103 聖女とは
アルカナ国立競技場。
そこではアルバシア大陸国別対抗アルカナ・フラッグJr杯の開会式が行われていた。
前年度の上位から順に入場し、まずは昨年1位のアルカナ魔導国チームが姿を見せる。
風の魔法で拡大された声が響き渡り、国と有力選手の紹介が行われた。
「まずは前年度1位のアルカナ魔導国チームの入場です! ご存知アルカナ・フラッグ発祥の国、アルカナ魔導国ではこの競技は国技とされ、プロチームがあるほど盛んです。今年は3年生のゲオルグ選手を筆頭にアルカナの聖女と呼ばれるヨハンナ選手、神撃の異名を持つアレクサンダー選手と精鋭揃い! 今年も優勝候補筆頭と噂されています」
アルカナの選手が入場すると、一際黄色い声援が飛ぶ。その多くはゲオルグ選手に対するものだった。
「聖女って他の国にもいるんですね!」
ミラは楽しそうに選手達を眺めながらアンネに聞く。
「ええ、聖女と呼ばれる女性はそれぞれの国で立てています。一般に、神聖魔法の素養があれば聖女候補とされますが、その中でも神の三つの奇跡の内、1つを完成させた女性を聖女と呼ぶんです。1つの国で50年に1人と言われるほど稀有な才能なんですよ?」
アンネが説明すると、ミラは益々目を輝かせる。
「そうですわね。聖女がいるだけでその国の教会は発言力が増す、なんて言われてますわ。イシュタリア教は大陸全ての国教ですから、実質国の発言力に等しいんですのよね」
「超重要人物なんですね! ディアーヌ様凄いです」
ロゼリアがさらに詳しい事情を話すと、ミラは聖女という存在が如何に特別であるかを理解する。
ミラの中で、また属性が追加されたのは言うまでもない。
「ええ、ですので私のチアリーディング隊参加はディアーヌ様の護衛も兼ねてるんです。内緒ですよ?」
アンネが人差し指を唇の前に立ててクスリと笑った。
「師匠さすがです! 要人警護ってなんかカッコいいです」
ミラが妄想を捗らせ、はうはう、と身体をくねらせる。
「ミラも手伝ってみますか? いい訓練になりますよ?」
「やってみたいです! こんなことなら、黒ずくめの衣装を用意するんでした」
アンネがそう提案すると、ミラは喜んで手を挙げる。そして忍者っぽい衣装を用意しなかったことを激しく後悔した。
「それ、護衛任務では使いませんよ? かえって目立ちますから」
「え、そうなんですか?」
アンネの指摘にミラはどこか残念そうに唇を尖らせる。
「あ、ほら。殿下達が入場しましたわよ!」
ミシェル達が入場すると、ロゼリアが二人の話を遮る。競技場を指差すと二人は話を止め、ミシェル達に目を向けた。
「次は前年度3位、惜しくもアルカナ魔導国に敗れたアルメニアス王国チームの入場です! 先頭のミシェル様は王国の第1王子。聖女のディアーヌ選手、司令塔のクレール選手に突破力のあるレオン選手と、精鋭が揃っています! 打倒アルカナを掲げ、今年こそ優勝を目指します」
解説者がチームを紹介すると、またも声援があがる。テア達も負けずに声を張り上げ、会場は熱気を加速させた。
その会場で1人、2枚の姿見を眺める軍服の男がいた。
「二人の聖女か……。そのどちらかを攫え、とは無茶な依頼が来たものだ」
ルキフグ=ロフォカレは2枚の姿見を懐にしまうと、会場を後にする。
――俺の勘が告げる。攫うのはヨハンナでいい。だが、ディアーヌ。こいつは危険だ。必ず我が教団にとって障害となるだろう。
――消さねばなるまい。命令に背くことになっても、な。
ルキフグ=ロフォカレは誰も見てない場所でディアーヌの姿見を燃やすと、足で踏みつけ消火した。
Chatさんの感想
導入としてかなり良いですね。
特に今回、
「世界が広がった感」
がちゃんと出てる。
今まで学園内中心だったのが、
他国
聖女制度
教団
国家間の思惑
暗躍する敵
が入ったことで、
“物語が世界規模へ移行した”
感じがある。
しかも説明臭くない。
今回うまいのは。
ミラを通して世界観説明してる
ところ。
ミラって。
オタク
好奇心強い
素直
リアクション大きい
ので。
読者と視線が一致しやすい。
だから、
Plain text
「聖女って他の国にもいるんですね!」
が自然に機能する。
かなり便利なキャラになってますね。
あとアンネの役割も綺麗。
今回のアンネ、
“世界の裏側を知ってる人”
になってる。
特に。
Plain text
私のチアリーディング隊参加はディアーヌ様の護衛も兼ねてる
ここ。
めちゃくちゃ大事。
ギャグ集団だったチアリーディング隊が。
“実は実戦部隊”
になる。
これで。
今までのギャグ描写が、
「遊んでるだけじゃなかった」
に変わる。
かなり上手い。
あと最後。
ルキフグ=ロフォカレ
いいですね。
ちゃんと。
“強敵の匂い”
がする。
特に良いのが。
Plain text
ヨハンナは攫う
ディアーヌは殺す
って判断。
これで。
「ディアーヌの危険性」
が読者に伝わる。
しかも。
敵側が。
“直感で警戒してる”
のがいい。
実力測定済みじゃない。
でも、
“こいつは危険”
って本能で察知してる。
強キャラ感出ます。
あと今回地味に良かったの。
Plain text
姿見を燃やして踏み消す
これ。
悪役の演出としてかなり映像的。
ただ「殺す」って言うより印象残る。
それと。
今回短いのはむしろ正解寄りです。
なぜなら。
“大会編開始の幕間”
だから。
ここで長々やるより、
世界観提示
新キャラ匂わせ
敵登場
次への不穏
だけ置いて終わる方がテンポいい。
少年漫画っぽい。
あと今かなり良いバランスなのが。
ギャグの熱量がまだ残ってる状態で不穏入れてる
こと。
だから読者が。
「あれ? 今回ちょっと空気違う?」
って感じ始める。
これ効く。
特に今。
読者は。
ミラかわいい
ロゼリア苦労人
尊ぶ会カオス
で安心してる。
そこへ。
“教団”
が本格的に出始める。
この落差で空気締まるんですよね。
あとこの先かなり相性良さそうなのが。
「表の大会」と「裏の暗躍」
の二重構造。
表→アルカナ・フラッグ
裏→暗殺・誘拐・護衛
になると、
アンネとミラがめちゃくちゃ活きる。
特にミラ。
ギャグキャラなのに。
実戦になると怖い
が既に出来上がってる。
レッドキャップ戦の
Plain text
地雷許すまじ
が効いてる。
なので今後。
「普段は騒がしいのに、護衛モード入ると空気変わる」
をやるとかなり映えます。




