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救われないラスボスに転生したので運命を変えて幸せになります  作者: まにゅまにゅ
第3章 癒神の手

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24 恋と憧れ

「ここが領主様の……」


 目の前にそびえる屋敷に私は完全に呑まれていた。


 門をくぐり、中庭に降りると広がる花園。


 ーー世界が違う。


 花の香が鼻腔をくすぐる。

 整えられた芝は足を入れるのも恐れ多い。

 手入れの行き届いた石畳は踏んでいいのかさえ心配になった。


 日が落ちた今でもその彩りは色褪せることなくーー


 邸宅も見たことがないような豪邸で普通の住宅が犬小屋に見えそうだ。


「お金ってあるところにはあるんですね……」

「ささ、中で皆様がお待ちです。風の旅人様もどうぞお入り下さい」


 マリサさんが扉を開ける。


「いらっしゃいませ。お待ちしておりましたテア様」


 入り口にはメイドさんが2人、頭を下げていた。そのメイドさんの案内で大広間に通される。


 その大広間では立食パーティが行われていた。私たちが入ると一気に視線が集まる。


「あの少女が……」

「まぁ、可愛らしい……」


 幸いドレスが汚れてなかったので本当に良かった。これでボロボロだったらと思うとちょっと怖い。


 私たちが立ち止まっていると、向こうから立派な白髪の紳士が現れた。手にはワイングラスを持ち、その姿がとてもサマになっている。


 さらにその隣にはレオン様が立っていた。私を見ると優しげに微笑む。


 ーートクン。


 その笑みで胸が高鳴る。


「よく来てくれた。私がウォルノーツの領主グランツだ」

「今宵はお招きに預かりありがとうございます閣下」


 うろ覚えのカーテシーでご挨拶。


「なんのなんの。君は街を救った英雄でもある。甥のレオンも助けてくれたそうじゃないか。礼を言うよ」


 グランツさんは私を見てにこやかに微笑む。

 怖そうな人じゃなくてよかった……。


「本当によく来てくれた。ドレス、とてもよく似合っているね。気に入ってくれたかい?」


 向けられた眼差しに自分でも顔が赤くなっているのがわかる。


「は、はい! こ、こんな綺麗なドレス着るの初めてです!」


 照れを隠すように深々と頭を下げる。


「そうか、それは良かった。パーティ楽しんでいってね」

「本当なら大々的に皆に紹介したいところなのだがね。余計な面倒に巻き込まれるのは不本意だろう。だからそれはやめておこう」


 柔らかい口調。


「……特に、今はな」


 最後にボソリと一言。

 その言葉には妙に重みが感じられた。


「ご、ご配慮いただきかたじけのうございます!」


 私は頭を下げたままでいた。顔の熱がまだ冷えてないから……。


 それより喋り方大丈夫だったかな?


「はっはっはっ、そう畏まることはない。風の旅人の皆様も是非そのままご参加ください。では」

「ありがとうございます」


 領主様とレオン様が立ち去り、私はようやく顔を上げる。


 するとーー


「ふーん、なるほど。そういうことかい」


 アーネスさんがニヤニヤと私を覗き見た。


「きゃっ!」


 不意を突かれちょっとたじろぐ。


「顔に出てるわよ。テアちゃんなかなか面喰いなのねぇ」

「ちゃ、ちゃんと中身も見てます」


 ううっ、顔から火が出そうだ。アーネスさんのいぢわる。


「誠実なとことか、優しいとことか、それに……」


 と、そこでふと思った。


 レオン様が推しになったのは隻腕になっても誇りを失わずに立ち向かったその生き様だった。


 これに最も近い感情。

 それはーー


「レオン様は、私の憧れだから……」


 少しトーンが下がってしまった。


 でも……。


 きっと、それだけじゃない。


「憧れかぁ」


 アーネスさんがメイドさんからグラスを受けとる。すぐには飲まず、グラスを掲げて見つめていた。


「強くて、優しくて、眩しくて……そういう人に惹かれるの普通よ」


 グラスを下げ、視線を落とす。


「でもね、“それ”だけだと危ないわ」

「え……?」

「弱くて情けなくて、格好悪いところを見ても好きでいられるか……」


 ふっ、と笑いグラスを揺らす。その笑顔はどこか寂しげだ。


「そこからが“恋”よ」


 アーネスさん……。


「……なんとなく、わかるかもです」

「よし、じゃあ私は《《テア》》と恋バナしながら食事するわ。行きましょ」

「はい!」


 アーネスさんが私の手を引く。

 その手は思っていたよりずっと温かかった。

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