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救われないラスボスに転生したので運命を変えて幸せになります  作者: まにゅまにゅ
第2章 光に触れて

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16 来客

「ルーセル……辺境伯?」


 ルーセル辺境伯といえばレオン様のところだ。

 嬉しい反面、なぜ、と疑問が。


「テア、座りなさい」


 院長に促され、ソファに腰掛ける。隣には院長。

 対面には机を挟みネルソンさん。


 私が座ると院長が唇に人差し指を当ててみせた。


 何も言うなということか。


 向かい合って座ると、ネルソンさんは紅茶を一口すする。


 様になっている。

 上質な黒の礼服。いかにも老紳士と言えるたたずまいだ。


「なるほど、この子が例の」

「ええ、まだ9歳です」


 沈黙。


 ?


 なんか火花が見えた気がした。


「コホン、ご存知の通りルーセル辺境伯領領都アルノーブルでは魔物の襲撃が続いております」


 ネルソンさんは咳払いをすると用件を伝え始める。


「そうなのですか? ウォルノーツの外のことはサッパリでして」


 うわ、バッサリだ。

 しかしネルソンさんは気にせず話を続ける。


「……怪我人が続出しており、治癒師が足りません。それでこの街に大変腕のいい治癒師がいると聞きましてね」

「そうなのですか? この子はまだ半人前ですが」


 院長、いちいち話の腰を折っているし。


「だが実力はある。違いますかな?」

「この子はうちの将来のエースです。まだ教えることがたくさんあります」


 ピシャリと言い放つ。

 そうか、必要とされてたんだ。


 そう思うと少し安堵した。


「……ふぅ、弱りましたね。ある方のご意向なのですが」

「え……」


 思わずこぼす。

 院長がキッ、と私を睨んだ。


「……っ!」


 思わず口を両手で覆う。

 ネルソンさんの眉が動いた。


「ネルソン様。人手が足りないのはこのウォルノーツも同じです。今日はこれでお引き取りください。アレン、お客様がお帰りよ」


 出入り口で待機していたアレンさんが扉を開ける。


「ネルソン様、こちらです」


 ふぅ、とネルソンさんがため息をつく。


「……今日のところはこれで帰ります。またお伺いいたしましょう」

「……」


 院長は何も言わない。

 ネルソンさんは一度私に目を向ける。


 ほんの数秒。


 それから立ち上がった。


「では……」


 ネルソンさんは出入り口に差し掛かると振り返り一礼する。



 ネルソンさんが退室すると、院長が口を開いた。


「テア。アルノーブルに何があるかは知りません。ですがあなたはまだ半人前。人としても治癒師としても、です」

「はい……」


 ――半人前。

 その言葉が深く突き刺さる。


「あなたには実力がある。それは認めましょう。ですがあなたは知るべきです。力には責任が伴う、ということを」


 力の責任――。


 メルデの村のことを思い出す。

 感情に支配され、私はどうなった?


 ……全てを失った。

 仲の良かった友達も。

 温かい食卓も。全部。


「はい……」


 だからこそ私は何も言い返すことができなかった。




    *   *   *


 ネルソンは治癒院を後にすると、あの少女のことを思い出す。


 彼女はまだ9歳だという。

 なのに妙なチグハグさを感じていた。


「ふむ……」


 ネルソンはテアが“ある方”という言葉に反応したのを見逃さなかった。


 ――ただの反応ではありませんな。


 ネルソンは確信する。


「……あの方に出てきてもらうしかありませんな」

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