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救われないラスボスに転生したので運命を変えて幸せになります  作者: まにゅまにゅ
第3章 アルバシア大陸国別対抗アルカナ・フラッグJr杯

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104 アルカナの聖女ヨハンナ

「えーっと、皆さん本気でこれを着るんですか……?」


 えーっと、皆さんなんでこの衣装を見て、こんなににこやかでいられるんですかね?


「当然ですテア様。皆さんこの衣装を着るためにチアリーディング隊に参加したと言っても過言ではありません!」


 いや、胸を張って言われも……。


 彼女達のチアリーディング衣装には『愛LOVEテア様』の刺繍がされており、小さな蝶が舞っている。


 この世界の文字に漢字はない。アルファベッドだってない。しかしどういうわけか彼女達はその意味を知っていた。ミラが教えたのかな、とも思ったが、どうやら違うらしい。


 さすがゲームの世界。変なとこでご都合主義発揮してるよ……。


「そ、そうなんですね……」


 尊ぶ会のことは私も知っている。正直、なんでみんなそこまで熱狂してるのかは知らない。娯楽が少ないからだろうか?


 それなら、私の方で何か娯楽を広めてもいいかもしれない。有名どころだとオセロや将棋の類だけど、ミラに転生者って知られるのもね。


「テア様はこちらをお使いください」


 オーレリア様が私に用意した衣装には『愛amテア』の文字と虹色の蝶の刺繍が。さらに背中には『推してくださいテア✕レオン』と刺繍されている。


 これ、なんて罰ゲーム?


「これ、私が着るんですか?」


 一応オーレリア会長に確認。すると会長はまるで讃えるように説明してくれた。


「もちろんですテア様。テア様の衣装はミラ様が夜なべをして作った力作なのです。それはもう、海より深い愛情が籠もっているのです」


 み、ミラが夜なべをして私のために……。

 これ、断ったらミラ泣くよね?


 そう思ったら断るなんて無理だ。


「よ、喜んで着させていただきます……」


 もうね、折れるしかなかった。


 制服を配り終えた後はミーティングだ。その後、軽い練習をして解散した。本番は明日からだ。


 んで、どういうわけか、私とミラが先頭で歩かされていた。その後ろにはオーレリア会長とアンネ。綺麗に整列して歩くのはいいんだけどね。


「あら、可愛い子ね。あなたも選手なの?」


 歩いていると、一組の男女が話しかけてきた。

 男性の方は、切れ長の目で細マッチョな感じだ。端正な顔立ちで女生徒に人気がありそう。


 女性の方は優しそうな感じで、髪に軽いウェーブがかかっている。長い栗色の髪が綺麗な、正統派美少女というとこか。


「い、いえ。私はその、チアリーディング隊っていう応援団で……」

「まぁ、こんな可愛い子に応援してもらえるなんて素敵ね。どこの学校かしら」


 その女性が私の頬に触れようとすると、後ろのオーレリア会長が私の肩越しにその手を掴む。


「アルメニアス王国です。アルカナの聖女、ヨハンナ様。聖女様といえど、安易にテア様に触れられては困ります」


 アルカナの聖女……、この人が。

 それにしてもオーレリア様、なんか強い圧を感じるんだけど……。


「あら、ごめんなさい。王女様なのかしら?」

「いえ、姫殿下は後ろに並んでおります」

「じゃ、じゃあ公女様?」

「公女は私ですが?」


 ヨハンナ様は理解できないのか、笑顔のまま小首を傾げる。


 大丈夫、私も理解してないから。


「……?」


 わかる。

 あれはリアクションに困っている顔だ。


 しばらく彼女は固まり、妙な間が生まれた。


「えーっと、私はヨハンナ・フォン・ウント・ツー・シャウエンブルク公爵令嬢です。あなたの名前をお聞かせ願えるかしら?」


 雰囲気に耐えられなくなったのか、ヨハンナ様が自己紹介を始める。公爵令嬢なので相当な格上だ。


「丁寧な自己紹介痛みいります。ユベルドー伯爵家が娘、テア・ド・ユベルドーと申します」


 片方のスカートの裾を広げ、胸に手を当て頭を下げる。


「まぁ、テアちゃんというのね。なるほど、女神、か。ピッタリね」

「そこんとこ詳しく!」


 女神、という言葉にミラが激しく反応する。めっちゃ食いついてるのはいいんだけど、外交問題になったら困る!


