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救われないラスボスに転生したので運命を変えて幸せになります  作者: まにゅまにゅ
第3章 決闘の果てに

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77 ロゼリアとマリーヌ

 氷で閉ざされたその扉を開ける。


「マリーヌお姉様……」


 氷で覆われた部屋。その奥のベッドの上。凍りついたミシェル殿下を愛おしそうに撫でるマリーヌがいた。


「ロゼリア……。貴方まで私の邪魔をするの?」


 なんて冷たい目……。


「お姉様! 目を覚ましてくださいませ。そんなことをしても、ミシェル殿下は……!」

「じゃあどうすればいいの? どうやったらミシェルは私に振り向いてくれたの? ロゼリア、貴方なら私の苦しみがわかるはずよ!」


 マリーヌが叫ぶ。

 そうか、これがマリーヌの本音。振り向いてもらえない想いを、奴等に付け込まれて……!


「ええ、確かに好きな人に振り向いてもらえないのは苦しいですわ。その苦しみに負けて、私は過ちを犯しましたわ……」


 ロゼリア様は視線を落とす。自分にはマリーヌを悪く言う資格はないと思っているのだろう。


 でも、私はそうは思わない。


「そうでしょう!? だから私は貴方のために力を貸したというのに。そんな私を裏切るのね、ロゼリア」


 マリーヌはまるで演じるように訴える。どこか自己陶酔的なところがあるのかもしれない。


「言ったはずですわ。過ちを犯したと……。それでは、何も手に入らない! お願いお姉様、正気に戻ってくださいまし!」

「過ち? 私はこうしてミシェルを手に入れたわ。このままずっと、私はミシェルと愛を語らうの」


 ロゼリア様の懸命の訴え。

 それをマリーヌは全く相手にしていない様子だ。


 届くのだろうか、ロゼリア様の気持ちは。


「お姉様、それではミシェル殿下は笑ってくれませんわ……。お姉様聞いて! 確かにレオン様は私には振り向いてくれませんでしたわ。それはクレール様も同じ。それでも、私もクレール様も前を向いて生きていこうと決心しましたの! 2人なら乗り越えられるからって。だからお姉様も一緒に乗り越えましょう、3人なら、きっと乗り越えられますわ……!」


 ロゼリア様が思いの丈をマリーヌにぶつける。私やお姉様に口を挟む資格はない。


 だから、私は2人のやり取りを最後まで見届けると決めたのだ。


「ロゼリア……、私はまだ、終わってなどいませんことよ! ミシェルは誰にも渡さない……、私だけのものよ!」


 ロゼリアが無数の青い蝶を生み出す。


「ロゼリアさん。説得は失敗よ、先ずはミシェル殿下を救うわ」


 クレール様がロゼリア様の肩に手を置く。


「わかって……、いますわ!」


 ロゼリア様が肩を震わせ答えた。ミシェル殿下を救えば、ミシェル殿下の言葉なら届くかもしれない。


 もう、それに賭けるしかないの?


「さぁ、凍りつきなさい。氷に抱かれ眠るがいい、氷結の子守唄(フリーズ•ララバイ)!」

「もうそれは通じないわ! 猛き風の流れよ、全てを押し返す壁となりたまえ! 風壁(ウィンド•ウォール)!」


 強風が吹き荒れ、青い蝶を押し返す。しかしマリーヌは余裕の笑みさえ浮かべていた。


「お馬鹿さん、魔力は私の方が圧倒的に上回っているのよ? 猛き風の流れよ、全てを押し返す壁となりたまえ、風壁(ウィンド•ウォール)


 マリーヌが強風の魔法を起こす。その風は暴風となり、室内に吹き荒れた。そしてクレール様の風を押し返す。


堅牢なる盾(ハイプロテクション)!」


 お姉様が魔法の盾を張る。目一杯大きく張られた盾は、青い蝶に触れて凍りついた。


 それと同時に風が止む。


 部屋の中にできた氷の壁が仕切りとなり、部屋を分断したからだ。


「こ、これでは……」

「ミシェル様を救えませんわね」


 出来上がった氷の壁は、結果的にマリーヌとミシェル殿下を閉じ込めてしまった。


「これ、溶かさないと無理ね」

「仕方がないわ。そうしないと私達が氷の彫像になるとこでしたし」


 うん、こればっかりは仕方がない。ここは私の炎で溶かすしかない。


「氷の壁を溶かします。離れてください」

「頼むわね」


 皆に室外で待機してもらう。

 私は紅い蝶を呼び寄せた。氷の厚さがわからないけど、かなりの熱量が必要なはずだ。


「終焉と為せ、終わる世界(ワールドエンド)!」


 本気じゃないのを含めれば3回目。後1回が私の限界だろう。急だったため、魔力回復のポーションも用意していない。


 紅い蝶が地獄の業火となり、氷の壁を溶かす。次いでに辺りの氷も粗方溶けた。


 その先ではマリーヌが変わらぬ笑みを湛えている。


「クレール、貴方ミシェル殿下を殺すつもり? そんな風でミシェル殿下が飛んでいったら、壊れちゃうじゃない」

「うっ……!」


 そうだ、お互いの強風魔法で部屋の中は風が吹き荒れたはず。下手をすれば凍りついたミシェル様が飛ばされ、壊れたかもしれない。


「全く、私の大事なミシェルが壊れたらどうするのかしら。攻撃魔法なんか使ったら、巻き込んじゃうじゃない」


 マリーヌの指摘に皆が固まる。


「これでは……」

「迂闊に手が出せないわね」


 クレール様もお姉様も良い考えが浮かばないようだ。


「勝てないと理解したかしら? 私に歯向かうなんて、愚かな妹。それでも貴方は私の可愛い妹よ、ロゼリア」

「お姉様……、じゃあ!」


 なんとか説得を、ロゼリア様はそう思ったに違いない。

 しかし、マリーヌの口から出た言葉は、そんなロゼリア様をさらに苦しめた。


「だから、お友達諸共氷漬けにしてあげるわ。私の氷の中で、貴方も愛してあげるわロゼリア!」


 再び青い蝶が舞う。


 いったいどうすれば……!


「こうなったら一か八かよ! 全員突撃しなさい! とにかくミシェル様を奪還して逃げるわよ!」

「「「ええっ!?」」」


 クレール様らしからぬ一言。

 皆がクレール様を見た。


 クレール様が頷く。

 きっと何かあるんだ、方法が。


 皆が頷くと、クレール様を先頭に私達は走った。

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