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救われないラスボスに転生したので運命を変えて幸せになります  作者: まにゅまにゅ
第4章 全てを救うために

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31 小さな違和感

「そんな厄介な存在だったとはな……」


 ルーセル辺境伯の執務室で私はアトスのことを話した。辺境伯はむぅ、と唸り顎に手を当て思案する。


「……他にわかったことは?」

「……ありません」


 言えない。

 私の中に魔神が生まれようとしているなんて。

 あのエンディングで見たスチルが脳裏を(よぎ)る。あのときテアは15歳。まだ時間はあるはず——


 チラリとレオン様を見る。

 彼は真っ直ぐに私を見つめていた。


 ——凛々しい目。


 何か決意を秘めたような真っ直ぐな眼差し。それでいてどこか優しく、温かな視線。


 そうだ。あのテアと今の私には決定的な違いがある。


 彼女は生きるのを諦めた。

 でも——私は諦めない。諦めたくない。


 この身をーー魔神になど渡してなるものか。


 拳を握り締める。真っ直ぐにルーセル辺境伯を見つめ、姿勢を正した。


「そうか。恐らくゾーア教団の狙いはそのアトスの解放で間違いない。問題はその手段だな」

「やはり街を攻め落として直接奪うつもりでは?」


 辺境伯の疑問にヘルクス子爵が答える。しかし何かが引っかかった。


 ゲームではどうだった?

 アトスは名前すら出て来ず、この街で封印されたままだ。

 その理由は語られていない。


 なぜゾーア教団は諦めたんだろう?


「ふむ、答えが出ないことをここで考えても仕方がないか」

「そうですね。それよりも毎月定期的に襲って来る魔物の群れです。なぜこうも定期的に襲撃を起こせるのか、ですね」


 レオン様が天井を見上げ、疑問を口にする。


「あ、あのぅ……。なぜゾーア教団の仕業だとわかったのでしょう?」


 これが最大の疑問だ。ここになんらかのヒントがあると思う。


「それは簡単なことです。いたんですよ、教団の幹部を名乗る者が。その者が私達の前で堂々と魔物達に命令していましたからね」

「その者はどうなりました?」


 私の疑問にヘルクス子爵が続けて答える。


「ええ、何度か姿を見せています。いつも知らない内に姿を消していますがね。私も何度か直接やり合ったことがありますが、かなり手強いですね」


 うん……?

 なんとなく小首を傾げる。

 ま、いっか。それよりも。


「出現場所の特定などは行ってないんですか?」

「したくてもできんのだよ。毎月決まった時期に来るのだ。調査するにも日にちが足りん。そうだな?」


 普通はこういうのは調査しそうなものだと思う。しかしそれはしてないと辺境伯が答えた。


「ええ、その通りでございます。最初の襲撃の際、その幹部は近い内にまた来ると言ってましたからね。そちらの対応を優先させたのです」


 ……随分と親切な幹部さんだ。


「ということだ。結果的にヘルクス子爵の判断は正解だった。そうそう、襲撃の時期も近づいている。テア、君には現場の後方支援部隊に入ってもらいたい」

「はい、わかりました」


 まだ何かが引っかかっていた。

 しかし、それは本来私が判断することではないだろう。




    *   *   *



 現場の後方支援部隊。

 そのリーダーはセリーヌさんだった。私の参加にかなりご立腹のようである。


「あなた、まだ9歳よね……?」

「え、ええまぁ……」


 私を眺め、はぁ、とため息をつく。


「何を考えてるのよ上層部は! 普通9歳の女の子を戦場に出す!? 頭にウジでも涌いてるのかしらぁっ!?」


 うん、凄く真っ当な意見だと思う。

 大声で文句を宣うと、肩を落として息を整える。

 そして私の肩をポン、と叩いた。


「悪いことは言わないわ。辞退なさい。上層部には私から言っておくから……」


 セリーヌさんは私を本気で心配しているらしい。

 でもーー


「私は、治癒師ですから」


 目を見て答える。

 セリーヌさんが顔を引き締めた。


「……死ぬかもしれないのよ?」


 しばらく見つめ合う。


「……わかったわ。その代わり、指示には必ず従うこと。いいわね?」


 人差し指を立て、子供に言いつけるように約束を迫る。


「はい」


 私がしっかり返事をすると、満足げな表情を浮かべた。


「テア、あなたにこれをあげるわ」


 セリーヌさんが私に大瓶を手渡す。中に入っているのは――軟膏?


「これは……」

「襲撃には必ず黒い虎のような魔物がいるわ。そいつにやられた傷は治癒魔法の効果を著しく弱めるの。その原因は――」


 セリーヌさんが得意げにその軟膏の秘密を語る。これは話が長くなるパターンかな……。


「――ということなのよ。まだ試作段階で試験運用中だけど、効果は保証するわ」


 長い説明を終え私が頷く。するとセリーヌさんは満足げにふふん、と笑みをこぼした。


 何にせよ魔力消費を抑えられるのはありがたい。有効に使わせてもらおう。



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