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救われないラスボスに転生したので運命を変えて幸せになります  作者: まにゅまにゅ
第3章 決闘の果てに

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74 銀の魔神

「なるほど、その蝶から槍が飛び出てくるのですわね。なかなか厄介ですわ……」


 確かに。あの蝶に囲まれたら一巻の終わりだ。逃げ場もなくあの針に串刺しにされてしまう。


「そうですわね。でもあの蝶には致命的な欠点がありますね」


 クレール様?

 口元に笑みを浮かべて余裕さえ感じる。蝶の欠点、ということは私にも当てはまるということだ。


「さぁ、死になさい!」


 銀色の蝶が私達に迫る。


「猛き風の流れよ、全てを押し返す壁となりたまえ! 風壁(ウィンド•ウォール)!」


 クレール様が前に出て強風の魔法を発動させる。

 その風に押され、銀の蝶達が吹き飛ばされた。


「なんですとぉっ!?」


 ドライが強風に耐えるため身を屈める。まさかこんな方法で蝶を吹き飛ばすなんて!


「今だ!」


 レオン様が地上に降り、ドライに斬りかかる。


「馬鹿め!」


 突如地中から槍が飛び出す。

 蝶をまだ地中に隠していた!?


「くっ!」


 槍が、レオン様の横腹を貫く。


「レオン様!」

「ははははは! 死ね!」


 私は急ぎ癒神の手を飛ばし、距離も詰める。

 ドライは銀の蝶を差し向けた。


「ぬうっ!」


 レオン様が無理矢理槍を引き抜くと急ぎ後ろへ跳ぶ。


堅牢なる盾(ハイプロテクション)!」


 レオン様の前に出て先に安全を確保!


「癒せ!」


 癒神の手でレオン様の傷を癒す。


「すまん、助かる……」

「レオン様、少し休んでてください」

「……すまん」


 レオン様が再び空に上がる。あの銀の蝶は本当に厄介かも。


「ちっ、殺し損ねましたか。しかし離れられると風で蝶が飛ばされる、か。面倒ですねぇ……」


 ドライは堅牢なる盾(ハイプロテクション)を攻撃することなく手を止め、様子を見ている。


 そういえば、いつの間にか右手首の血が止まっている。治癒魔法を使った形跡はない。


「滅亡へのプレリュード……」


 とにかく先ずはあの銀色の蝶をなんとかしよう。とりあえず白い翅のまま紅い蝶を呼び寄せた。


 威力は落ちるけど、それでも殺傷力は高い。っていうか、人の耐えれれる温度じゃない。


「確か終わる世界(ワールドエンド)と言いましたか……。させませんよぉっ!」


 銀色の蝶と紅い蝶がぶつかり合う。銀色の蝶からは槍が飛び出す。だけどそれはすぐに紅い蝶の熱で溶けていった。


 強大な熱エネルギーが私とドライの間に生まれ、肌がひりつく。蒸気まで発生し、前がも見えない。


 そして突如2本の銀色の腕が蒸気の中から姿を見せる。


「ぐえっ……!」


 躱す間もなくその腕が私の喉を掴み上げた。


「ぐ……、え……!」


 ま、まずい、い、息が……!


「なにしてるんですの! 闇の矢(ダークアロー)!」


 銀の腕に闇の矢が降り注ぐ。

 一瞬、締め付けが緩んだ。

 魔神の手を呼び寄せ、銀色の腕を引き剥がす。


「ゲホッ、ゲホッ……!」


 咳き込みながら距離を取る。飛べるって便利だ。


「貴方にも喰らわせてやりますわ闇の矢(ダークアロー)!」

「ふむ……」


 ロゼリア様がドライにも矢を飛ばす。しかしそれは無数の槍により容易く弾かれた。


「あなた、もしかして私の“腕”が見えたのですか?」

「なんのことですの?」


 あ、そうか。

 ロゼリア様は禍蛇の媒体になった影響で視えるんだ。


 っていうよりドライも“腕”を持ってたのか。油断したよ。


「ふむ、実験体として是非確保したいですねぇ。全員半殺しにしてモルモットにして差し上げましょう!」


 ドライが歯を見せ、ニンマリと嗤った。


「随分余裕ね。でももうあなた詰んでるわ」


 ドライの頭上には既に巨大な水球(ウォーターボール)が配備されていた。クレール様お得意の水魔法。これなら……!


「おやおや、随分とまたたくさんの水玉ですね。ですが、そんなものでどうしようと?」


 ドライは随分と余裕なようだ。銀色の蝶を呼び寄せ、水球を割りに行く。


「かかりましたわね、闇の焔(ヘルブレイズ)!」


 闇の火柱が空中で生まれ、水球が割れた。それらは水となり、ドライとその周辺に降り注ぐ。


 ただしその水は――


「うわちぃぃいぃぃっっ!!」


 ドライが熱湯を被り、絶叫する。これは全身大やけどかな?


「さ、早く逃げて手当てしないと、大変なことになりましてよ?」


 ロゼリア様がしてやったり、と得意げにウィンクする。


「こんのクソガキどもがぁっ!!」


 ドライが目を血走らせ、激怒する。


「私を怒らせたな?」


 すん、とまた無表情になる。

 なにこの違和感?


 まるで、別人に切り替わったのかと思えるほどだ。


「だーーーっ、ムカつくムカつくムカつく! わーったよ、テメーに任せてやるよレドウィック!」


 レドウィック……?

 誰……?


 ドライはまたもいきなりキレ散らかし、地団駄を踏む。

 な、なんなの本当に?


 とか思ってたらドライが動きを止めた。


 空気が――変わった。


 なに、この威圧感!?


 まさか!


「失礼したお嬢さん方。私の名はレドウィック。そう、私はドライという男の中に生まれた魔神」


 レドウィックと名乗る男が貴族式の礼をした。


 私の頭に警鐘が鳴る。


 ――まずいのう。妾と変わるか?


 ヤーヌス?

 それほどこいつは危険ってこと!?


「先ずは、そこの小さいお嬢様からにしましょうか」


 レドウィックが銀の蝶を呼び寄せると、それはすぐに槍へと変わる。


「ロゼリア!」

魔法の盾(プロテクション)!」


 槍が射出される。

 槍は魔法の盾を容易く貫き、ロゼリアの右肩に突き刺さった。

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