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救われないラスボスに転生したので運命を変えて幸せになります  作者: まにゅまにゅ
第3章 癒神の手

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28 治癒師テア

「さぁ、一緒に来てもらおうか……」


 ルキフグが私に手を伸ばす。

 動けない……。

 足が凍りついたみたいに動かない。

 呼吸さえ、上手くできなかった。


「……させないよ」


 2つの影が私とルキフグの間に割って入る。


「むっ……!」


 ルキフグは勢いに押され後退。繰り返される影からの剣撃。

 その全てを捌きながらルキフグはさらに後ろに跳んだ。


「ここは俺に任せろ! 早くアーネスを!」


 カインさんの声だ。


「アーネスさん……」


 心臓が……。

 治さなきゃ……、治さなきゃ……!

 涙で滲んで前がよく見えない。


 それでも天使の手を召喚する。

 淡い光がアーネスさんを包んだ。

 確かに血は止まった。

 ――でも。


 なんで――

 ……どうして?


 心臓が……動いて……ない……。

 嘘だ、嫌だよこんなの……。


 さっきまで話してたのに!


「ねぇ、起きてよ……」


 アーネスさんを揺する。

 反応はない。


「ねぇ……」


 だんだん声が小さくなる。


「嘘だと……言ってよ……」


 目の前が真っ暗になった。


 音が、ない。

 誰の声も、聞こえない。


「あああああああ!!」


 まるで世界の中で1人、取り残されたような感覚。

 取り返しのつかない喪失感に我を忘れて泣き叫ぶ。


 見えない……。


 何も見えないよ……。


「落ち着いて!」


 強く肩を掴まれる。


 そんな私をレオン様が叱責した。両肩を揺すり、懸命に声をかける。


「まだ間に合う。君は……誰だ?」

「……私は……テア……」


 ぽつり呟く。


「そうだ。でもそれだけじゃない」


 レオン様の声が私の目に光を喚ぶ。


「君は――」


 ――そうだ、私は――


「「治癒師だ!」」


 私とレオン様の声が重なる。


「アーネスさん、今、助けます!」


 アーネスさんにもう一度声をかける。

 指がピクリ、と動いた気がした。


 ――生きてる! 

 まだ間に合う!


 私の心に希望の光が灯った。


 今なら、できる気がする!


「癒せ――蘇れ!」 


 私の、ありったけの想いを込めて!


「癒神の手よ!」


 白い手が黄金の輝きを放つ。

 黄金の光は私とアーネスさんを包み込み、眩い光となった。


 ――ドクン。


 ――ドクン。


 それは、確かに命の音だった。


 感じる――心臓の鼓動を!


 もっと、もっと力を――


 黄金の光が私の心に応える。

 さらに光は増し、野営地に光の波紋が広がった。


 一瞬の静寂。


 ケホッ。


 アーネスさんが咳き込む。


 そしてゆっくりとその身を起こした。


「あ……!」


 今度は嬉し涙で前が滲む。


「……世話、かけたね」


 声は少し掠れていた。


「アーネスさぁぁぁん!」


 思わずアーネスさんにしがみつく。


「コラコラ、嬉しいのはわかったけどさ、戦闘中だよ」


 ふぅ、とため息をつく。

 私はそっ、と離れ顔色を伺う。


 ――微笑。


 それは一瞬のこと。

 すぐに顔を引き締め、戦士の顔になった。


「さて、やってくれたお礼をしないとね」


 カインさんとアルスターさん、他騎士団員達が連携しルキフグを追い込んでいた。


「ふん!」

「ぐわっ!」


 騎士団員が斬られる。

 その隙にルキフグが木の枝に飛び乗った。

 あんな一瞬で!?


「……やれやれ、まさかこの私が2度も失敗するとはな」

「逃がすか!」


 アルスターさんが杖を構える。


「だがまぁいい。アルノーブルに行くのなら好都合か……」


 それだけ言い残すと、その姿が闇に消えた。


「好都合……?」


 その言葉が気になった。


 レオン様は凄い形相でルキフグの消えた闇を睨んでいる。


 こんなレオン様、初めて見る……。


 ゆらり。


 視界が歪む。


 あれ……?


 身体の奥が、空っぽになる。


 さっきまで流れていた力が、

 急に引いていく。


 ……違う。


 流れすぎたんだ。


 私の身体じゃ、

 まだ受け止めきれないほどに。


「あ……」


 膝が崩れた。


 支えが、効かない。


「テア!」


 遠くでレオン様の声がした。

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