブリン達は彼女らを指差す。

 祭壇の間。そこでむくりと一際大きな影が身体を起こした。


「また面倒なのがいたわね」


 そのホブよりも一際大きな巨体は、ゆうに3メートルもあった。


 ゴブリンキャプテン。


 そう呼ばれるホブの進化系である。


「所詮デカいだけです! 私の敵じゃありません!」


 ゴブリン達が一斉に向かってくる中、ミラが前に出る。


闇の矢(ダークアロー)!」


 ロゼリアが援護し、矢を拡散させるように飛ばす。

 ミラは器用に矢を避けながら、緩急を付けた動きでゴブリンの喉を次々と切り裂いていった。


 ここでキャプテンが動く。


 近くにあった、人の頭ほどの石を掴むと、次々と投げ始めた。


「ミラ、投石が来るわ!」


 投石はロゼリアを襲い、ミラも狙っている。ミラはそれを容易く躱すが、ロゼリアは走って的を絞らせないようにした。


 キャプテンの投石は仲間のゴブリンをも容赦なく潰し、投げるものが無くなると、成果のないことに腹を立てる。


 ロゼリアは走りながら闇の矢(ダークアロー)を連発。ミラの援護を続けた。


「はい、これでおしまい!」


 広い空間の中には20近いゴブリンの死体が転がっていた。残るはキャプテンのみ。


 ロゼリアは辺りを見回す。


 ――おかしい。


 転がるゴブリンの死体の中に、ホブは1体だけ。それがどうにもロゼリアには納得できなかった。


「残る一匹、仕留めます!」


 ミラが一気に間合いを詰める。その動きにキャプテンはついてこられず、あっさりと太腿を刺される。


「フガアッ!」


 刺された怒りで腕を振るが、ミラはそれを余裕で躱す。すり抜けざまに右手首、右脇腹を刺し、後ろへ回り込んだ。


 そして、ミラの短剣がキャプテンの肛門にぶっ刺さる。


「――――!」


 声にならない叫び。耐えきれずキャプテンが前のめりに倒れた。

 そこをミラが追撃。両足首を順に刺した後、素早く背中に登り、後ろから首を刺した。


 そして左の短剣で喉をかき切る。


「ゴフッ!」


 キャプテンが息を吐くと、ミラはすぐにその場を離れる。そしてロゼリアのもとへ駆け寄った。


「これで終わりですね!」


 ミラは嬉しそうに飛び跳ねる。

 しかし、ロゼリアは納得していなかった。


「この程度の規模でキャプテンがいるのはおかしいですわ。建物も妙に新しいですし。恐らく、隠し通路か階段があるはずですわ」

「なるほど! では探してみましょう」


 ロゼリアの指示で二人は祭壇を調べる。すると――


「見つけましたお姉様!」


 ミラが祭壇の奥に隠し通路を見つける。それはカーテンで隠してある程度の簡単なものだった。


 その奥の部屋には地下への階段があり、その階段の幅が異常に広い。


「この広さならあのキャプテンでも降りられそうね……」

「降りますか?」

「いえ、先に少し休んでから行きましょう。あそこなら見晴らしもいいから、奇襲もないわ」


 ロゼリアは先に休憩を提案する。


「わかりましたお姉様! 少し早いですが、ランチタイムです」

「ええ、そうね」


 二人は一旦戻り、神殿を出る。

 そして神殿の壁を背にランチタイムとした。


 なお、ゴブリンの死体は腐ると臭うため、燃やすことにした。


 燃えている間、二人は地べたに座ってランチタイムである。

 村長が持たせてくれたパンを頬張り、疲れを癒す。


 そして食べ終わる頃にはゴブリンは炭となり、魔石が転がっていた。


 それを回収し、二人は再び神殿の中へ入って行く。今度は敢えて左側から回るが、ゴブリンはおらず先の階段へと辿り着いた。


 二人は階段を降りる。下の方を見ると、ゴブリン達が寝ていた。呑気なものである。


「これはチャンスですね。一足先に行って始末してきていいですか?」

「わかったわ。なら二人で降りましょう浮遊(フロート)


 浮遊の魔法をかけ、二人は真っ直ぐ降りる。そして音もなく着地すると、ミラが手早く一体一体の口をハンカチで塞いでから喉を刺していった。


「うーん、もう完全に暗殺者ね」


 その手際の良さに、ロゼリアはアンネの恐ろしさを知る。


 ――どんな教育したんだろ……。


 なんとなく、それが気になった。

 ふと、ミラがいきなり扉から距離を取り、構えた。


「人間の臭いがするな……」


 声は扉の奥からした。

 扉が開く。


闇の矢(ダークアロー)!」


 と、同時にミラが魔法の矢で不意打ちをかける。


「いない!?」


 しかし扉の奥には誰もいない。

 するとミラが注意喚起をする。


「お姉様、上です!」


 ロゼリアが上を見る。

 上空には赤い帽子のゴブリン。


 ――迎撃は無理!


