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救われないラスボスに転生したので運命を変えて幸せになります  作者: まにゅまにゅ
第3章 癒神の手

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23 守れた命

 ルキフグがバク宙の着地と同時に地面を蹴る。


 ボトッ。

 何かが地面に落ちた。


「先ずは1人……」

「なっ……!」

「え……?」


 私たちより前に出ていた兵士が崩れ落ちる。その兵士には――


 首が、なかった。


 何が起きたのか全くわからなかった。ルキフグが剣を振りまとわりついた血を飛ばす。


「次は……そこの女剣士だな」


 影が、疾走った。


 高い金属音。

 剣が宙を舞い、地面に突き刺さる。


「ほぅ……」

「ぐふっ……!」


 アーネスさんの背中を剣が貫いていた。


「アーネスさん!」


 頭が真っ白になる。


「アーネス!」


 カインさんがルキフグな斬りかかった。その間にルキフグは剣を抜くと再び距離を取る。


 アーネスさんが膝を付いた。崩れ落ちるところをカインさんが片手で支える。


「しっかりしろ!」

「ふっ、ドジったね……」


 嫌だ、嫌だ!

 なんで、なんでこんな……?

 私のせい?

 私がいたから?


「嬢ちゃん、頼む!」


 アルスターさんの声でハッとする。そうだ、助けなきゃ。


 まだ間に合う!


「は、はい!」


 急ぎ天使の手を飛ばす。距離にして3メートル。この位置ならまだ届く。


「させると思うかね?」


 ルキフグが今度はアルスターさんに迫る。


堅牢なる盾(ハイプロテクション)!」


 ルキフグの剣撃を魔法の壁が防ぐ。


「小癪な……」

「こいつは俺が抑える。早くアーネスを!」

「はい!」


 魔法の壁に守られながら天使の手の操作に集中する。援護もしたいとこだけど、2つ同時になんて無理だ。


 天使の手がアーネスさんの身体に触れる。治癒を発動させるが手応えが何かおかしい。


 これは――


「まさか毒!?」

「ほほぅ、わかるのかね。その手の力、実に興味深い」


 魔力の壁に攻めあぐね、ルキフグが距離を取る。


「カイン!」

「おう!」


 距離を取ったルキフグにカインさんが斬り掛かった。

 ルキフグとカインさんの剣が交差する。


 連続した金属音。

 カインさんが後退しながら剣を打ち合う。


「ふむ、いい腕だ」

「くっ……!」


 カインさんが苦戦している。それでも今はアーネスさんだ。


「絶対助けます、解毒しろ!」


 天使の手がさらに強く光を帯びる。ここからじゃ顔色や傷の状態がわかりにくい。もっと近づけないだろうか?


 ルキフグはカインさんとアルスターさんが抑えてくれている。


 意を決し、私はアーネスさんに駆け寄った。


 遠い……。


 この3メートルが、やけに遠かった。


「アーネスさん!」

「嬢ちゃんかい……」


 かすれた声。


「……来るなって、言ったろ」


 それでも、口元は少しだけ笑っていた。


 解毒と治癒が効いている。顔色は悪くない。でも傷がまだ塞がりきっていなかった。


「すぐに治します!」


 天使の手に力を込め、傷を塞ぐ。毒も消えたようだ。


「ありがとう、大分楽になったよ」


 傷が塞がるとアーネスさんが立ち上がる。ダメージは残るから少しふらついていた。


「あの、その……」


 なんて言えばいいかわからず、口ごもる。


「私たちだってプロだ。後は任せな」

「いえ、私も……闘います!」


 そうだ、これは私の闘い。

 気弱になっちゃダメだ!


「そうかい、なら一緒に戦おうじゃないか!」


 アーネスさんがニヤリと笑った。


 一緒に……。

 そうだ、私は1人じゃない。

 カインさんがいる。

 アルスターさんがいる。

 アーネスさんがいる。

 そして……、


 レオン様がいる!


 そう思うと急に勇気が湧いてきた。


「はい!」

「いい返事だ。いいかい嬢ちゃん。ここは貴族街。騒ぎを聞きつけ、もうじき憲兵がやってくるだろう」


 なるほど。そういうことか。


 私はアーネスさんの言いたいことを理解し、頷く。


 私は悪魔の手を空に飛ばした。


「大きく爆ぜろ!」


 ドガガガーン!


 花火にも負けない炸裂音が貴族街に響き渡る。


 カインさん達やルキフグも音に驚きお互い距離を取った。


 ルキフグは眉間にしわを寄せている。明らかに不愉快そうだ。


「……なるほど、やられたな。その娘は必ず手に入れる。貴様らの命、それまで預けておこう」


 ルキフグは高く飛び上がり、瞬く間に屋根へと到達する。そしてすぐに姿が見えなくなった。


 私は首を落とされた兵士の下に歩み寄る。完全に死んでいる。


 こうなってしまってはもう、天使の手でさえ役に立たない。


「ごめんなさい、私のせいで……」


 私は亡くなった兵士に向かい、膝をついて手を合わせた。

 アーネスさんが私の肩に手をかける。


「嬢ちゃんのせいじゃないわ。それが戦場というものよ」


 振り向き、アーネスさんを見る。

 優しげに浮かぶ微笑。


「……あんたのおかげで私は生きてる。あんたが守ってくれたんだよ、私を」


 そうだ、守れた命も確かにあった。

 ならば私も守る側になろう。大切な人を失くさないために。


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