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救われないラスボスに転生したので運命を変えて幸せになります  作者: まにゅまにゅ
第3章 決闘の果てに

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69 始まりのワルツをもう一度

 テアとアンネがいつものように中等部の門をくぐり、校舎へ向かう。


 その校舎の前にレオンは立っていた。


「レオン様?」

「おおっ、これはもしや!?」


 テアがレオンを見つけると、頬を染め上げる。アンネは妙に期待した口調で心の内が漏れ出た。


「おはようございます、《《テア様》》」


 レオンは晴れやかに挨拶をすると、テアに跪く。


 テアは「なんでテア様?」と驚きつつ。

 アンネは「キターーーッ!」と心の中で歓喜の声をあげ、レオンの次の言葉を待った。


「今の俺はもうルーセル家の人間じゃありません。ただのレオンです。そんな俺ですが、テア様。俺は、君が好きだ。だからどうか、君に相応しい男になるまで、俺のことを見ていていただけませんか?」


 レオンがテアの手を取り、告白する。しかも、全初等部生徒の真ん前で。


 テアはぼふっ、と全身から熱を感じつつも笑顔で答えた。


「はい、喜んで、レオン様……!」


 テアが涙ぐんで両手で握り返した。


 テアの答えに、周りの生徒達から歓声が上がる。

 アンネは「よっしゃ!」と言わんばかりに拳を握り、強く引いた。


 拍手をする者、口笛を鳴らして冷やかす者、声高々に祝福する者。


 初等部の校舎前は一気に祝福ムードと化した。


 そして噂は電光石火。

 瞬く間に高等部へと広まった。




「おめでとーーーー!!」


 レオンが教室に入るなり、クラスメイト達が両手を上げて祝福する。


「やるじゃねーかレオン! 初等部の白い蝶に告白したんだって?」

「しかも家を捨てたってマジか!?」


 クラスメイトが口々に騒ぎ立てる。


「れ、レオン、本当なの!? ルーセル家を廃嫡されたって……」


 クレールが青い顔をしてレオンに近寄る。ふらふらで今にも倒れそうだ。


「本当でございます、《《クレール様》》」


 レオンが跪いて答える。


「じゃ、じゃあ婚約は……」


 クレールの問いに周りが息を飲む。


「申し訳ありません、クレール様。貴方の気持ちは嬉しい。ですが、俺には何を犠牲にしても譲れない想いがある」


 レオンが跪いて答える。

 後悔しない。そう決めた以上、レオンは傷つける覚悟も持っていた。


「そっか……」


 クレールが力なく笑う。

 そして静かに、教室を出ていった。


 誰にも、涙を見せないために。


 そんな彼女を、誰も追うことはできなかった。


「しかし廃嫡とは思い切ったな」

「そうでもないさ。でも、後悔はしていない」


 レオンはキッパリ答える。


「よくやったわレオン! そんなあなたに提案があるの!」


 勢いよく扉が開き、A組にディアーヌが乱入した。


「提案……、ですか?」


 ディアーヌの勢いに押されつつ、レオンは返事をする。


「そう。だから放課後顔を貸しなさい。絶対よ?」


 ディアーヌはウフフ、と楽しそうに笑っていた。


    *   *   *


 レオンはディアーヌ達に連れられ、ユベルドー家当主バルトーク•ド•ユベルドーの前に立っていた。


 その両脇にはディアーヌとテアが並び立っている。


「話はディアーヌから聞いている。君は、大した男だな」


 バルトークは半分呆れ、半分は称賛のつもりであった。詳細をエリオットから聞いたときには、意味がわからないと固まったものである。


「もったいないお言葉です」

「いいだろう、君をテアの護衛騎士として雇おう。ただし、爵位の無い者に娘をやるつもりはない。いいな?」

「心得ております。この命に代えましても、必ずお嬢様をお守りいたします」


 バルトークはレオンの言葉に満足すると、短剣を取り出す。


「レオン、君にこれを託す。意味はわかるな?」


 バルトークは懐より、用意していた短剣を取り出す。その短剣にはユベルドー家の紋章が刻まれていた。


「これは……! ありがとうございます閣下」


 レオンは謹んで短剣を受け取ると、懐にしまった。


「部屋を用意させてある。荷物は家の者に運ばせたから、必要な物は揃っているだろう」

「ご配慮、痛み入ります」

「娘を……、よろしく頼む」

「はい、俺はそのためにここに来ましたから」


 バルトークが右手を差し出す。レオンはその手を取り、ガッチリと握手を交わした。


 ――テア、今日からは俺が君を追いかける番だ。


 レオンは心新たに誓いを立てた。




 そしてその夜、ディアーヌはシルヴァンとともにレオンの部屋を訪ねた。


「レオン、ちょっと付き合ってもらえるかしら?」

「あの服のままでも大丈夫か?」


 シルヴァンがディアーヌに確認を取る。


「制服だし、いいんじゃない?」


 ディアーヌがクスッ、と笑う。


「ええ、かまいません」


 レオンが快諾すると、2人は付いてくるよう伝え、先導する。


 行き着いたその部屋。

 そこは、テアの部屋だった。


 ノックも無しにディアーヌが扉を開く。


 その奥には、白いクチュールドレスを着たテアが立っていた。


「今夜だけ、見逃してやる」


 シルヴァンがレオンの背中を押した。


「一曲だけよ? 音楽は、ないけどね」


 ディアーヌがさらに背中を押すと、レオンはたたらを踏みながらテアの前に辿り着いた。


 そして扉は閉じられる。


 テアがドレスの裾を広げ、挨拶をする。レオンもまた、その意味を理解して貴族式の礼をした。


 そして音の無いダンスが始まった。


 優雅に、優しく、慈しむように。


 それはあのデビュタントの再現。


 ――もう一度。


 ――ここから始めよう。


 2人の気持ちが重なる。


 ――もう、自分の気持ちに嘘はつかない。


 ――もう、君を離しはしない。


 ワルツが終わると2人は寄り添う。


 言葉にはしていない。

 それでも伝わったと、2人は確信する。


 あの日、

 すれ違ってしまった想いは。


 今度こそ、

 同じ歩幅で踊り始めたのだから。

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