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救われないラスボスに転生したので運命を変えて幸せになります  作者: まにゅまにゅ
第5章 守れなかったもの

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41 遅れた襲撃

「どういうことだ……?」


 ルーセル辺境伯は困惑していた。

 毎月決まった日に起こる魔物達の襲撃。今までのペースを考えれば今日がその日のはずであった。


 なのに――

 魔物どころか動物一匹前方には見えなかった。あるのは広い草原ばかり。


 普通、襲撃がないことは喜ばしいことである。しかし、あるはずの日にないことが返って不安を煽っていた。


「変ね……。いえ、もしかしたらこれは前触れかもしれないわね」


 セリーヌはその直感で不安を感じ取っていた。彼女の中ではある1本の線が結ばれつつある。


「前触れ、ですか?」

「そうです、レオン様。次の襲撃、必ず何かを仕掛けてくると私は考えています」


 嵐の前の静けさ――

 セリーヌはそれを感じずにはいられなかった。


「なぜ、そう思うんだい?」

「……女の勘です」


 ――本当に意地悪な人だ。

 セリーヌがはぁ、と息を吐く。

 こいつはわかってて聞いている。そうとしか思えなかったのだ。


「なるほど、それは馬鹿にできないね」


 説明になっていない根拠にレオンが納得する。はるか先――眼前に広がる草原を見つめた。


「……嫌な風だ。……あのときと同じだね」


 吹き抜ける風が生温かさにレオンが目つきが変わる。

 まるで、見えていない先の不安を見透かしているように――


「で、ございましょう?」


 セリーヌはそのことを肌で感じ取り同調する。


 嫌な予感が2人の心を支配していた。



   *    *    *



「サーラ、元気にしていた?」


 治療院の一室。

 サーラは立ち上がり窓を眺めていた。ここに来てから1週間、大分顔色も戻ってきている。


「テア、また来てくれたんだ。毎日じゃなくても大丈夫だよ?」

「うん、でもせっかく会えたんだし」


 サーラは嬉しい顔をするときと困った顔をする日がある。

 今日はちょっと困った顔。うーん、なんだろうこの距離感は。


 ――妙な違和感を感じるなぁ。


 それは何もサーラに対してだけじゃあない。私についても、だ。


 なんかこう、心の中で妙にもやもやしたものが残っているのだ。


 私は――その正体を確かめたい。


「そういえば外が騒がしかったけど何かあったの?」

「え、うんまぁ……」


 サーラに聞かれ答えに詰まる。

 定期的に起こる魔物達の襲撃のことを話していいものだろうか?

 

 少考し、私は伝えることにした。


 違和感の――正体を確かめるために。


「うん、あのね。ここアルノーブルでは毎月決まった日に魔物達の襲撃があるんだ。本当は今日がその日だった。でも、ないんだよね襲撃が」


 じっ、と見て反応を確かめる。


「ふーん、でも襲撃がないなら良いことなんじゃない?」


 なんともあっけらかんと答える。

 

 ――これが普通の反応なのだろうか?


 わからない。


「ねぇ、怖くないの?」

「何が?」


 サーラが小首を傾げる。


「定期的に魔物達の襲撃があるんだよ?」

「うん、でもないんだよね? だったら怖がるだけ無駄だよ。それに――」


 ふふっ、サーラが笑う。


「テアが、守ってくれるでしょ?」


 一点の曇りもない笑顔。


「聞いたよ、テア、とても強いんだってね。みんなが苦労しちゃうような魔物でも簡単に倒したって」

「うん、まぁそうだけど……」


 面と向かって言われると照れる。

 この街で私を怖がる人はいない。一般の人でさえ、だ。


 でも――あの村では違った。


 それは相手が盗賊とはいえ、人間だったからかもしれない。


「なら、怖くないよ私。だって――テアが終わらせてくれんでしょ?」


 口元が三日月に歪む。

 目が――笑ってない?


 また――あの笑顔だ。


 その笑顔に胸の奥が冷えた気がした。


 思考を振り払うように頭を振る。


 そして、小さく頷いた。


「……うん、頑張るよ」


 きっと――私の思い過ごしだ。

 ここの中でごめんなさい、と伝え、私はサーラとの面会を終えた。




 そしてそれから5日後。

 ついに、その日はやって来た。


「遠方に魔物の大群を発見! 今までにない規模で、到着予測時刻は8時間後と思われます!」


 私達が訓練をしていると、馬を駆る兵士から報告が入る。


「ついに来ましたか。全員すぐに休息を取り、戦に備えよ! 集合は4時間後とする」


 訓練場に緊張が走る。

 ヘルクス子爵より指示が入ると皆が一斉に動き出した。


 今の時刻は午前10時頃。夕暮れの戦いになる、か……。


「テア、サーラに会いに行くのは今日は止めなさい。襲撃を知れば無駄に精神的負荷をかけることになる」


 納得いかず、ヘルクス子爵の目を睨むように見る。するとヘルクス子爵は視線を逸らし、小さく咳払いをした。


「その通りね。テア、あなたはすぐに休息を取りなさい。これは命令です」


 セリーヌさんまで……。セリーヌさんの目がなんか怖いし、ここは従おう。


「……わかりました」


 不承不承私は頷く。

 セリーヌさんの視線の先には、最後までヘルクス子爵がいた。

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