「み、ミラ! 公女様に失礼ですよ!」


 私が慌てて止めると、ヨハンナ様は気にしないで、と私を制した。


「いいのよ。ミラちゃん、っていうのね。いいわ、教えてあげる。テアっていう名前はね、女神という意味があるの。他にも光、神からの贈り物とかね。とても神聖で清らかな名前なのよ?」


 そんな意味あったんだ。

 私も知らなかったよ。


「おおおーー! そんな意味があるなんて知りませんでした。また1つテア様を知ることができました! 感謝感激雨あられです!」


 ミラがぴょんぴょん飛び跳ねて『愛LOVEテア様』と書かれたうちわを掲げる。すると、ヨハンナ様がそのうちわに目をつけた。


「それ、素敵なうちわね」

「! わかりますか! これは『テア様を尊ぶ会』御用達、テア様応援うちわです!」


 やめてー、と絶叫したいです。

 お願いミラ、国外にまで広めようとはしないでね?


「まぁ、素敵ね。それ、良かったら譲っていただけないかしら? もちろん対価は払うわ」


 ヨハンナはポケットから革袋を出すと、金貨を一枚取り出す。


「い、今お釣りがないです!」

「いらないわ。はいこれ」


 ヨハンナ様はミラに金貨を持たせると、ごく自然にうちわを一本手に取った。


「い、いいんですか!?」

「ええ、いい買い物ができたわ」


 ヨハンナ様は満足そうにうちわを手に微笑む。


「ふふっ、ファンクラブなのかしらね? 私も入ろうかしら」


 やめてーーーーっ!


 いや、本当に絶叫したいです。


「今入会すれば『愛LOVEテア様タオル』をお付けします!」

「入るわ!」


 決断はやっ!


 これ、止めなくていいの?

 ねぇ、オーレリア様?


「仕方がありません、テア様の良さを理解したのならそれは同志! 先程の非礼、お許し願いたい」


 オーレリア様が丁寧に頭を下げる。


 オーレリア様?

 なんか話が変な方に……。


「ええ、謝罪を受け入れます。オーレリア様。今後ともよしなにお願いしますね」


 ヨハンナ様も深く頭を下げる。取り敢えず国同士の問題にはならなくて済みそう。


「あ、タオルと会員証は後で届けますね! どこに届ければよいですか?」

「ああ、それでしたら……」


 ヨハンナ様、自分の部屋の場所教えてるみたいだけど、いいの?

 とか思った。


「わっかりました! 後でお届けにあがります」


 ミラがシュバッ、と手を挙げる。ヨハンナ様は特に気にせず、ミラの頭を撫でた。


「お願いね、ミラちゃん。待っているわ。それじゃあ皆さん、またお会いしましょう」


 ヨハンナ様は手を振り、立ち去っていった。


「感じのいい人でしたね」

「いい人です! しかしあの二人、カップルではないようでした。残念です」

「わかるんだ……」


 ミラって超能力者……?