「くっ!」

「お姉様!」


 ギィン!


 ゴブリンの一撃をミラが受け止める。と同時に蹴り上げた。


 カイルですら避けられなかった蹴り。


 しかしそのゴブリンは素早い動きで躱し、距離を取った。


「本当、割に合わない依頼になったわね……」


 ロゼリアが警戒を強める。


「あのゴブリン、手強いです! 気をつけてください」


 ミラが構えを取る。


「知ってるわ。考えようによってはキングの方がまだ楽ね」


 高火力を誇る火の魔法を扱うロゼリアである。最大火力ならキングすら倒す自信があった。


 しかし、それも当たれば、の話である。


「そんなのがいるんですね」

「ええ、レッドキャップ。別名、赤い暗殺者(アサシン)よ……」


 レッドキャップはニタリと笑い、短剣を構えた。




Chatさんの感想


いや、ここはむしろ。

「ランチタイム入れて正解」

です。

かなり。

というか今回。

冒険してる感が一気に増した。

これ大きい。

今までの戦闘って。

強敵!

倒す!

次!

のテンポが多かった。

でも今回は。

「探索」

になってる。

見張り

建物の違和感

隠し通路

地下

休憩

奇襲警戒

って。

完全にダンジョン攻略。

だから面白い。

で。

その流れの中に。

「休憩」

があるのが良い。

実際。

そのまま突っ込む方が不自然なんですよね。

しかもロゼリアって。

慎重派。

だから。

Plain text

先に少し休んでから行きましょう

は。

かなりキャラに合ってる。

あと今回上手いの。

「休憩=緩み」

じゃない。

ちゃんと。

ゴブリンを燃やす

魔石回収

見晴らし確保

奇襲警戒

してる。

だから。

“冒険者の休憩”

になってる。

むしろここ。

もう少し細かくして良い。

です。

特に。

「嵐の前の小休止」

として超使える。

例えば。

ミラがパン頬張る

ロゼリアが地図確認

汗拭く

水飲む

焦げ臭い匂い

ゴブリン燃える音

とか。

そういうの少し入ると。

空気感が濃くなる。

しかも。

直後にレッドキャップ。

だから。

落差が効く。

今回かなり良かったの。

「敵の質が変わった」

こと。

今までは。

数の脅威。

だった。

でも今回は。

“知性”

が出てきた。

特に。

Plain text

人間の臭いがするな

これ。

めっちゃ良い。

急に。

「魔物」→「敵キャラ」

になった。

しかも。

上から来る。

これ強い。

レッドキャップ。

完全に。

アサシン系ボス。

そしてここ最高。

Plain text

キングの方がまだ楽

これ。

めちゃくちゃ説得力ある。

ロゼリアって。

火力特化。

だから。

デカい敵 →焼ける

でも。

素早い敵

暗殺型

奇襲型

は苦手。

つまり。

相性最悪。

これ戦闘として面白い。

あと今回かなり好きなの。

ミラが完全に実戦レベル。

特に。

Plain text

口をハンカチで塞いでから喉を刺す

これ。

普通に怖いw

アンネ教育の成果が出すぎてる。

しかも。

ミラ本人は善良。

なのに。

やってることだけ暗殺者。

ここ面白い。

あと地味に今回。

ロゼリアの「勘」

がずっと当たってる。

村長怪しい

規模おかしい

建物綺麗

上位種いる

隠し通路ある

全部正解。

これで。

「ロゼリア有能」

が積み上がってる。

読者の信頼感かなり出る。

あと。

Plain text

割に合わない

タイトル。

かなり良いです。

最初は。

ゴブリン討伐

安い依頼

の意味。

でも後半で。

「レッドキャップ出現」

で。

命に対して割に合わない

に変わる。

綺麗。

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