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救われないラスボスに転生したので運命を変えて幸せになります  作者: まにゅまにゅ
第2部 白い蝶 第1章 紅い蝶は道に迷う

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56 家の格

「そう……、なんですね。あの、凄く助かりました、ありがとうございます。私、1年B組の……」

「知ってるわ。テア・ド・ユベルドーさんよね。有名だもの、初等部の白き蝶さん」

「私……、白くなんてないです」


 同じ蝶なら、私は紅い蝶を選びたい。それが――私だと思うから。


 っていうか私有名人なの?


「あら、そうなの?」

「いえ、テア様は白が似合います! 清楚な純白さ、そして儚いほど可憐で幻想的な銀髪はまさに天使か妖精か! デビュタントでのテア様といったらもう、後ろに翅が見えてしまうほどでした!」


 燃料投下されたアンネが暴走を始める。いやー、なんていい顔してるんだろうねー(棒)。


「まぁ、そうなのね。私も見たかったわ。でも確かに、白い蝶って呼ばれちゃうなって思ったわ」

「か、からかわないでください……」


 こういう美女に真正面から言われるのは正直照れる。


「ホント、弟が夢中になるのもわかるわね」


 うん?

 弟……?


「弟さんがいらっしゃるのですね」


 何の気なしに訊き返す。すると目を細めて嬉しそうに答えた。


「ええ、アドリアンって言うの。もしテアちゃんがアドリアンの婚約者になってくれたら、とても嬉しいわ。だって、こんなに可愛いんだもの」


 その名前を聞いてドキン、と心臓が跳ねた。そうだ、同じルミエールじゃない。なんで気づかなかったんだろ。


「あ、アドリアン様の……」

「そうよ。なんなら今からお義姉様と呼んでくれてもいいのよ?」


 笑顔で迫らないでほしいな……。

 目に星が見えます……。


「いえ、そんな恐れ多いことは……」


 遠回しに断る。当然だ、私にはレオン様という心に決めた人がいるのだ。


「あら、それは残念ね」


 心底残念そうに人差し指を立て、口元に当てる。


「あの、ところでレオン様と仲がよろしいと伺ったのですが……」


 怖いけど、確かめたい。

 意を決し尋ねてみた。


「ええ、仲いいわよ。同じクラスだもの。お父様も婚約者として申し分ないと仰ってたわ。これ、秘密よ?」

「婚……約者……?」


 ……聞かなきゃよかった。

 何も考えられない……。地面に立っている感覚さえもわからなくなる。


 頭が……、理解を拒否してる……。


「やぁーねぇ、気が早いわ。でも、家の格も申し分ないし、私も、彼だったら文句ないわ。きっとレオンだって嬉しいはずよ」


 そうだ……。“好き”だけじゃどうにもならないのが貴族。

 勝てない……。

 伯爵家と侯爵家だったら、侯爵家を選ぶに決まってる。


 決めるのは……レオン様のお父様だ。


「そう……、なんですね。あの、助けてくれてありがとうございました。では……」


 ダメ、これ以上話していたら……。

 ――壊れるかもしれない。


 私は呟くように伝え、おぼつかない足で初等部の校舎へ向かった。


「あ、テア様待ってください!」


 アンネが私に駆け寄る。ふらつく私に追いつくと、転ばないように腰を支えてくれた。


「大丈夫ですか、テア様?」

「うん……、大……丈夫……」


 レオン様……、大丈夫ってどういう意味で言ってくださったんだろう……。


「家の格って、厄介ですよね……」


 ふらつく私を支えながらアンネはため息をついた。


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