83 第2の犠牲者
「闇の矢」
ロゼリアが魔法を唱えると、10本程の魔法の矢が飛び出す。
その射出のタイミングをずらし、先行した3本が野鹿の足を止める。
ズガガガガ!
足を止めたところに矢が降り注ぐ。野鹿は「クゥーン」と小さく鳴くとバタン、と倒れた。
「よーし獲物ゲット。野鹿とはツイてますわ。浮遊」
ロゼリアが魔法をかけると、野鹿はゆっくり浮かび上がる。そのまま手で移動させ、リアカーに載せた。
「このリアカー、本当に便利ですわね。おかげで今日もたくさん儲かりましたわ」
リアカーには野鹿以外にもたくさんの野草や野ウサギが載せられていた。それらを眺め、ロゼリアはご満悦である。
「んしょ、ふぅ、でもこれだけ積むとさすがに重いですわね」
リアカーが便利とはいえ、森の中は悪路である。小柄なロゼリアでは運ぶだけで一苦労であった。
それでも街まで戻り、冒険者ギルドまでやって来る。その隣の建物が解体所兼引き取り所となっており、取り引きを行うのである。
「おお、嬢ちゃん頑張ったな」
「ふふん、私にかかればこのくらい楽勝ですわ」
引き取り所で獲物を提出する。早速解体所の大将が査定を行った。
「銀貨68枚ってとこだな。ところで嬢ちゃんは討伐はやらないのか?」
「ええ。こうして野生の獣を狩るだけでも収入はありますもの。強力な魔法が使えても、生き残れるとは限りませんわ」
既に死ぬかもしれない、という戦いを経験したロゼリアである。だからこそ、そこに驕りはなかった。
「かーっ、無謀な若い奴等に聞かせてやりたいねぇ。そのへんの新人じゃ、相手にならないくらい強いだろうに」
大将はロゼリアの言葉に感動し、机に手を置いて笑う。
「それでも1人では限界がありますわ。討伐は日をまたぐこともありますし、学業を疎かにはできませんもの」
ロゼリアはふふっ、と笑い証明書を受け取る。これをギルドの受付に提出すれば報酬が貰える仕組みだ。
そして、入り口のドアに手をかけて中を開ける。
すると、ロゼリアの耳に歌が飛び込んで来た。
ああ、悲しき運命のいたずら~♪
白い蝶は涙を流し1人踊る~♪
愛する人を忘れるため~♪
バタン!
ロゼリアは思わず扉を閉めた。
「なに……、今の?」
思わず呟く。
どこかで聞いた話。
他ならぬクラスメイトが目を輝かせて吹聴していた。
どう考えてもその話であった。
「……」
何故か見てはいけないものを見た気分になり、ロゼリアはドアを開けるのを躊躇った。
しかし、中へ入らないと報酬がもらえない。仕方なく、ロゼリアはドアをもう一度開けた。
再び聞こえる歌。
それでも白い蝶は忘れたくない~♪
心にある想い~♪
白い蝶は泣きながら思い出に蓋をする~♪
ポロン、ポロンと竪琴の音が鳴り響く。流暢な歌声。
その歌う少女の周りで冒険者(特に女冒険者)が涙を流し、聞き入っていた。
「白い蝶の歌8番、悲しみのダンスでした!」
歌が終わり、少女が礼をする。そして帽子を取った。
「うおおおおお、なんて悲しい歌なんだぁっ!」
「ああ、悲恋ね。続きが気になるわ」
聞いていた冒険者達がその帽子に次々とおひねりを入れる。帽子の中で硬貨がぶつかる音が小気味よく響いていた。
「……こんなとこで何をしていますの……、ミラさん」
聞いてはいけない、と思いつつも聞かずにはいられなかった。もしこれをテアが聞いたら、羞恥で悶絶するに違いない。
「あ、ロゼリア先輩! なにって、推し活です。これはその中でも大事な行為で、布教活動と言います!」
ミラがロゼリアに気づくと、なぜかミラはエッヘン、と胸を張って説明した。
「お金も手に入り、私の欲求も満たされ、しかも、テア様の尊さを民衆に伝えることができる! まさに一石三鳥の活動なのです!」
なぜかミラの瞳がキラリと光る。
そしてドヤ顔。
一方のロゼリアは頭が痛くなっていた。
――これ、テア様は知らない方が多分幸せよね?
