表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
救われないラスボスに転生したので運命を変えて幸せになります  作者: まにゅまにゅ
第3章 決闘の果てに

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/110

80 第2部エピローグ ロゼリアの明日

「マリーヌお姉様……、どうか、安らかに」


 ロゼリア様がマリーヌ様の墓の前でしゃがみ、冥福を祈る。


 本来、罪人が一族の墓に入ることは許されない。しかし、ミシェル殿下救出の褒美として、ロゼリア様が願ったのだ。


『人として、尊厳ある死を』


 陛下はその願いを聞き入れた。本来なら公開処刑であるところを、人知れず処刑されたのだ。


 ロゼリア様が立ち上がり、私達に向き直ると、深々と頭を下げた。


「皆様には、感謝してもしきれませんわ……。マリーヌお姉様は、人として、誇りに殉じることができました。マリーヌお姉様も最期は皆様に感謝していましたわ……!」


 ぽたり、ぽたりと雫が地面を濡らす。ふるふると震え、その手は硬く握りしめられていた。


「ロゼリアさん……、立派だったわ。貴方は立派だった! 胸を張って生きて。マリーヌのために」


 クレール様がロゼリア様を抱き締める。これからロゼリア様には多大な苦労がつきまとうだろう。


 取潰しになった没落貴族の元令嬢というだけじゃない。

 犯罪者の娘として非ぬ中傷を受けるかもしれない。だからこそ、クレール様は言いたいのだ。


 私達がいる、と。


「クレール様、ありがとう、ございます……。ううっ……、ぅああ……」


 ロゼリア様がクレール様の胸の中で涙を流す。


 夕暮が、冷えないように精一杯、その霊園に光を注いでいた。



   *   *   *


「兄上、あーっ! もう、もう兄上じゃないのかややこしい。いったいどういうことなのですか!?」


 そう憤ってレオンに詰め寄ったのはレオンの弟、カイルであった。


「落ち着いてください、カイル様。どうなさったのですか?」


 一方のレオンは既に平民のため、弟を様呼ばわりする。それが益々カイルには気に入らなかった。


「兄上に様付けなんてされたくありません! それより、どういうことなんですか。知らない内に僕に婚約者ができてるじゃないですか。しかも原因が兄上が廃嫡されたからで、そのお下がりとか……!」


 カイルはまくし立てるように文句を言い続ける。


「そうか、家同士の約束だからそうなるんだな。すまないカイル。そこまでは配慮してなかった」


 レオンが悪かった、と頭を下げる。


「配慮してなかった、じゃないですよ! 兄上は想い人といい感じなのに、僕は政略結婚ですよ!? 僕まだ11歳ですよ!? 初恋だってまだなのに……!」


 カイルがトホホ、とがっくりと肩を落とした。それを見てレオンとミシェルが顔を見合わせ、どうしたものかとクレールに視線を投げる。


 聞き耳を立てていたクレールも責任を感じ、話に割って入った。


「申し訳ありません、カイルさん。全ては、私の招いたことです。謝って済むことではありませんが……」


 クレールがやって来てカイルに頭を下げる。

 一方のカイルはというと。


 すっかり、クレールに見惚れていた。


「綺麗な人……」


 ポツリ呟く。


「「「へっ?」」」


 それを聞いていたレオンやミシェル、野次馬達が素っ頓狂な声を上げた。


「貴方が……、クレール様?」


 潤んだ目でクレールを見つめる。先程の怒りはどこへやら。


 カイルの頭の中はすっかりクレールで頭がいっぱいになっていた。


「え? ええ、私がクレール•ド•ラ•ルミエールですが……」

「ぼ、ぼぼぼ、僕が婚約者のカイル•ド•ルーセルです! そ、その、必ず貴方に相応しい男になってみせますから!」


 カイルはクレールの前で跪くと、その手を取って宣言した。


「え? え、ええ。き、期待していますね?」


 いきなりのことで面くらい、クレールはちょっと照れていた。


「……これは心配する必要なさそうだな」

「……ですね」


 ミシェルとレオンは向き合うとクスクス笑うのだった。


    *   *   *


 ロゼリアが登校すると、クラスメイト達がヒソヒソと囁く。


「どの面下げて学園に残ったのかしらね?」

「罪人の娘のくせに……」


 その囁きは囁きというには声量が大きく、ロゼリアの耳にも容易に届いていた。


 しかしロゼリアは何も言わない。

 これはかつて自分がテアにしたことと同じ。テアは許してくれたが、それでもこれは因果応報なのだと甘んじて受け止めていた。


「聞いたぜ、お前、家がお取り潰しになったんだってな」


 貴族の男子生徒達がロゼリアに突っかかる。顔をニヤけさせ、ロゼリアを完全に見下していた。


 そんな彼らをロゼリアはしばらく見つめると、ふん、と振り返る。


「ええ、否定はしませんわ」


 それだけ答え、席に着いた。


「しませんわ、だってよ。もう貴族でもないのにな」

「おっかし」


 男子達が笑う。

 しかしロゼリアは相手にしない。正直腹立たしいが、堪えていた。


「あら、何がおかしいんですの?」


 そんな男子達をアンネが注意する。その隣には当然テアがいた。


「うげっ!」

「うげっ、とは失礼ですよ! 品がないですね。ロゼリア様の爪の垢でも煎じて飲んだ方がよろしいのでは?」


 アンネがニッコリと嫌味たっぷりに告げる。


「はぁ? ロゼリアはもう貴族じゃねーだろ。様なんていらないだろ」

「あら、何か勘違いなさってます? 私は、ロゼリア様が尊敬できる方だから様を付けてますの。あ•な•た•た•ち•と違ってね!」


 アンネが男子達を指差し、ふん、と蔑むような目で嘲笑する。


「あぐっ……!」


 アンネの迫力に男子達はスゴスゴと退散していった。


「ありがとうございます、アンネローゼ様」


 ロゼリアが立ち上がり、頭を下げる。


「……アンネと、お呼びください。私だけ、仲間はずれは嫌です」


 アンネはそっぽを向いて頬を膨らます。その頬は少し紅潮し、照れているのが丸わかりだった。


「ふふっ、わかりましたわ、アンネ様」


 ロゼリアがクスクス笑う。

 それに釣られ、アンネとテアもクスクスと笑うのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