表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
救われないラスボスに転生したので運命を変えて幸せになります  作者: まにゅまにゅ
第1章 ラスボス廃棄少女になった私

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/34

7 メルデの村で 3

「テア! やっと見つけた。さぁ一緒に村へ帰ろう」


 そこにいたのはジル?

 随分大人びている。というより大人だ。


「ごめんね、もう遅いの。私ね、たくさん人を殺したの。逆らいたくても逆らえないんだ⋯⋯。私、奴隷だから」


 なに?

 私はいったい何を言っているの!?


「奴隷? そんなもん知るか! もう何も言わなくていい。一緒に帰ろう」


 ジルが懸命に訴える。


「何をしている。お前は暗殺者だ。顔をみられたら殺せと教えたはずだ!」


 ふいに声が聞こえた。

 命令したのは軍服のような格好の男。


「はい、ご主人様⋯⋯」


 だめ!

 やめて⋯⋯、やめて⋯⋯!


 私の手がジルの首を掴む。


「テ⋯⋯ア⋯⋯!」

「爆ぜろ⋯⋯」


 抑揚のない声。

 その瞬間ジルの首が爆ぜた。


「あははははは!」


 私の手の中にジルの首はなかった。あるのは胴体のみ。


 私は泣いていた。

 泣きながら笑っていた。

 血の涙を流し、いつまでも、いつまでも……。




「うわっ!!」


 思わず飛び起きる。

 鳥の鳴く声。

 窓から入ってくる朝日。


「夢⋯⋯?」


 服は汗で濡れていた。


 そっと頬を撫でる。大粒の涙の跡。胸の奥が早鐘みたいに脈打つ。


 それにしてもリアルな夢だった。

 そうだ、あれはジルがテアを追いかけたけど殺してしまうシーンだ。


 そしてそれからだ、テアの心が完全に壊れ始めるのは。



 なんとなく胸がざわつく。

 間違いなくあのジルはこの村のジルだ。


 私は一抹の不安を覚えながらも朝の畑仕事を手伝うため身体を起こした。





 そんな不安を抱えたまま、それでも私は村での暮らしを続けた。

 それから五日が経った。





「テアちゃんて髪綺麗だよね。どうやって洗っているの?」

「うん、お米の研ぎ汁だよ?」


 村の女の子が私の髪を触りながら聞いてくる。


「え、あれって髪の毛洗うのに使えるんだ」


 

 村の女の子達ともすっかり仲良くなった。

 そのせいか、たまにジルが不機嫌そうにしている気がする。


「うん、使えるよ。研ぎ汁は2番のものを薄めて使うの。お顔も洗えるし、大根も洗えるし、お掃除にも使えるんだよ」

「えー、知らなかったよ。いつも捨ててた。だからテアちゃん綺麗なんだね」

「テアちゃんの場合元がいいから。ジルの奴絶対テアちゃんにほの字だよね」

「えー、まさかぁ」


 うーん、悪いけどジルはそういうのじゃない。私にはレオン様という絶対的な推しがいるのだ。


「これは脈ナシね。ジル憐れ」

「きゃははははっ」


 私の態度で脈ナシに気づき、皆がそれをネタに笑う。


 この時間がとても好きだ。


「おーい、テアー」


 だべっていたらジル達がやってきた。女の子が集まっている所に男子が来るのは珍しくない。


「なに、ジル。みんなを引き連れて」

「いや、昼飯手伝って欲しいそうだから呼びに来たんだが」

「あ、そうなんだ。て、ジル膝擦りむいてるじゃない」


 思わず能力を使おうと白い手を出した。

 いけない、こんな力普通じゃないんだ。使っちゃダメ!


 ここに居られなくなっちゃう。


 あれ?

 今私なんて思った?


「平気だよこれくらい」

「もう、後で水で洗いなよ」

「唾付けときゃ治る」


 ジルがぶっきらぼうに答える。


「まったくもう、じゃみんな後でね」

「うん、また後でねー」


 みんなに手を振りジルと一緒に家へ向かって走る。途中畑仕事をしている村人たちに手を振り、挨拶をしながら戻った。


 テアちゃん、と名前で呼ばれるのにもすっかり慣れちゃったな。


 そう、まるでそれが当たり前にさえ思えてしまった。


「ただいまー。手洗って来るね」

「ありがとねー。ジルはその辺で休んでなー」


 家に戻り、入り口から声をかける。手を洗う水はかめ壷に入っており、柄杓ですくってぱしゃぱしゃ洗う。


「マエルさん、手伝います」

「ありがとね。んじゃトマトスープ作っておくれよ」

「はい」


 熟れたトマトを煮詰め、玉ねぎと野うさぎの肉を入れる。

 しばらく煮込むと、いい匂いがしてきた。

 

 後はパンと生野菜だ。果物もリンゴが少しある。それらをテーブルに並べ、昼食の準備が完了した。


「「「いただきまーす」」」


  3人でテーブルを囲み、手を合わせる。


「うんまっ」

「うん、玉ねぎと人参の甘味は偉大よね」

「テアちゃん料理上手だねぇ。若いのに感心だよ」


 マエルさんが楽しそうに私を褒める。



 楽しい。

 温かい料理と、誰かと囲む食卓。

 こんな時間を、私はずっと忘れていた気がした。


「そうだよな、オマケに物知りだし」

「そうだねぇ、可愛いし。今じゃ村1番の美人さんなんて言われてるんだよ?」

「そんな、私なんて」


 さすがに照れる。


「これなら何時でもお嫁に来ても大丈夫だねぇ」

「ごふっ!!」


 ゲホゲホ……。

 むせちゃったよ……。


「もう、マエルさん変なこと言わないでください。後そこ、あんたまで照れないの」

「ジル……、強く生きるんだよ?」


 マエルさんがジルに憐れみの目を向ける。

 思わず私は軽く噴き出した。


 私の態度に照れがないせいか脈ナシなのがバレたようだ。ジルはそういうのじゃない。ただ私にはレオン様という推しがいるのだ。


  もし、私がテアのままだったら彼のことを好きになったのだろうか。ずっとここにいる選択をしたのだろうか……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