75 護る者、斬る者
「あああああっ!!」
「ロゼリア!」
お姉様がロゼリア様の救護に向かう。
「聖女を実験体というのも乙かもしれませんねぇ」
レドウィックが再び槍を飛ばす。
「堅牢なる盾!」
お姉様が強固な盾で迎え撃つ。
ギィン!
槍は角度を変え後ろへ逸れる。
上手い!
弾き返すんじゃなく、角度を調整して後ろに逸らした!
「ほほう、見事見事。では、今度はどうですか?」
無数の銀の蝶が槍へと姿を変える。
――まずい!
「水球!」
「凍結!」
クレール様の大きな水球がロゼリア様とお姉様の前に出現する。それをお姉様が氷結魔法で凍らせた。
「ほらほらほらほらほら!」
レドウィックが20本程の槍を射出させる。それらは凍らせた水球に阻まれ、角度を変えてあちこちに飛んでいった。
「テア様!」
ロゼリア?
そうか!
魔神の手4本で凍った水球をキャッチ。そのままレドウィックに向かい投げつけた。
「ちっ!」
レドウィックは素早い動きで氷球を避ける。氷球は地面に食い込み、土砂が跳ねた。
「おおおおおおっ!」
地上に降りていたレオン様が一気に間合いを詰める。振り下ろされた剣を槍で受け止めた。
「ぬうううん!」
槍を振り抜き、レオン様が後ろに跳んだ。それを追撃するように槍を投げつける。
槍はレオン様の頬を掠め、後ろへ逸れた。
「なんてパワーだ」
レオン様も攻めあぐねている。
――殺さないようにと加減していては死ぬぞ?
お前以外の誰かが、な。
確かに……。
なら終わらせよう。
この手を、穢すことになっても!
「破滅へのプレリュード……」
白い翅を紅い翅へと変える。
こうなったときの終わる世界の威力は先程のとは桁が違う。
無数の紅い蝶が生まれ、レドウィックに向かって飛び立つ。
レドウィックは銀の蝶を増やしていった。
「終焉と為せ、終わる世界!」
紅い蝶は地獄の業火となり、レドウィックを襲う。
「致し方なしか」
なんと、レドウィックは己の身体を銀の蝶で覆い、突撃してきた。
そして、レドウィックが地獄の業火を突き抜ける。
うそっ!?
確かにそれなら炎に触れるのは一瞬で済む。でも普通やる!?
残った銀の蝶が槍へと姿を変える。
魔神の手!――
間一髪!
魔神の手で攻撃を逸らし、私は左に転がる。
「やるな」
紅い蝶は全て燃えてしまった。家が氷だったおかげで、火事にならなかったのは幸いか。
だがレドウィックも無傷ではない。そこかしこに火傷を負っている。
多少はダメージがあったのか、私は態勢を整える間があった。
「ふぅ、痛いな。これは火傷というやつだな」
だから無表情で言わないで!
不気味すぎるから。
「テア、俺がやる。君は下がって」
「レオン様、でも……!」
「白い蝶で堅牢なる盾を用意してくれ。あちこちにな」
レオン様が剣を構える。
あちこちに……?
「ゆくぞ! 身体強化!」
レオン様が前に出る。身体強化をかけて一足飛び。しかし真っ直ぐ向かわず斜め方向だ。
そういうことか!
「堅牢なる盾!」
2人の周りを白い蝶が囲う。そして魔法が発動。2人の周りのそこかしこに小さな魔法の盾が生まれた。
念のためレオン様の側にも蝶を侍らせる。
「全方位射出用意……」
レドウィックが自分の周りを槍で覆う。
あれじゃ近づけない!
レオン様が後ろに飛び、魔法の盾を蹴る。
レオン様が何をするかわかった!
「滑空!」
レオン様が1本の槍となり、レドウィックに真っ直ぐ突撃する。その周りを白い蝶が堅牢なる盾で覆った。
「射出!」
無数の槍が飛び出す。
私も堅牢なる盾で槍を防ぐ。
「ぐはあっ!?」
レオン様の剣が無数の槍をかい潜り、レドウィックの腹を貫いた。
まさか身体を真っ直ぐにして当たる面積を減らすなんて……。
正直無茶だと思う。
着地したレオン様が剣を抜く。
そして――
レドウィックの、首を跳ねた。
レドウィックが膝をつく。
そして、前のめりに倒れた。
言葉を、発することなく。
レオン様が剣をひゅん、と振り、こびりついた血を散らす。そしてハンカチで拭うと、鞘にしまった。
「みんな、無事か?」
「は、はい。無事です……、っていうかレオン様は大丈夫なのですか!?」
堅牢なる盾で頭を守んなきゃ死ぬとこだったと思う。
「まぁな。テア、こいつのことは気にしなくていい。こいつは、救えない」
レオン様……。
「そうそう、気にしなくていいわ。それより中に入るわよ。レオン、先頭はよろしくね」
お姉様も。私がどう思ってたかお見通しらしい。
「ああ、任せろ」
レオン様が扉を開ける。
その先にいたのは――
メイド?
それに執事さん?
「なんて酷いことを……!」
「あ、あなた達……!」
その光景を見た瞬間、クレール様が眉間にシワを寄せる。
ロゼリア様は口元を両手で覆い、膝をついた。
そこにいたのは――
まるで人と悪魔を無理矢理接合させたような、変わり果てた使用人達だった。




