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救われないラスボスに転生したので運命を変えて幸せになります  作者: まにゅまにゅ
第1章 ラスボス廃棄少女になった私

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2 ラスボス廃棄少女テア 2

 なんだろうこの嫌な臭いは。

 まるで腐った卵をより一層濃く、深くしたような臭い。こんな所に居たくない。


「ううっ……」


 ゆっくりと目を開ける。確か注射を打たれてそれで気を失って……。


 ふと周りを見る。それでこの嫌な臭いの正体がはっきりとした。周りは死体だらけだ。


「……! さ、サーラ……!」


 私のすぐそばでサーラが横たわっていた。


「起きて、ねぇ、起きてってば!」


 サーラの肩を揺さぶる。

 しかし全く反応がない。


 脈を取る。

 その手はとても冷たい。

 命の鼓動が伝わってこなかった。


 胸に耳を当て心音を確かめようとした。


 でも震えて身体が動かない。


「ダメ、確かめなきゃ⋯⋯」


 胸に耳を当てる。

 伝わる振動。

 でも何も聞こえない。それはただ私の手が震えていただけだった。

 

「嘘……!」


 もう一度脈を探る。

 何もない。


「なんで……、どうして……!」


 その瞬間私の目から涙が溢れる。


「サーラ⋯⋯!」


 ふいに私の脳にサーラとの思い出が甦る。


 村で一緒に遊んだこと。

 悲しいときに傍にいてくれたこと。

 一緒に祭りを楽しんだこと。


 これは蒔田莉央にはない記憶。

 そう、これはテアの記憶だ。同時に今の私の記憶でもある。





 どれくらい泣いただろう。


 気が付けば声は枯れていて、呼吸だけが浅く続いていた。


 もう一度サーラに目を向ける。


 ――このままじゃ、サーラを置いていくことになる。

 そんなのは嫌だ。


「こんなとこじゃ眠れないよね……。せめてちゃんと土に還してあげたい」


 でもこんな小さな身体で、何ができるというのか?


 そこでふと思い出す。そうだ、私はラスボス廃棄少女テアだ。


 なら⋯⋯。


「⋯⋯出ろ」


 何も起きない。


 もう一度強く念じる。


 その瞬間空気が揺れた。

 黒い腕が4本、音もなく現れた。

 

 これならサーラを運べるかもしれない。


 そう思い動かしてみる。サーラの身体は軽く、2本の腕で軽々と持ち上がった。なら残りの腕で自分も持ち上げてしまおう。


 念じると手のサイズが大きくなった。私はその手に腰を下ろす。


 ふわり。


 いとも簡単に自分を持ち上げる。


「よし、逃げよう」


 私は腕を操作し、死体の山を下ってサーラを連れて森の中に入った。

 幸い天気が良く、それほど暑くもない。少し奥に入ると死臭もしなくなり、森林特有の緑の匂いがしてきた。


「この辺でいいかな。サーラ、ここでおやすみ……」


 私は地面に降り立つ。

 能力を使い穴を掘り、サーラを埋めた。


「サーラ、ごめんね⋯⋯」


  私は膝をついて両手を合わせる。


 風が吹いた。

 木の葉の揺れる音が聞こえる。


 サーラ、安らかに眠ってね。


 ふと、顔を上げる。


 どうして私はサーラを亡くしたばかりなのに、こんなに早く立ち直っているのだろうか。


 ――苦しいはずなのに。

 ――悲しいはずなのに。


 それでも冷静に考えている自分がいた。そこに――自己嫌悪さえ抱くほどに。


 何故か自分が人でなくなったのではないか、という嫌な考えさえよぎってしまう。


「よそう。今ネガティブな感情に支配されるのは良くない」


 私は頭を振って嫌な考えを振り払った。


「⋯⋯生きなきゃ。そうだ、レオン様に会いに行こう。もしこの世界があのゲームの世界なら、どこかにいるはずだもんね」


 もしかしたらこれはただの現実逃避なのかもしれない。でも他にすがるものが何もなかった。


「サーラ、私行くね」


 サーラを埋めた墓に目を向け、微笑もうとした。


「~~~!」


 思わず涙が溢れ、私はその声を無意識に押し殺す。


 歯を食いしばり、溢れる涙を抑えながら身体を反転させる。そして森の出口を目指した。


 風が頬を撫で、涙を乾かしていく。


 涙が消えていくのが、怖かった。


 

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