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救われないラスボスに転生したので運命を変えて幸せになります  作者: まにゅまにゅ
第3章 決闘の果てに

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76 葬送《フューネラル》

「おやおや、来客ですかな?」


 私達が光景に唖然としていると、2階から声が聞こえた。

 そこにいたのは見覚えのある顔。そうだ、昔ウォルノーツの領主邸で見たんだ。


「お父様! これはどういうことですの。みんなに何をしたんですの!?」


 確かオルクス•ド•エンゾ。

 ロゼリア様のお父上だ。


「ドライの奴はどうした? せっかく使用人を集めて実験をしたというにまったく」

「実験? 実験ってなんですの?」


 ……私は知っている。

 これが、なんなのか。


「人魔……、融合実験……」


 忌々しい。

 長らく忘れていた。ここがあのゲームの中の世界だって。


「ほう、よく知ってますな。その通り、ここにいるのは人と悪魔の融合体。その失敗作ですよ」


 手軽に増やせる兵力を求め、ゾーア教団が行った実験だ。人を人とも思わない、作中でも一二を争う胸糞展開。その中心にいたのがドライだったはず。


「元に……、元に戻しなさいこの外道!」


 あのクレール様がキレている。無理もない、あんなモノを見せられたら誰だって……。


「無理ですな。のりでくっつけたのとは違うのです。あなた、エールを元の水と麦に戻せますか? つまりはそういうことです」


 オルクスは下卑た嗤いを浮かべ、目を細める。その実験に家の使用人を使うなんて……。


「オルクス、降りて来い! 叩き斬ってやる!」

「お断りですな。失敗作の耐用実験にと騎士団が来るのを待っていましたが、貴方がたでもいいでしょう」


 レオン様が剣を向ける。

 オルクスはどこ吹く風で髭を弄くり、シシシ、と笑っていた。


「やれ」


 その命令で使用人達が動く。


「お……嬢……様……!」

「お願……い……、ころ、し……て」


 使用人達は助けを求めるように手を伸ばす。しかし身体から生えた悪魔の腕はその手に炎を生み出していた。


「今……、楽にして差し上げますわ……! 闇の焔(ヘルブレイズ)


 ロゼリア様が俯いたまま、魔法を発動させる。闇の炎が立ち昇るとたちまちメイドを焼き尽くした。


「どうして……、どうしてそんな酷いことができますの!?」


 ロゼリア様は泣いていた。

 魔法を放った手が震えている。

 それでも、ロゼリア様の言葉はオルクスには響かないのね……。


「酷い? 何を言っているロゼリア。このわしの役に立てたのだ、光栄に思ってるはずだ。それが忠義というものだろう?」


 さも当然、とオルクスが宣う。

 こいつはダメだ。

 ロゼリア様、ごめんなさい。


 この人は……、救えない!


「オルクス! 私は貴方を許しません! 終焉と為せ、終わる世界(ワールドエンド)!」


 紅い蝶が業火となりオルクス目掛けて飛び立つ。


「ギャギャギャギャ!」


 その業火に元メイド数人が自ら飛び込み、炎に巻かれて床に落ちた。凍りついたカーペットの氷が溶け、火は程なくして鎮火する。


「素晴らしい忠義です!」


 オルクスが拍手をする。自分の為に犠牲になった元メイドを褒め、満面の笑みを浮かべていた。


 無理矢理言うことを聞かせてるだけのくせに……!


「見ていられないわ。テア、せめて神の御元に送って差し上げましょう」

「そうですね、お姉様……」


 白い蝶の翅を纏う。

 後は、お姉様の浄滅(アニヒレーション)を私が拡散させればいい。


「あ……、が……!」


 ボロリ……。


 元使用人達の身体が崩れゆく。

 適合しなかったために身体の組成を維持できなくなったんだ……。


「穢されし魂に安寧を、報われぬ嘆きに天使の涙を、葬送(フューネラル)……」


 これは……、鎮魂の神聖魔法。

 なんて温かい光……。


 その光を翅に受ける。

 伝わる。お姉様の嘆きが。


 そうか、この翅は、人の想いすらも蝶にして飛ばせるんだ……。


 元使用人達は苦しそうにその手を伸ばす。救いを求め、“死”という安寧を望んでるんだ……。


「もう、おやすみ……!」


 魂の安寧を願い、蝶達が羽ばたく。蝶に包まれた元使用人達が光に包まれた。


 その表情に苦痛はなく、安らいだ、小さな笑みさえ湛えている。


『ありが……とう……』


 彼らの声が、冷えた空気の中に溶けていった。


「ふーむ、途中で自壊したようですな。所詮は失敗作か。有意義な実験じゃった、ではな」

「待て、オルクス!」


 逃げ足はっや!


 レオン様が止める間もなくオルクスはすぐに姿を消した。


「大丈夫、ロゼリア?」

「ええ、平気、ですわ……。ありがとうございますディアーヌ様、テア様。これであの子達も、天国へ行くことができましたわ……」


 ……全然平気じゃないくせに。

 でも、ロゼリア様は強い人だ。すぐに涙を拭き、顔を上げる。


「まだ、私にはやらないといけないことがありますの。まだ、終わってませんわ」


 ロゼリア様は一室の扉を見つめ、顔を引き締めた。


 本当に、強い人だと思う。

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