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救われないラスボスに転生したので運命を変えて幸せになります  作者: まにゅまにゅ
第3章 癒神の手

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33 瘴気の傷痕

「そう、瘴気よ。瘴気はね、治癒魔法を打ち消してしまうの。人体にも有害で、抵抗力がなければ生命そのものを蝕まれて命を落とすわ」

「どうすれば……」


 セリーヌの説明に皆が視線を落とす。


「聖水よ。教会へ行って聖水をもらって来て。それなら浄化できるはず!」

「は、はい!」


 セリーヌの指示を受け、数人の治癒師が教会へと走る。早くても往復15分はかかるだろう。


 だが――それでは間に合わない患者が私の目の前にいた。


 今、この瞬間に死に瀕している患者が。


 腹の右横に深々と抉られた傷痕。この場所にあるのは肝臓だ。


 時間がーーない!


 瘴気の浄化。

 私の癒神の手にそれができるかはわからない。


「ぐああっ! はぁっ、はぁっ……」


 目の前の患者は呻き、息も絶え絶えで危険な状態だ。


 ――私は治癒師。目の前の命を救うことが私の使命。


 1人頷き、大きく深呼吸する。


 ――集中!


 できるかどうかなんてわからない。


 ――でも、やるしかない!


「癒神の手よ、浄化して癒せ!」


 ぐぅっ!?


 一気に力が吸われる感覚。

 引き換えに癒神の手は眩い光を放ち患者を包み込む。


「テア、あなた何をしているの!」


 その光にセリーヌさんが反応する。

 命令にない行動。

 本来なら懲罰ものかもしれない。


 ――それでも。


 私は目の前の命を諦めたくははかった。


「き、傷口が!? これは浄化? いや、そんなまさか……!」


 理解が追いつかない、という顔だ。私だってよくわからない。


 それでも――


 患者の傷口が塞がっていく。

 この感覚、この手応え。

 恐らく臓器すら治癒しているだろう。


 いや、そうでなくちゃ困る!


「頑張れ、頑張れ!」


 自らにエールを送り鼓舞する。その甲斐あってか患者の顔色が戻り、呼吸が落ち着いていった。


「これは……、瘴気が残ってる。浄化じゃない。この力は……?」


 セリーヌさんが治った患者をじっくりと観察し、様子を確認する。


「でも肉体は瘴気の影響を受けていない? まさかそんな……!」


 浄化じゃ……ない?

 そりゃそうか、それができたら私は聖職者だ。どういうことなのかは正直私にもわからないかな。


「助かった……のか?」


 瀕死だった兵士が目を開ける。彼はすぐに立ち上がろうとした。


「行かねば……!」

「さっきまで瀕死だったんですよ!? 無茶にもほどがあります!」


 私は兵士を諌める。

 しかし、私は兵士の次の言葉で凍りついた。


「レオン様が危ないんだ! あの魔物は危険過ぎる!」

「どういう……、ことですか?」


 はやる心を抑え、その真意を問う。


「その魔物は剣で斬られても傷が一切つかないんだ。魔法すらものともしない。まだ12歳のレオン様に抑えられる相手じゃない!」

「レオン様が……!」


 手が震える。

 まさか、まさかまさかまさか!


「このままだと死ぬぞ。あの方を死なせるわけにはいかんのだ!」


 兵士が気を吐き立ち上がる。

 この兵士は生命に代えてもレオン様をお守りするつもりだ。


 私は――?

 私はどうしたい?


 ――決まっている。


「レオン様は――私がお守りします」


 ハッキリと告げ立ち上がる。


「ダメよテア。あなたは治癒師。何のためにあなたはここにいるの?」


 ――なんのために?


「私は――」


 決まっている。

 救いたい。

 目の前の人も。大切な人も。


「レオン様のためにここにいます!」

「……!」


 私はすぐさま手を召喚し、自らを運ぶ。真っ直ぐ前線を目指した。

 セリーヌさんが私を呼ぶ声が聞こえた。それでも私は振り返らない。


 後で怒られるだろうな。

 でも――


 レオン様を失うことは私にとって死の宣告と変わらない。


 空を飛び前線まで5分足らず。


 見つけた!


 見た目は身体の大きな狼男。銀色の毛に覆われ、なにやら紫色の煙が奴から立ち昇っていた。


 その周りをレオン様を中心とした騎士たちが囲んでいる。他にも多くの魔物どもと乱戦になっていた。


 レオン様かすり傷とはいえ、そこかしこに傷痕が見える。


 ――押されてる!


 狼男が右手を振り上げた。


 ――させない!


「破滅の爪牙!」


 魔神の手が狼男の右腕を切り飛ばす。そしてレオン様の前に立ち、狼男と対峙する。


「治癒師として――」


 狼男を指差す。


「アルノーブルに巣食う病は――私が排除します!」

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