3 ラスボス廃棄少女テア 3
森の出口を求め私は彷徨っていた。
「木ばっかりだな⋯⋯」
ため息がこぼれる。
「そうだ、高く飛べばいいんだ。そしたら川や村が見えるかも」
誰が聞いてるわけではないが、声に出す。だって寂しいもん。精神の安定を図るためにも独り言は大事なのよ。
……多分。
はい、自己弁護完璧。私の勝ち!
「って、誰と勝負してんのよ」
と、誰もいない虚空に『なんでやねん』を繰り出す。
虚しい……。
「とにかく高度を上げてみよう」
腕を操作してお尻の下、膝の裏、背中を2本ずつの腕で支える。そしてゆっくりと腕を操り、上昇した。
ゆっくりと舞い上がり、木の上に到達。辺りを見回すと木だらけでよくわかんない。
当たり前か。全体を見たいならもっと高くだよね。
「えーい、女は度胸よ!」
更にゆっくりと上昇する。結構高いけど、割と広く見渡せる所まで来た。辺り一面の緑はこの森林の広さを物語っていた。ゆっくりと周りの景色を眺める。
日差しがとても暖かい。森林の木陰じゃ味わえなかった心地よさだ。
広がる森林の眩しさに一瞬目が眩む。都会じゃ到底見られなかった美しさがそこにあった。
しかし悲しいかな、この世界にはいるのだ。
何がって?
ま・も・の・だよぉっっ!!
「ひょえっ!?」
あれは空を飛ぶ恐竜?
プテラノドンにしては首が長いか。思い出した、確かワイバーンだ。とにかく目があっちゃったよ。
ワイバーンの咆哮。
その恐ろしさに身がすくむ。
逃げなきゃ!
気が付けば私は涙目になりながら急降下していた。
木々の間が私の頬を殴りつけるように当たる。
しかしそんなことを気にしている余裕はなかった。
今、私は地面すれすれにぷかぷかと浮いている。助かった……かな?
結論。世の中そんなに甘くない。
ワイバーンが私を追って降下しているのか、鳴き声が聞こえる。その音はどんどん近くなってきた。
やり過ごすのは無理か?
「いやーーーーっ!」
私は涙目になりながら運ぶ手を加速させる。それでもワイバーンの声が、気配が後ろから近づいて来た。
「誰か、誰か助けて!」
私は叫びながら後ろを振り向く。
ワイバーンの巨大な手が開くのが見えた。
――死ぬ!
――サーラ!
――レオン様!
私は恐怖に負け目を閉じた。
すると私の脳裏に声が響く。
――助かりたいなら殺せばいい。簡単なことだろう?
妾に任せるがいい。
誰?
誰でもいい。このピンチから助けてくれるのなら!
助かりたい一心だった。
私はその声に心を委ねる。
その瞬間、世界から音が消えた。
まるで私であって私じゃない感覚。
「行け」
私が手をかざすと2本の黒い腕がワイバーンの首を掴む。
「爆ぜろ」
その一言でワイバーンの首が爆ぜた。
ズシン、と地面が揺れる。
ワイバーンの首と体が地面に落ちたのだ。
それと同時に心を取り戻したような感覚。
「これ⋯⋯私がやったの?」
地面に転がるワイバーンの死体を見て身体が震える。
ワイバーンのこぼれ落ちた首からは血が今も流れ出していた。
思わずもよおす吐き気。
「うっ⋯⋯」
私はすぐに手から下りる。
脚が震えて上手く立てないを
這いつくばり地面に向かってもどした。
涙目。
咳をしながらゆっくりと呼吸を整える。
「い、今は助かったことを喜ぼう。うん、生きてるんだしね」
それでも落ち着くまでに少し時間がかかった。
どれくらい経っただろう?
私は木にもたれかかる。
ふと、ワイバーンの死体が目に入った。
「生きてくためだもんね⋯⋯」
よくよく考えたら私は無一文だ。
ゲームの世界ならワイバーンは高値で売れるはず。全部は無理でも魔石とか肉の一部は持っていきたい。
私は意を決して立ち上がる。
「腕を操る練習も兼ねてやってみますか」
私は気持ちを切り替え腕を操る。
「ふんふん。なるほどなるほど⋯⋯」
原作で見た能力を思い出しながらワイバーンの魔石を取ることに成功する。
お肉も少し取れた。
「よし、じゃあ行きますか」
私はもう一度高く飛び上がる。そして川や集落を探す。
私はなぜか浮かれていた。さっきあんなに怖い目にあったというのに、だ。
あの時聞こえた声のことも忘れ、私は目の前に広がる景色に心躍らせていた。




