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救われないラスボスに転生したので運命を変えて幸せになります  作者: まにゅまにゅ
第3章 決闘の果てに

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59 追い詰められた者

「レオン、いいニュースよ!」


 レオンが教室に戻るなりクレール嬢が胸に飛び込んで来た。


「お、おい、やめないか」

「いいじゃない、私達婚約したんだし」

「え……!?」


 その一言にレオンは固まる。


 ――どういう、ことだ?


「ふふーん、さっき使いの者が来てわざわざ報せてくれたのよ。これでロゼリア嬢との勝負は私の勝ちね」


 レオンの胸に頬ずりしながら嬉しそうに話す。


 ――なんという、ことだ……。


 家同士で結ばれた約束は絶対である。もはやレオンにはどうすることもできなかった。


「いったい……、どういうことなんだい……?」


 レオンは震える手でクレールを引き離す。笑顔はかなり引きつっていた。


「うふふ、私がお父様にお願いしたのよ。レオンの婚約者になりたい、って」


 クレールは両手で頬を隠すように包みながらいやん、いやんと首を振る。普通なら可愛い行為だが、このときレオンは殺意すら湧いた。


「おめでとうレオン!」

「お似合いだわ!」


 そんなレオンを無視してクラスメイト達が騒ぎ立てる。


 ――外堀、もう埋まってる?


 逃げられない、と理解するのにさほど時間はかからなかった。




 レオンとクレールの婚約の噂はあっという間に学園内に広まった。高等部のみならず、その日の内に初等部にまで噂が広まる。


 そしてそれをどうしても許せない令嬢がいた。


「不覚ですわ……! 家同士の約束にされたら覆せませんわ!」


 ロゼリアは家に入るなり不満を叫ぶ。そして飾ってあった壺を手にして高く掲げた。


 ガシャン!


 息を荒くして床に叩きつける。


「あー、忌々しいですわ! こんなことでは、こんなことでは終われませんわぁっ!」


 それでも苛立ちは収まらず壺の破片を蹴る。


「そこのあなた、これ、片付けといて」

「は、はいお嬢様!」


 メイドに片付けを命じ、2階に上がろうと階段を上る。


「荒れてるわね、ロゼリア。わかるわぁ、愛しのレオンを奪われたのね。なんて可哀想なロゼリア」

「お姉様……!」


 遮るようにマリーヌが立ち塞がり、声をかけた。しかしその目に憐れみの色はない。あるのは悪女の笑みだった。


「噂は私も知っているわ、同じクラスだもの」

「お姉様……!」


 マリーヌは怪しく囁く。


「酷い話よね。貴方は本当にレオンを愛してるというのに。あのクレールという女は狡猾な女ね。権力で無理矢理レオンをモノにしたのね」

「そうよ! そうに違いないわ!」


 マリーヌは先ずクレールに対する憎悪を植え付ける。そうやって怒りの感情を引き出した。


「そうね、許せないわよね? あんな卑怯な女に負けたなんて。でももう手遅れね。家同士で繋がったら普通はどうにもならないわ」

「それは……!」


 今度はロゼリアを言葉の刃で傷つけ始める。


「可哀想なロゼリア! 本当に貴方は不幸な子。どれだけレオンを愛しても貴方のモノにならないの」

「酷いわお姉様……!」


 ロゼリアは涙を浮かべマリーヌに抗議する。


「でも本当のことよね? ここから貴方、どうやってあの女に勝つつもりなのかしら?」

「それは……」


 小さい声。

 何も思い浮かばず、マリーヌから目をそらした。


「無理よね? 諦める?」

「ううっ……。酷い、酷いわお姉様! 私は、私は……!」


 ロゼリアは泣きながらマリーヌをぽかぽかと叩く。


「うああああ……」


 そして声をあげて泣き出してしまった。そんなロゼリアを、今度は優しく抱き締める。


「でもね、ロゼリア。何も心配いらないのよ? 私がついてるわ。まだ、勝てる方法があるの」

「本当……?」


 ロゼリアが涙目でマリーヌを見上げる。マリーヌは優しく微笑みかけ、頭を撫でた。


「簡単よ。クレールと決闘しなさい。後は私が上手くやってあげる」

「お姉様が……?」


 ――何をする気なの?


 しかしその先をロゼリアは怖くて聞けなかった。


「そうよ。可愛い妹のためだもの」

「でも、勝てるかしら……」


 ロゼリアは不安そうに視線を外す。


「心配? ふふっ、ならいい物をあげるわ」

「お姉様、これは……?」


 マリーヌはロゼリアに紫色の小瓶を手渡す。


「これはね、強くなれる薬よ」

「強く……なれる?」

「そう。さぁ、飲んでみなさい」

「怖いわ、お姉様……」


 ――これ、本当に飲んで大丈夫なの?


 手が震える。

 本能がこの薬は危険だと警鐘を鳴らしていた。


「レオンを奪われたままでいいの?」

「嫌……!」

「これはね、貴方のためなのよ?」


 ロゼリアがマリーヌと薬を交互に見る。


「でも……」

「後悔しない?」

「それは……、でも……!」


 決心がつかずロゼリアは揺れる。


「そう、残念ね。せっかくレオンを取り返す手伝いがしたかったのに。本当に、残念だわぁ……」


 マリーヌがロゼリアの手から紫の小瓶を摘み上げる。

 手を伸ばせば簡単に届く位置。そこでマリーヌは待った。


「これが、最後のチャンスなのよ? 毎日レオンを想って泣いて暮らすつもり?」

「そ、それは……!」


 震える手で小瓶へ手を伸ばす。


 ――だめよ、まだ、戻れる。


 ほんの少し、手が離れた。しかしマリーヌはさらに言葉で揺さぶりにかかる。


「貴方の手でレオンを取り戻すのよ。貴方にしかできないことよ」

「……っ!」


 ロゼリアは目を瞑りながら唇を噛み締める。


「選びなさい、ロゼリア。レオンの胸に抱かれるか、諦めるかを」


 悪魔が選択を迫る。



 ――いや!

 ――諦めるなんてできない……!


 そして――

 震える手で薬を、手に取った。


「そう、それでいいの。この選択を、きっとレオンは喜んでくれるわ」

「レオン様が……」


 震える手で蓋を開ける。

 瓶の中から甘い匂いが漂った。


「大丈夫、何も怖くないわ」


 震えながらもロゼリアは小瓶に口を付ける。


 甘い蠱惑的な香りが鼻腔をくすぐった。まるで誘われるように、瓶を傾ける。


 そして、目を閉じて一気に飲み干した。




 それから1週間、ロゼリアは学校を休んだ。


 そして――

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