   *    *    *


 その夜、ヨハンナは自分に充てがわれた部屋で1人くつろいでいた。

 魔法の光を頼りに本を読み、時折窓を眺めてはクスリと笑みがこぼれた。


「あの子、可愛いかったなぁ。妹にしたいくらい」


 コツン。


 窓に小石が当たる音。


「なにかしら? 暗部の誰かかしらね」


 ヨハンナは要人である。

 当然その護衛には国の暗部が付いていた。その誰かだろう、と鍵を外し窓を開ける。


「誰かいますか?」


 そして顔を覗かせた。


「ぐっ……!」


 その瞬間、ヨハンナはいきなり首を掴まれ、強引に外に放り出された。


「あぐっ!」


 下は柔らかい土だった。そのおかげで衝撃は浅く、痛みを堪えながらもすぐに身体を起こせた。


「!」


 ヨハンナが周りを見て驚愕する。

 その周りに倒れているのは国家の暗部だった。2人とも首から血を流しており、生存は絶望的だった。


 そこへ影が降り立つ。


「ヨハンナだな? 私と一緒に来てもらおう。さぁ!」


 黒ずくめに身を包んだ男が、ヨハンナに手を伸ばす。


「いや、来ないで……!」


 恐怖にかられ、ヨハンナは腰を抜かしてしまう。へたり込んだまま、両手を前に抵抗を試みた。


「さぁ……」


 男は構わずヨハンナに近づいたかと思うと、突然後ろへ跳んだ。


 そして影がもう一つ。

 その影はヨハンナと男の間に割り込むと、ヨハンナに身体を向けた。


「ヨハンナ様、会員証をお届けにあがりました! 特典のタオルもございますよ」


 ヨハンナを見つけたミラは、早速会員証とタオルを手渡す。


「あ、あなたはミラちゃん! ダメよ、逃げなさい、殺されるわ!」

「なんですと?」


 しっかりタオルを抱きとめ、ヨハンナがミラに逃走を呼びかけた。するとミラは後ろを振り向く。


「死にたくなくばそこをどけ。特別に見逃してやろう」


 ミラは男をマジマジ眺めると、短剣を取り出し、両手に構えた。


「あなた、悪い人ですね! せっかくできた同志を傷つける人は、私が成敗します!」

Chatさんの感想


今回かなり良いです。

特に、

「ギャグ」と「不穏」の接続

が上手い。

前半。

完全にいつもの。

尊ぶ会暴走回

なんですよね。

愛LOVEテア様

推してくださいテア✕レオン

ヨハンナ勧誘

即入会

タオル販売

この辺ずっと笑える。

でも。

その空気のまま。

突然拉致事件

へ落とす。

これが効いてる。

特に良かったの。

ヨハンナがちゃんと魅力的

なこと。

ただの「他国の聖女」じゃなく。

気さく

空気を和らげる

格上なのに偉ぶらない

テアを自然に褒める

ので。

読者も。

「あ、この人いい人だ」

になる。

だから。

その後。

Plain text

「いや、来ないで……!」

がちゃんと危機感出る。

あと。

ミラが“ギャグキャラなのに強い”

が完成してる。

今回かなり好きなのが。

Plain text

「同志を傷つける人は、私が成敗します!」

ここ。

普通なら。

「聖女様を守ります!」

になる。

でもミラは。

「同志」

なんですよ。

つまり。

ミラの価値観って。

一貫して“推し活”

なんですよね。

でも。

その価値観で。

本気で命を張る。

ここがミラの強さ。

だからギャグキャラなのに。

“信念がある”

になる。

あと今回地味に良かったの。

テアが「断れない」

をちゃんと引き継いでること。

Plain text

ミラが夜なべをして

で折れる。

これテアらしい。

しかも読者も。

「まあ断れんよな……」

になる。

あとヨハンナ。

かなり使いやすいキャラですね。

特に。

Plain text

「あの子、可愛かったなぁ」

ここ。

単なる社交辞令じゃなく。

本気で気に入ってる

感じある。

なので。

後々。

テアとの交流

聖女同士の話

他国視点

教団への反応

に使える。

あと今回かなり良かった演出。

「会員証を届けに来た」

タイミング。

これ。

完全にギャグ導線なんですよ。

読者は。

「また尊ぶ会かよw」

って笑ってる。

でも。

その結果。

ミラが現場に居合わせる。

つまり。

ギャグが物語を動かしてる。

これ大事。

ただの脱線ギャグじゃなく。

“尊ぶ会が世界に影響し始めてる”

になる。

あと。

ミラの強キャラ化

かなり自然。

最初は。

変人

推し活

妹枠

だった。

でも。

アンネに鍛えられ

実戦経験積み

暗殺技術取得

判断力向上

で。

「実力ある変人」

になってる。

しかも。

まだ読者の認識では。

“本物の強敵には届かない”

くらい。

なので今すごく使いやすい立ち位置。

最後の。

Plain text

※この人はルキフグではありません

も正解寄りです。

なぜなら。

「前座でこれ」

になるから。

つまり読者は。

「本命どんだけヤバいんだよ」

ってなる。

あとかなり良い流れなのが。

ミラが「聖女を守る側」へ行き始めてる

こと。

元々。

推し活

オタク

ギャグ

だったのに。

今は。

「守る」

が入ってる。

これ。

成長としてかなり綺麗です。

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