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救われないラスボスに転生したので運命を変えて幸せになります  作者: まにゅまにゅ
第3章 決闘の果てに

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61 紅い蝶再び

「ここからが本番ですわ……!」


 ロゼリア様が不敵に笑う。

 後ろの蛇は身体をとぐろ巻きにし、その鎌首をクレール様に向けた。


 ざっと見、蛇の体長は5メートルはありそう。


 ――あれは、禍蛇ね。ふふっ、なかなか面白いじゃない。


 ヤーヌス!?


 あれはなんなの!?

 教えて!


 ――さぁねぇ?

 でも1つだけ教えてあげる。このまま行けば、2人共死ぬわよ?


「……!」


 どうする?

 決闘に割って入る?

 でも――


 今乱入すれば、私は決闘を穢した汚名を被ることになる。


「……っ!」


 決心がつかず、歯噛みした。


「止めなさい、これ以上やっても無駄だわ」 


 クレール様は再び水球を作り、分裂させる。


「そんなものはもう、通じませんことよ!」


 ロゼリア様が蛇をけしかける。


 ――ダメ!


 蛇が動いた。その鎌首を素早く振り回し、次々と水球が割れる。


「なにあれ? 水球が勝手に割れてる!?」


 周りがどよめく。

 何も知らない人から見れば、異様な光景なのかもしれない。


「な……!?」


 次々と割れる水球にクレール様の笑みが消えた。


「行きなさい禍蛇! あの女の右腕を軽く痛めつけるのよ」


 ロゼリア様の命令を受け、禍蛇がクレール様に牙を向ける。


 その口はバスケットボールすら飲み込めそうな程開き――


「きゃあああああっ!?」


 クレール様の右腕にかぶりついた。


 右腕から鮮血がほとばしり、石床を赤く染め上げた。


「き……、きゃあああああっ!!」


 ワンテンポ遅れ、観客達から悲鳴があがる。


「立会人、止めて!」


 私が叫ぶ。


「ロゼリア嬢! これ以上は危険だ、止めなさい!」


 会長が止めるため舞台に上がる。


「止まりなさい禍蛇!」


 ロゼリア様が禍蛇に制止をかけた。


 しかし――


 禍蛇は目を細め、口角を釣り上げた。


『断る』


 言葉を、発する。


「……なんですって? 言うことを聞きなさい禍蛇!」


 ロゼリア様が叫ぶ。


「ロゼリア嬢……?」


 会長の顔に戸惑いの色が浮かぶ。


「いったい……、なにが……?」


 クレール様は大量に血を失い、顔色を青くしている。既にふらふらで戦闘の続行は不可能だ。


『クククッ』


 禍蛇が嗤う。その声が聞こえているのは私とロゼリア様だけだろう。


「そんなこと……、私は望んでいませんわ! 言うことを聞きなさい禍蛇!」


 ロゼリア様がなおも叫んだ。

 会場がざわめく。


「言うことを……、聞け! 闇の焔(ダークブレイズ)!」


 闇の火柱が禍蛇を襲う。

 あれなら……!


 ――あの程度が効くわけなかろ?


 ヤーヌスが笑う。


 禍蛇の周りの焔は容易く霧散する。禍蛇は舌をチロチロと出し入れを繰り返していた。


「止めないかロゼリア嬢!」


 会長がロゼリア様を制しようと駆ける。その手がロゼリア様に近づいたとき、禍蛇がほくそ笑んだ。


 禍蛇がその鎌首を素早く動かす。瞬く間に会長に追いつくと、その大きな顎で脚にかぶりついた。


「があああっ!?」


 突如左脚から鮮血が噴き出し、会長が倒れ伏す。


「いやああああっ!!」


 再び悲鳴に包まれる会場。

 私の近くにいた人達も目を背け、惨状に涙を流す。


「やめて……、もうやめて……!」


 ロゼリア様が震えながら這いつくばる。


『望んだのはお前だ』


「違う! 違う違う違う違う!」


 ロゼリア様が叫ぶ。


「誰か……」


 石床に涙が零れる。


「誰かあの蛇を止めて!」


 ロゼリア様の慟哭が響いた。


「蛇……?」


 会場がどよめく。


「テア様!」


 気が付けば、私は1人駆け出し、舞台に上がっていた。


「やめなさい禍蛇! 私がお相手します」


 禍蛇を睨みつける。


『ほう……、我が視えるか』


 禍蛇がゆらゆらと鎌首を持ち上げる。


「時間がないの。サッサと消えて!」


 魔神の手を召喚する。


『ほう……! 貴様、我と同じ側の存在か。面白い!』


 鎌首が私に迫る。

 でも、遅い――


「破滅の爪牙!」


 魔神の爪が禍蛇を引っ掻く。


『ぬあおおおっ!?』


 禍蛇の顔に3本の切り傷が生まれ、仰け反る。


 ――浅い!


 この一撃で決めるつもりだったのに。


 ――何をやっとる。本気を出さんか。


 ヤーヌスが呆れ声で私に全力を促す。しかしそれは無理だ。そんなことをすれば会長やクレール様を巻き込んでしまう。


「姉さん!」


 そこにアドリアン様が駆けつけ、クレール様を抱きかかえる。


「会長!」


 さらにディアーヌお姉様も舞台に上がり、会長に駆け寄った。


『むっ、聖女か。丁度よい!』


 禍蛇が私を無視してお姉様に迫る。

 丁度よいってどういうこと!?


 いや、今はそれより――


「させない!」


 複数の魔神の手を素早く動かし、蛇の突進を受け止める。


「お姉様、会長を連れて早く逃げてください! アドリアン様も!」


 2人を急かす。

――いつまでも抑えていられない!


「テアさん、いったいなにが……?」

「いいから!」


 渋るアドリアンを急かす。


「何かいるのね、そこに。2人の治療は私に任せて! ロゼリア、貴方も早く逃げなさい!」


 お姉様が状況を察し、ロゼリア様にも声をかける。


「私も、戦いますわ! 責任取らないと……」


 ロゼリア様が立ち上がる。


「貴方では足手まといよ! サッサと逃げなさい!」

「私にも、意地がありますわ……!」


 お姉様の声も届かず、ロゼリア様は再び詠唱を始める。


『もう貴様は用済みだ』


 禍蛇が尻尾を振り回す。その一撃でロゼリア様が場外へと飛ばされた。


「やっぱり何かいるのね! 姿を見せなさい、真実の目(トゥルーアイ)!」


 お姉様が幻想打破の魔法を使用する。


「な、なにあれ……!」

「へ、蛇……!?」


 周りが一気にざわめく。悲鳴をあげる者、気を失う者、逃げ出す者。


 会場は一気に混沌と化す。


 そこに追い打ちをかけるように――


 舞台上に幾つもの魔法円が出現。そこから、異形の悪魔たちが一気に湧き出た。


 1つ目の翼を生やした人型の悪魔たち。それらは姿を現すなり不気味な雄叫びをあげる。


「ま、魔物よぉっ!」


 生徒達が我先にと逃げ出す。

 もう、手加減とかしてる場合じゃない。


 たとえ化け物と呼ばれようとも――


 私は、救う側でありたい!


 私は、紅い蝶となり空に舞い上がった。

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