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救われないラスボスに転生したので運命を変えて幸せになります  作者: まにゅまにゅ
第1章 ラスボス廃棄少女になった私

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6 メルデの村で 2

「質素な部屋だけどここを使っておくれ」


  マエルさんに案内された部屋は殺風景な部屋だったけど、夜露がしのげれば十分だ。


「ありがとうございます。でも私お金が……」

「要らないよ。そうだね、その代わり農作業でも手伝って貰おうかね」

「はい、そのくらいはさせてください」


 自然と笑顔がこぼれた。


「じゃあ早速手伝ってもらおうかね。夕飯も出してあげるからちゃんと食べるんだよ?」

「ありがとうございます」

「なら着替えないとね。その格好で農作業は無理だからね」


 マエルさんは別の部屋へ行き、タンスから衣類を出している。持ってきたのはもんぺと長袖の服だ。


「ありがとうございます」


 私は服を受け取り、着替え始めた。すると、


「ただいまー」


  男の子の声がした。ドタドタと廊下を走る音がする。その音はどんどん近づいてきた。


「ジル、 ここから先は入っちゃダメだよ!」


 マエルさんがキツイ口調で男の子に言い聞かせている。今のうちに着替えてしまおう。


「えー、なんでだよ? いーじゃんケチ。お客さんが来てるんだろ?」

「あ、こら!」


 今まさに替えの服を着ている真っ最中、その男の子と目があった。

 私、上ハダカだよ?


「キ……、キャーーーーッ!!」


 何故か急激に強い羞恥を感じ、慌てて胸を隠して声をあげる。


「わ、悪ぃ!」


 私が大声を出すと、ジルって男の子は慌てて後ろを向く。


 ううっ、子供の身体とはいえ、凄く恥ずかしい⋯⋯。


「こらジル! 入るな、って言っただろ!」

「ごめんよ母ちゃん」


 マエルさんがジルの頭にゲンコツを食らわせる。ジルはうずくまったまま謝罪した。


「ったく、この子は。嫁入り前の娘の裸を見るんじゃないよ。テアちゃん、後でこいつひっぱたいてやんな」

「いえ、大丈夫です……」


 少しひくつきながらも笑顔を作った。





「よし、んじゃ俺が手本を見せてやるよ」


  私が今いる場所はマエルさんとこの畑だ。で、覗いたお詫びにジルが私に畑仕事を教えることになった。


「いいか、赤く熟してしまうと鳥に食われちまうからな。このトマトは少し緑色が残っていてもこのくらい赤くなったら取っていいんだ」

「うん、わかった」


 ジルが取ったトマトと同程度の赤さのものを選んでもいでいく。結構数があるな。


「おー上手いじゃん。その調子だな」


 トマトを一通り詰み終わり、次はキュウリだ。


 キュウリは大きさも形もバラバラだ。しかしこんなにぐにゃぐにゃ曲がるもんなんだね。


「キュウリもまぁ、こんくらいの大きさで取っていいわ。これ直ぐに大きくなるからな。明日には驚くほど大きくなってるぞ」

「へー、そうなんだ。ほとんど水だからかな?」


「そうなんじゃね? 知らんけど。それよりテア、お前いくつだよ」

「私? 9歳だよ」

「へー、9歳か。そうか、2つ下か。そうか……」


 何納得してんだろ。


「ほら」

「え?」


 ジルが無造作にトマトを掴み、私に差し出した。

 なぜか私からは顔を隠すように向こうを向いている。


「あ、ありがと」


 素直にトマトを受け取ると、私はすかさずかぶりついた。


 うん、とても甘い。


「お前ずっとここにいるのか?」


 ジルは向こうを向いたままだ。


「いないよ? 明日には出るつもり」


 私がそう答えるとジルは慌てたようにこっちを向き、早口でまくし立てた。


「いや、ダメだろそれは! 母ちゃんも言ってたはずだぞ。なんならここにずっと居ていいからな?」


 いや、ずっといたらレオン様に会えない。それは困る。


「さすがにそれは迷惑でしょ。私なら大丈夫。それに行かなきゃいけないから」

「迷惑じゃねーって。それにどこへ行くんだよ」


 どこへ……?


「アルノーブルまで?」

「知らない地名だな。どこだよそこ」


 ジルが不機嫌そうに眉をひそめる。


「確か国境付近」

「国境付近って色々あるだろ。そこへ行くならまず近くのウォルノーツまで行かないとダメだな。そこなら大きい街だからアルノーブルへ行く方法もわかるだろうけどさ」


 そうなると次はウォルノーツか。


「ウォルノーツへはどうやって行くの?」

「お前の足だと2日かかる。あきらめろ」


 ぷいっ、とそっぽを向く。私はぶすーっ、と口を尖らせ、ジト目でジルを見た。


「そんな顔しても教えてやんね。とにかく今はここにいろ。道中魔物だっているんだからな」

「うん、わかった」





 その日の夕食には私とジルが採った野菜を使った料理が出てきた。


「美味しい!」

「どうだ、美味いだろ?」


 料理の美味しさに私が感嘆の声をあげる。するとジルがへへん、と鼻をこすり胸を張っていた。


「気に入ったかい? まだあるよ、たくさんお食べ。子供はたくさん食べなきゃね」


 まだ空になっていないお皿にマエルさんが料理を追加してくれた。


 温かい⋯⋯。


 こうして誰かと食卓を囲むのはいつ以来だろう⋯⋯。


 ――そうだ、テアには確かにあった。


 ――たくましいお父さん。

 そして優しい――


「ありがとう、お母さん。あ⋯⋯!」


 言った瞬間自分でも驚いた。

 でも間違えたとは思わなかった。


 ほろり。


 突然涙がこぼれた。

 この記憶は蒔田莉央のものじゃない。

 テアの記憶だ。


 次々と脳裏に甦る記憶。

 家族との食卓。

 母の胸で泣いた記憶。

 それらは愛おしき記憶の欠片。

 二度と戻らないのに、欲しかったもの。


「う、うあああ⋯⋯!」


 溢れ出した涙が止まらなかった。

 悲しい記憶が私の感情を支配する。


 ――苦しい。


 なんでこんなに苦しいの?


「いいんだよ、テア。お母さんと呼んでくれて」


 泣き止まない私をマエルさんが抱きしめ、そっと頭を撫でてくれた。


 それがとても温かくて、

 そして優しかった。


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