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救われないラスボスに転生したので運命を変えて幸せになります  作者: まにゅまにゅ
第3章 決闘の果てに

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72 誰も見捨てない

「すまないが、もうエンゾ伯爵家は取り潰しになるだろう」


 ミシェル殿下誘拐事件。

 そう名付けられたこの事件のため高等部の授業は中止、初等部の私とロゼリア様も学園長室に呼び出されていた。


「覚悟は……、できてますわ」


 ロゼリア様は俯き、力なく答える。王族の、しかも第一王子を誘拐したのである。家のお取り潰しはこの場合、一家全員がその責を負う。


「待ってください! ロゼリアさんに罪はありません。彼女は姉を止めようとしたのです!」


 クレール様がロゼリア様の助命を嘆願する。


「わかっている。陛下がどのように裁くかによるが、助命の嘆願は私も行おう」

「私もお父様に働きかけてみます」


 学園長が働きかけを約束すると、クレール様も働きかけを約束した。


「すまない、今の俺では……」

「ダメです」


 レオン様?

 気持ちは理解しますけど、それは禁句です。

 ほら、クレール様が罰の悪そうな顔をなさってるじゃないですか。


「す、すまない、いや、申し訳ありません」

「ルーセル辺境伯にはお父様にお願いしてみます。心配いらないわ。それよりロゼリアさん、あなたはどうしたい?」


 お姉様がロゼリア様に問う。

 このまま騎士団に任せれば、陛下の裁きを待つまでもなく排除されるだろう。


 捕縛して法の下に、など不可能に違いない。


「私は……、お姉様を説得したいですわ。お姉様は確かに罪を犯しましたわ。でも、それでもマリーヌお姉様は私にとって優しいお姉様だった! 私はゾーア教団が憎い! 私からお姉様を奪い、家族を壊したあいつらを許すなんてできませんわ!」


 ロゼリア様は感情を昂ぶらせ、思いの丈を吐露する。その涙ながらの訴えに私達は何も言えなかった。


「その気持ちはわかる。だが学園の長としてそれを許すことはできん。くれぐれも、早まった真似はしないように」


 しかしそんなロゼリア様に、いや私達全員に学園長が釘を差す。


 でもわかってる。

 きっと、みんな考えてることは同じだ。


 しかし、それを見透かしたかのように騎士団がノックも無しに入って来た。


「ロゼリア•ド•エンゾ! ミシェル殿下誘拐に関与した疑いで貴様を拘束する!」


 騎士団が書状を持ってゾロゾロと入って来る。ディアーヌお姉様が学園長を睨んだ。


「諸君、くれぐれも、《《早まった真似をしてくれるなよ》》?」


 学園長は全く動じず、むしろどこかニヤけていた。


 これって……、そういうことか!


「心配、要りませんわ。私は逃げも隠れもいたしません」


 ロゼリア様が拳を握りしめながら一步前へ出た。そんなロゼリア様の腕をクレール様が掴む。


「ええ、そうねロゼリアさん。あなたはそういう人だわ。そう、これは《《逃げではありませんものね》》」


 その一言に皆が目で分かり合う。


「ええ、これは……」

「戦略的撤退よ! 穴掘り(ディギングホール)!」


 クレール様の魔法でバリッ、と瞬時に床が抜ける。私は瞬時に白い蝶の翅をまとった。


 下の階に降りると、誰もいない教室だった。

 ディアーヌお姉様が窓を開ける。


「さぁ、行くわよみんな!」

「あの、皆さん本当によろしいんですの……?」


 ロゼリア様が遠慮がちに聞く。


「なにがです?」

「その、これは私の問題で……」

「私、ミシェル様の婚約者候補なのですけど?」


 申し訳なさそうなロゼリア様にディアーヌ様がハッキリ答える。


「友達、ですよね?」


 私はニコッ、と答えた。


「俺はテア様の守護騎士ですから」


 レオン様がさも当然、と胸を張る。


「ロゼリアさんって、どこか放っておけないのよね」


 クレール様が仕方ないわね、と両腰に手の甲を当てる。絶対ロゼリア様のこと気に入ってるよね。


「皆様……、ありがとう、ございます……」


 ロゼリア様が深々と頭を下げた。


「湿っぽいのは無しよ。やってちょうだいテア!」


 お姉様、私の考えてることお見通しだね。


「風の結界よ、我を運び給え! 飛翔(レイウィング)!」


 飛翔の魔法を白い蝶に与え、皆を飛翔させる準備。そして窓を越えて一斉に飛び立った。


 目指すは当然エンゾ家!


 どうなるかなんて、わからないけど。


 全部救う。

 みんながいるから、今度こそ!



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