言うべきか言わざるべきか。
少しだけ葛藤していた。
「ですから、テア様の尊さを伝えるという、大切な活動……」
「さっき聞きましたわ……」
ミラの発言を遮る。
しかし、ミラはめげなかった。
「大事なことなので2回言わせてください!」
「わ、わかったわ……」
ロゼリアは悟った。
――この子は、私では止められないわ。ごめん、テア様。
「わかっていただいて恐縮至極! ところで、ロゼリア様はここで何を?」
「なにっ、て。私冒険者ですもの。こうやって学費と生活費を稼いでいますのよ?」
そう、平民となったロゼリアは、いつまでもクレールには迷惑をかけられない、と自活の道を選んだのである。
今は寮住まいであった。
「ええっ! 悪役令嬢なのに冒険者なのですか!?」
「あー、私もう貴族じゃないんだけど……」
言いにくそうにロゼリアが伝える。
「え?」
すると、ミラは素っ頓狂な声をあげた。目が点である。
「うんまぁ、一般庶民は知らないでしょうね。っていうか、よく私が貴族だった、って知ってたわね」
「悪役令嬢じゃ……、ない?」
ミラは混乱していた。
自分の知識と違う事態がここにもあり、「なんで?」で頭が埋め尽くされる。
「ええ、だからさっきからそう言ってますわ。家が取潰しになりましたから」
ロゼリアは仕方なく、簡単に事情を説明した。すると、ミラは身体をぷるぷる震わせ、俯いた。
「家が取潰しになり、それでも健気に冒険者として生きる元悪役令嬢……」
「あの、ミラさん?」
ロゼリアがどうかしたかと声をかける。すると、いきなりロゼリアの手を両手で握り締めた。
「推せる……!」
「はっ?」
ロゼリアにはミラの言っている意味などわかろうはずもない。
「ああっ、なんて健気なロゼリア先輩! 不幸にも負けず、強く生きる薄幸の美少女! これを尊いと言わずしてなんと言いましょう!」
ミラは胸に手を当て、演説するように周りにも主張する。
ロゼリアは知った。
人は、恥で死ねると。
「お姉様とお呼びしても?」
「絶対やめて!」
ミラが目を輝かせて縋るが、ロゼリアは即座に却下した。
「そこをなんとか! 私の推し活ハッピーライフのために!」
ミラ、再び壊れる。
「やめてええええっ!」
ロゼリアは恥ずかしくなり、逃げ出すしかなかった。
しかしロゼリアは知らない。
この後、自分まで歌にされてしまうことに。
ChatGTPの感想w
もう完全に。
「第2の犠牲者」
で合ってますw
しかも今回。
被害者:ロゼリア
加害者:ミラ
が綺麗すぎる。
特に今回上手いの。
ロゼリアって。
第2部で。
家崩壊
姉処刑
平民落ち
冒険者生活
っていう。
超シリアス背負ってるんですよ。
なのに。
ミラ視点だと。
Plain text
「推せる……!」
になる。
これがめちゃくちゃ面白いw
しかも。
ロゼリア本人は。
「人生終わった寄り」
なのに。
ミラは。
「美味しい属性追加!」
くらいのテンション。
この温度差が強い。
あと今回かなり好きなの。
「白い蝶の歌8番」
ここw
もう完全に。
学園内二次創作文化
が形成されてる。
しかも。
Plain text
悲しみのダンス
って。
ちゃんと。
第4章ラストの。
“無音のワルツ”
拾ってるの偉い。
ミラ。
解像度高いオタクなんですよねw
あと地味に好き。
Plain text
(特に女冒険者)
ここ。
わかる。
絶対女性人気高い。
白い蝶
悲恋
廃嫡
身分差
一途
もう女性向け全部乗せ。
あと。
Plain text
――これ、テア様は知らない方が多分幸せよね?
ロゼリアのこの感覚めっちゃ好き。
第2部で。
「他人の痛みがわかるようになった」
のがちゃんと出てる。
昔のロゼリアなら。
「ふーん」
で終わってた。
でも今は。
“テアが羞恥で死ぬ”
って想像できる。
成長がギャグの中にある。
あと。
Plain text
「お姉様とお呼びしても?」
「絶対やめて!」
テンポ良すぎるw
ロゼリア。
最近ずっと苦労人枠。
しかも。
ミラって。
「悪意ゼロ」
なのが厄介。
純粋100%。
だから止めにくいw
あとこれ絶対起きる。
次回以降
ロゼリアの冒険者活動が歌になる
「氷薔薇の狩人ロゼリア」とか二つ名つく
ミラが勝手に脚色
女冒険者に人気出る
本人だけ死ぬほど恥ずかしい
まで見えるw
あと個人的に好きなの。
Plain text
ロゼリアは知った。
人は、恥で死ねると。
ここ。
めちゃくちゃラノベの締めとして強い。
シリアスな人生経験積んだロゼリアが。
“最大ダメージ:推し活被害”
食らってるの笑うw




