62 羽化
「破滅へのプレリュード……!」
無数の紅い蝶達を喚び出す。
「終焉と為せ、終わる世界!」
無数の紅い蝶が飛び交い、異形の悪魔たちを襲う。紅い蝶が炎を纏い、異形の悪魔達を次々と燃やし尽くす。
断末魔の悲鳴をあげながら燃え落ちていく悪魔達。
それでも悪魔達は私を無視して――
「お姉様危ない!」
「!」
会長を治療中のディアーヌお姉様に向かっていった。
「破滅の爪牙!」
魔神の手を向かわせ、悪魔を切り倒す。
「お姉様、早く会長を!」
「え、ええ!」
悪魔達の殆どがこちらに来ている!?
お姉様を庇うように悪魔達に立ち塞がる。しかし数が多すぎる!
「破滅の爪牙!」
近づく悪魔達を次々と魔神の爪で切り裂いていく。それでも数が減らない。
近距離過ぎて終わる世界をぶつけることもできない!
まずい、防ぎ切れない……!
このままだと数に押される!
「舞え、蝶達よ! 炎の壁」
紅い蝶達が燃え上がり、後続を分断させる。
後は手数で!
「いっけぇ! 爪牙乱舞!」
魔神の手総出で手当たり次第に悪魔達を引き裂く。
「テア様、上です!」
アンネの声に上を見上げる。
「……!」
炎の壁を越え、禍蛇の顎が迫っていた。
だめ、間に合わない!
そう思った瞬間、禍蛇の頭が蹴り飛ばされ軌道が逸れる。
「きゃあっ!」
禍蛇の首がお姉様のすぐ横の地面に激突した。
「逃げるんだディアーヌ!」
この声は――
「ええ、助かったわレオン。会長、動けますか!?」
「あ、ああ。なんとかな……」
禍蛇が態勢を整える前にお姉様と会長が立ち上がり、走り出す。
すると、それを追うように悪魔達が群がり始めた。私に向かっていた悪魔達までもが私を無視し、舞い上がる。
間違いない、こいつらの狙いは――
聖女!
「浄滅!」
お姉様が神聖系魔法を行使する。
白い光の柱が悪魔達をまとめて滅ぼした。
凄い!――
あれが、神聖魔法……!
見惚れている場合じゃない、この禍蛇を早くなんとかしないと!
禍蛇が鎌首を地面から引っ張り出し、お姉様に目を向ける。
「あなたの相手は私です!」
魔神の爪で禍蛇を引っ掻く。しかし鱗が硬いのか、傷が浅い。
どういう鱗してんのよ!?
禍蛇は私を無視し、鎌首を後ろに下げた。まずい、噛みつくつもりだ!
「終焉と為せ、終わる世界!」
残った数体の蝶を禍蛇にぶつける。禍蛇の身体が炎に包まれた。
しかし……。
すぐに炎が霧散する。あちこちに火傷はあるし、鱗の剥がれた所もあった。
うん、効いてはいる……。
でも、なんらかの方法で対処されてるんだ。
「邪魔をするな!」
禍蛇が尻尾を振り回した。
それを察し、跳んで躱す。
「爪牙乱舞!」
すぐに魔神の爪を向かわせ、手当たり次第に引っ掻く。鱗の無い腹の部分から緑色の血が噴き出した。
そのまま飛翔し、お姉様とレオン様の立つ位置に着地する。
「テア、助かったわ。レオンも」
「礼は終わってから聞く。それよりも……」
「先ずはこいつらを何とかします!」
3人が背中を預け合うように立つ。
そして……。
「浄滅!」
「はあっ!」
「破滅の爪牙!」
お姉様が魔法で悪魔達を滅ぼす。
レオン様と私が悪魔達を斬り倒していった。
悪魔達もかなりの数を減らしている。他の生徒達は殆ど狙われておらず、私達に悪魔達が集中しているようだ。
それでもあちらこちらに倒れている生徒達がいた。
気が焦る。
早く彼らを助けないと――
「どけ!」
禍蛇が尻尾を振り下ろす。
まずい!――
その尻尾を防ごうと全ての腕を総動員させる。
ズシン!
激しい地鳴りが大地を揺るがす。
尻尾が!?
禍蛇の尻尾は軌道を変え、離れた位置を打ちつける。
「ぬぅん!」
そこから尻尾を薙ぐように振る。
巨大な尻尾が私達3人を襲った。
「きゃあっ!」
「くっ!」
「ぐぅぅっ!」
まとめて吹き飛ばされ、地面を滑る。
「死ねい!」
禍蛇が鎌首を上げた。
「くっ!」
レオン様が素早く立ち上がり、私とお姉様を抱える。
バグン!
間一髪。
禍蛇の噛みつきが空を切る。
「平気か、テア!」
「はい、レオン様!」
レオン様、私を気遣って……。
トクン――
「わかってる。傷ついた生徒達を助けたいのだろう?」
この感覚、懐かしいな――
そう、あれは――
「君は、根っからの治癒師だな」
レオン様の言葉が、私の中で弾けた。
この感覚――
あの時と、同じだ。
それはまるで、蛹が蝶になるかの如く。
私の中で、何かが羽化した気がした。
「! これは……」
「白い……、翅……?」
新しい翅が私に力をくれる……。
そう、この力は私の願いそのもの。
「もう、誰も傷つけさせない!」
私の翅から、無数の白い蝶達が生まれた。
そうだ、この力は誰かを傷つけるための力じゃない。
大切な人達を、守るための力だ!




