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救われないラスボスに転生したので運命を変えて幸せになります  作者: まにゅまにゅ
第5章 守れなかったもの

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40 嘘と真実の境界

「……許可はできん。危険過ぎる! 君に何かあれば大きな損失だ」


 ルーセル辺境伯が私の案を即座に却下した。


「そうね。テア、あなたは今や後方支援の中核を担っているのよ? その自覚はあるのかしら」

「うっ……」


 セリーヌさんも私が提案した内容に反対のようだ。


「……でも確かに調査の必要はあるんじゃないかな。そうしないと、いつまでも終わりのない戦いを続けなくてはならなくなる」


 レオン様だけが私の意見を肯定してくれていた。特に強く反対しているのがヘルクス子爵だ。


「終わらせる方法はありますぞ。襲撃の中に幹部を名乗る男が潜んでいるのです。そいつを捕らえれば済むではないですか」


 ヘルクス子爵が立ち上がり、机を叩いて力説する。


「それに襲撃の起点を探す、といっても当てはあるのかしら?」

「……あります!」


 セリーヌさんの質問に私はハッキリと答えた。

 皆の視線が一気に集まる。

 高い確率でそこだと思える場所が一カ所あるのだ。


「ほぅ、どこだね?」

「レムリア山の中腹辺りです」


 そう、確かあの辺りにはゾーア教団の施設があったはずだ。細かい場所まではわからないが、大体の場所であれば覚えている。


「な、なぜそこだと……!」


 ヘルクス子爵が私の言葉にいち早く反応した。しかし一瞬だが言葉に詰まっている。


「……思うのかね?」


 睨むような視線。顔色も赤い。頭に血が登っているようだ。


 うーん、それよりなんて答えよう。まさかゲームの内容で知っています、なんて通じるわけがない。


「私が、盗賊に捕まって売られた場所だからです」


 ホントは嘘だ。でもこれが一番信じてもらえそう。


「ふざけるな!」


 ヘルクス子爵がまたも机を叩きつける。今にも噛みつかれそうな、それほどの怒りが感じられた。


 でも――なんでそこまで怒るの?


「そんなのは嘘だ! 嘘に決まっている!」


 ヘルクス子爵が怒声をあげる。うーん、なんで嘘だってバレたんだろ?


 でも――今さら引くわけにはいかない。


「なぜ、あり得ないと断言できるんですか?」

「簡単なことだ。君が魔神の血を打たれて最初に寄った場所はエルデの村と答え、その後にウォルノーツに辿り着いた。そうだな?」

「え、ええ。そうです」


 なるほど、地理関係で証明しようってことか。


 痛いところを突かれ、思わず唇を噛み締める。


 考えよう――考えなきゃ!


「エルデの村の場所は知らんが、ウォルノーツから約一日で着いたのだろう? 位置関係的にあり得ん。違うかね?」


 なかなか鋭いなぁ……。

 でも、いい考えが浮かんだんだよね。


「ところが、そうでもないんですよ」


 私は笑みを浮かべる。


「なに?」


 私の一言にヘルクス子爵の眉がピクンと跳ねた。


「私の村は無もない村でした。でもあの盗賊団のことは今でも忘れられません。盗賊団に村を焼かれ、売られた先がそこだったんです。その後エルデの村の近くに移送されたんですよ」


 ……嘘だけどね。

 でも、押し通す!


 盗賊団なんてどこにだっているだろうし、名もない村なんてそこかしこに点在している。

 この真偽を確かめるのは困難でしょ。それに突っ込みにくい内容だし。


「そうか……、辛いことを思い出させてしまったな。すまない」


 ルーセル辺境伯が小さく頭を下げた。


「なるほど、そういうことなら調査する価値はあるわね。場所が絞れるならなんとかなるわ」


 セリーヌさんも認め始める。

 よし、流れは……、掴んだ!


「そうだね。でもそれは次の襲撃が終わった後にしよう。いくらなんでもテア1人にやらせるわけにはいかない」


 レオン様、私を心配してくれてる?


「なぜです!」


 しかしヘルクス子爵は折れない。机を再度叩き、感情を剥き出しにして噛みついた。


「なぜそんな子供の戯言をなぜみんなは信じるのですか!? もし、失敗したときの損失を考えてください!」


 その迫力に皆が一瞬押し黙る。

 しかし、ルーセル辺境伯が意見を変えることはなかった。


「その子供に我々は助けられているのだよ。それに、たとえ嘘であっても問題はない。可能性を1つ潰した、という成果が残るからな。消極的な対応ばかりでは後手を踏む」


 その眼光は鋭く、ヘルクス子爵は押し黙り、席に座る。

 この沈黙は――納得じゃない。押し殺したものだ。


 ヘルクス子爵が私に目を向ける。

 敵意――感じられた感情は明らかにそれだった。


「……結論が出たな。調査を認めよう。調査は襲撃の後だ。襲撃後3日以内に編成を終わらせる。なんとかやってみよう」


 ルーセル辺境伯も本格的に調査を認める。同行くらいはさせてもらえるだろう。


 で、セリーヌさんは……。


 へルクス子爵を睨むように見つめていた。その目はなんらかの確信を得た人間のものだった。

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